Sun Java Studio Creator 2、日本語版の使用感はいかにレビュー(3/3 ページ)

» 2006年03月09日 12時45分 公開
[きしだなおき,ITmedia]
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 Ajaxは比較的実装手段が複雑であるため、すべてを自作していると割に合わないだろう。このようなコンポーネントを使うことでAjaxを利用した高度なWebシステムを構築することができるのは歓迎したい。早期のAjax対応コンポーネントの充実が期待できる。

ポートレットの作成

 Studio Creator 2はJSR168準拠のポートレットに対応した。JSR168は、さまざまな情報を同時に表示するポータルサイト構築のための標準APIを定めた規格だ。

 Studio Creator 2では、ポートレットアプリケーションのための環境整備とポートレットの新規作成、ポートレットアプリケーションの最低限のプロパティの変更などが行える。ただし、JSR168を知らなくても基本的なポータルサイトが作成できるというわけではない。簡単なポータルアプリケーションを作る場合でも、JSR168に関してはひと通り学習しておく必要がありそうだ。

日本語化されたドキュメントがほしい

 Studio Creator 2を使っていて感じるのは、日本語情報が不足しているという点だ。ヘルプなどは日本語化されているが、添付のAPIリファレンスはすべて英語である。少なくとも標準APIのリファレンスに関しては日本語化されたものがあるので、日本語訳を添付してもよかったのではないだろうか。

 JSFに関しては書籍など日本語の情報があるが、現在のところStudio Creator 2独自のライブラリに関してはどこにも日本語情報がない状況である。Javaへの移行を促すという目的を考えれば、JSFのAPIやUIコンポーネントのリファレンスも日本語化してもらいたいところだ。また、チュートリアルの日本語化も徐々に進んでるとはいえ、まだ部分的である。

 VisualBasicなどに慣れたプログラマを対象に、Javaでの開発を簡単にすることが目的ということを考えると、ドキュメントの日本語化が急務となっている。

バンドルデータベースには難あり

 バンドルデータベースとしてPointbaseが添付されているが、Studio Creator 2からの操作は起動と停止だけが可能である。データベースの作成やテーブルの作成の機能は用意されていないのだ。NetBeansにはデータベースのテーブル作成機能が用意されているため、Studio Creator 2にも残しておいてほしかった。

 そして、データベースの作成やテーブルの作成方法に関してのドキュメントが見当たらない。インストールフォルダを探ってようやく管理ツールを見つけることができた。

 Pointbaseデータベースの管理ツールは、インストールフォルダから「SunAppServer8/pointbase/tools/serveroption」と階層をたどってstartconsole.batを起動すると利用することができる。しかし、Studio Creator 2からデータベースに接続していると利用できない。もちろん、Pointbase以外のデータベースを利用すればこのような問題は発生しないが、バンドルされているメリットがなくなってしまう。

 また筆者が試したところでは、HSQLDBはまったく利用できず、PostgreSQLでは可変長文字列を含んだテーブルが利用できなかった。データベースの扱いには不満が残るところだ。コンポーネントのデータベース対応が強力なだけに、残念に感じる。

ホームページではなくWebシステムに向いている

 Sunが表明しているように、Studio Creator 2は一般公開するためのホームページではなく、企業内で利用するシステムを開発するためのツールである。これはレイアウトが絶対座標によるものであることからも感じられる。そして、もともとはJSFがホームページではなくシステムに向いているところだが、この特徴をさらにクローズアップさせた印象だ。

 業務ロジックなどはNetBeansなどでEJB 2やWebサービスとして開発し、ユーザーインタフェースをStudio Creator 2で作成するという使い分けが考えられる。

さらなる進化に期待

 NetBeansは現在5.0がリリースされており、日本語版のリリースも間近だ。NetBeans 5.0ではさらに機能が強化されており、NetBeans 4.1ベースのStudio Creator 2では物足りなさを感じることがある。

 また、Studio Creator 2ではEJB 2コンポーネントやWebサービスを利用することは可能だが、前述のように開発することはできない。このため、EJB2コンポーネントやWebサービスを利用する時には、複数の開発環境を利用する必要がある。開発環境にはよるが、このツールの使い分けは不便に感じるところだ。

 そして、最も気になるのは近々正式にリリースされるEJB 3の存在である。EJB 3では、EJB 2の欠点を解消し、Studio Creator 2のユーザーインタフェース作成機能と組み合わせると、非常に開発効率が上がることが予想される。さらにNetBeansの次期バージョンのNetBeans 5.5では、EJB 3に対応してUMLツールなどもアドオンパッケージとして用意される予定だ。つまり、NetBeans 5.5にStudio Creatorの機能が乗れば、非常に強力なツールになりそうだ。

 正式発表ではないが、Studio CreatorもNetBeansの拡張パッケージとして提供されることが、Sunの開発者によるブログで公表されている。これが実現すれば、JavaによるWebアプリケーションの開発効率が非常に高くなるだろう。

 今からStudio Creator 2に慣れておくのも良いだろう。

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