ステージではアーリー版のデモまで行われ、今回のSAPPHIREの目玉といえるのが、ユーザーインタフェースに選択肢を与え、mySAPアプリケーションの利用を簡素する「Project Muse」だろう。
これまでmySAPのユーザーは、NetWeaver Portalを介してアクセスできるWebアプリケーションによってさまざまな機能を利用してきた。しかし、Microsoftと共同開発したOffice連携ツール、Duetの登場は、ユーザーの体験を大きく変えようとしている。レポートやワークフローがOutlookの受信箱にプッシュされ、使い慣れたOfficeからmySAPの機能が利用できるのだ。
Duetがインフォメーションワーカーの使い慣れたOfficeからアプリケーションを使えるようにして簡素化を図るのに対して、アプリケーションそのものの使い勝手を改善することで簡素化を図るのがProject Museだろう。インフォメーションワーカーはDuet、1日中、取引を入力しているようなスタッフはProject Muse、といった役割による使い分けもあるだろうし、ひとりのユーザーが状況に応じて使い分ける場合もあるだろう。いずれにせよ、選択肢が大幅に広がっている。
アガシ氏によれば、Project MuseはAdobe SystemsのFlex技術をベースとして開発が進められているという。
旧Macromediaの製品だったFlexは、FlashベースのWebアプリケーションを構築するための開発フレームワーク。FlashのスキルがないJavaデベロッパーでも、アプリケーションの配布性や保守性に優れ、なおかつ豊かなユーザー体験を提供できる「リッチインターネットアプリケーション」を開発できる。ブラウザとFlashのランタイム環境があれば、MacやLinuxでも動作するなどクライアントも選ばない。
既存のビジネスロジック層やインテグレーション層に手を加えることなく、人がかかわるプレゼンテーション層を強化できるのもFlexの大きな特徴だ。キーノートで披露されたデモでも「既存のアプリケーションに変更の必要はない。スキンのようなもの」と強調された。
Adobeでは、FlashアプリケーションをWebブラウザの外のローカルマシン上で動かすことができるようにする「Project Apollo」が進行中で、技術的には配布性の良さを生かしながらオフラインでもアプリケーションを使い続けられるようになる。
こうしたイノベーションは、SAP ESAのエコシステムがもたらす成果の一部に過ぎない。アガシ氏は、Microsoftとの「Duet」、Adobeとの「Interactive Form」、IBM、Hewlett-Packard、およびIntelとの「Business Intelligence Accelerator」、EMCとの「CIO Dashboard」、Cisco Systemsとの「Application Oriented Networks」といった最近の成果の数々を挙げ、エコシステムによるイノベーションをアピールした。しかも、これらはすべて2005年に約束し、2006年には提供が始まっているものばかりだ。
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