無線LANのMeru、「標準技術だけですべて問題解決するとは思わない」(2/2 ページ)

» 2006年03月07日 17時45分 公開
[堀見誠司,ITmedia]
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無指向性アンテナで最大12チャンネルが利用可能に

 同社が今回、国内市場に投入する製品「Radio Switch」は、既存のカテゴリで言えばAPになるが、従来の製品とは異なるセグメントに属するものだという。

Meru Radio Switch Radio Switch

 企業内無線LANのシステム構成は、1つのAPにあらゆる機能を載せようとする“ファットAP”から、無線LANスイッチ側に無線やセキュリティの機能を集めてAPの「軽量化」を図る“シンAP”による形式に変わってきているが、Radio SwitchはAPの無線機能とその管理機能のそれぞれを強化するハイブリッド型のシステムを提案するものだ。

 Radio Switchでは、通常のAPでは1台につき1チャネルの利用であるのに対し、IEEE 802.11b/11g×2チャネルおよび802.11a×2チャネルの4チャネルを同時に持つことができる。その秘密は、詳細を公開できないとするが、複数のチャネルで電波干渉を抑えながら同時にデータを送受信できる「Wideband RF Combination/Omni-Directional(WRC/OD)アンテナ」にあるという。無指向性のアンテナで、チャネルごとに接続クライアント数が偏らないようにロードバランスすることで、1チャネルにつき128クライアントまでサポートすることが可能である。

 同様のことを通常のAPで実現しようとすれば、4台分のケーブリングを行い、スループットを上げるためにレイアウトや電波干渉、管理・設定といったことを考慮しなければならない。

 このように1台あたりの端末収容数が飛躍的に増えるため、100ユーザー以上が接続する大学などの大きな講堂やイベントホール、ホテルといった、ユーザー密度の高い施設での導入に適している。逆に、オフィスや小さな教室といった場所ではRadio Switchのスケールメリットがあまり生かされない。

マーケティング担当副社長のアナンド氏

 マーケティング担当副社長のカマル・アナンド氏は、この製品を「通常のAPを有線LANにおけるリピータハブだとすると、Radio Switchはスイッチに当たる」と例える。同じリソース(帯域)をシェアするハブに対して、ユーザー密度にかかわらず一定の帯域を保証できるスイッチのような役割を果たすことが、製品名の由来である。

 まず4チャネル同時利用可能な製品が4月1日に出荷され、8チャネルおよび12チャネルの製品が2006年の半ばから後半にかけてリリースされる予定だ。国内ではディアイティ、日立インフォメーションテクノロジー、東京エレクトロン、日商エレクトロニクスなどが販売を行う。

標準技術が独自技術に置き換わる?

 Meru独自の無線ソリューションは、リアルタイム性が高く通信品質を要求する音声アプリケーションにとって現在の無線LANの標準規格やその対応機器ではまだカバーできていない部分を補ううえで、大きなアドバンテージを保っている。だが、急ピッチで進む無線技術標準化の流れの中で、その強みが失われてしまうことはないのだろうか。たとえば無線IP電話の高速ハンドオーバーであれば、無線LANセキュリティの標準規格であるIEEE 802.11iがオプションとして提供する事前認証機能を端末がサポートして実現する手段も考えられる。無線通信のQoSについても、802.11eに対応する端末が市場に登場している。

 これに対して、アナンド氏は「業界全体として、標準化が進むのは良いこと。ただし、802.11eを例に挙げれば、接続端末の少ない家庭では対応機器があれば間に合うだろうが、企業においては、数多くの機動性の高い端末をサポートするには通信品質的に十分ではない。標準技術だけでは、すべての顧客の問題解決にはならない」と反論する。

 つまり、Meru独自の技術で標準と差別化しているわけではなく、端末の標準対応を補完する形であらゆるシビアなニーズに応えることが、同社の姿勢なのだという。

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