「デスクトップPCから企業を解放する」AMDのRaiden戦略(2/2 ページ)

» 2006年06月05日 13時08分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
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 AMDはまた、2つの要素で構成される「スプリットモードコンピュータ」を構想している――1つはウルトラモバイルPCによく似たモバイルデバイスで、もう1つはそのモバイルデバイスのドックとして機能する。このモバイルデバイスで、ユーザーは会議の合間や移動中もデータを持ち歩くことができ、必要なときに仮想会議室などに接続することができる。

 AMDが掲げるパーティションアプローチでは、アプリケーションと一部のデータストレージはローカルで保管されるが、仕事専用パーティション内に収められ、ユーザーはほかのソフトを読み込んだり、支給されたPCのほかのパーティションにアクセスすることはできない。

 一方AMDは、仕事専用パーティションに仕事用ソフトをインストールするために仮想化技術を利用することを考えている。仕事関連のソフトには、このパーティションからしかアクセスできないようにする。「IT部門が従業員に、職場で私物のコンピューティングデバイスを使うよう求める状況も起こりうるかもしれないが、さほど不自然なことではない。こうした状況下でのIT部門の役目はパーティションの提供だ。私自身は向こう5年でこれが現実になると予測している」(ソーヤー氏)

 Raidenは、AMDが6月1日に発表した、PCの管理およびセキュリティ向上に向けた技術プロジェクト「Trinity」と連携しながら進められる。

 この2つのプロジェクトは「仮想化」というきずなで強く結びついている。仮想化技術はコンピュータのリソースを分割し、同一マシン上で複数のソフトウェアインスタンスを同時実行できるようにする。

 「仮想化は、PCやほかのタイプのコンピュータで提供しにくい、あるいはまったく提供不可能な新技術を実行可能にする原動力になりつつある」とAMDのコマーシャルソリューション担当ディレクター、マーガレット・ルイス氏が言うように、同社は仮想化機能を自社プロセッサに直接付加している。

 こうした流れから、Trinityは、管理能力を強化するためにシステムの側面をロックダウンする鍵と各社の既存ツールに統合できる十分にオープンなプログラミングインタフェースをAMDパートナーに提供することで仮想化を導入できる設計になっている。

 「仮想化なくしてセキュリティを語ることはできないし、仮想化は管理機能の問題抜きに語ることはできない」とルイス氏。

 「仮想マシンができたら、次はそれをいかに管理するかが問題になる。そこでセキュリティ問題が再浮上する。ほとんど『鶏が先か卵が先か』の状況だ」(同氏)

 ゲストOSのロックダウンはハードウェアから、そして特にAMDの仮想化対応Direct Connectメモリコントローラから始まる、とルイス氏は説明した。

 Trinityの基盤は、AMDがデスクトップマイクロプロセッサシリーズ「Athlon 64」で初めて提供した「Enhanced Virus Protection」(EVP)と呼ばれる技術。

 EVPは、コードの実行を禁止されている特定メモリ領域をOSが呼び出すことを許可する。

 Trinityはこの技術をさらに進歩させ、仮想マシンを制御している管理プロセッサで採用する、とルイス氏。

 さらにAMDは、例えばPepperconといった企業が先進的なKVM(キーボード/ビデオ/マウス)デバイスを開発するための標準規格「Open Platform Management Architecture」にも参加している。同規格はコンピュータへのリモートアクセスを可能にする。

 ソーヤー氏は、AMDが掲げる構想の中には時間がかかるものもあると認めながらも、取り組みはすでにエンドカスタマーと進めており、新しいタイプのクライアントデバイスの開発に必要な構成要素の多くがそろいつつあると強調した。

 AMDは6月1日、仮想化ツールキットも発表、管理などの目的でPCにパーティションを設置したいPCメーカーに提供していく。このほか同社は、小型デスクトップPCやPCに代わるデバイス向けの省電力プロセッサも発表している。

 もちろん、企業のIT部門はこれら新しいアプローチをよく検討する必要がある、とソーヤー氏は言う。例えば、従業員の私物マシンでパーティションを実行している際に企業データを適切に管理できるかどうかや、このアプローチを採用した場合のTCOモデルなどについてだ。

 ただし、AMDハードウェアを採用したステートレスPCの登場はむしろ早まるかもしれない。

 「当社は、ステートレスデバイスを試用し、ソフトウェアとアプリケーションを企業内でサービスとして配信しているエンドカスタマーと関係を築いている」とソーヤー氏は語った。

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