携帯電話と地域の力が融合した防犯対策――神奈川県藤沢市激変! 地方自治体の現実(2/2 ページ)

» 2006年04月19日 08時00分 公開
[中野利佳,ITmedia]
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市民すべてに平等なサービスは提供可能か

 もちろん、このソリューションにも課題は存在する。まず、サービスの恩恵を最大限に享受できる利用者が限られていることが挙げられよう。NTTレゾナントと三菱総合研究所が実施し、2006年3月に公開した「子どもの携帯電話利用状況に関する調査結果」によると、小学校低学年の携帯電話保有率は11.2%、高学年で21.1%、中学生で49.5%となっている。つまり、小学校低学年では10人に1人程度しか携帯電話を持っていないのである。これでは平等なサービスとは言えないだろう。

 同システムへの予算は2006年度で約1500万円。このほとんどがシステムの改修などに費やされるため、児童へ携帯電話を配布するなど、携帯電話の普及促進について予算が取られているわけではない。また、そうしたことを行政が行うべきかは検討も必要だろう。

 また、GPS付き携帯電話がまだ十分に普及しているわけではないことも危惧されるが、2007年4月以降、携帯電話事業者が新規に提供する第3世代携帯電話端末については、原則としてGPS測位方式による位置情報通知機能に対応することになっている(関連記事参照)。すでに、2006年に入ってからは新入学シーズンにタイミングを合わせる形で各キャリアからGPS機能を搭載した子ども向け携帯電話のリリースが相次いでいる。代表的なところでは、NTTドコモの「SA800i」が挙げられるが、GPSへの対応とサービスの提供では、KDDIが先行している(関連記事)。今後、子ども向け携帯電話市場ではキャリアもこれまで以上に注力してくることが予想されるため、将来的にはさほどこのことを問題視する必要はないと言える。藤沢市では当面、即時性という点では多少劣るが、ファクスなどすでにあるインフラを併用していくことも検討しているという。

 そのほか、携帯電話を子どもに持たせることで、話しすぎや出会い系サイトなど利用といった問題が生じるほか、教育現場においては、学校への携帯電話の持ち込みをどのように考えるかという問題も顕在化する。藤沢市教育委員会ではこれまで、市立の小・中学校では原則、学校への携帯電話の持ち込みを認めていなかった。しかし、今回のサービスの開始に当たって協議し、「授業中は預かる」などの制限は加えつつも、事実上持ち込みを許可する方向であるという。

 藤沢市については、行政への市民参加を促進する方法の1つとして「市民電子会議室」をうまく活用していることは今回の特集でもすでに取り上げた(関連記事参照)。市民自らが情報発信することで情報の即時性を損なわない形のシステムを構築するだけでなく、かけつけ協力員に見られるように、これまで軽んじられていた感のある「地域の力」、すなわち学校のPTAや地区の自治会、老人会などを巻き込んだ地域コミュニケーションの存在に再注目した藤沢市の取り組みが今後注目される。

 子どもの安全を確保するための新たな試みを進める自治体は、このほかにも幾つか存在する。本特集ではこれまで、横浜市青葉区、藤沢市を紹介した。最後となる府中市の事例についても近日中にお届けする予定だ。


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