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» 2006年06月06日 08時00分 公開

インターネットサービスが拓く新世紀情報社会 第1回:ヤフーがけん引するメディア融合への流れ

日本における21世紀という新世紀の幕開けは、インターネットの普及拡大によって生まれた、新しい情報社会の誕生と呼応している。その社会構築の前提になっているのは、世界一といわれる、「ブロードバンド」と「モバイル」という先進的インフラが整備された環境だ。そのインフラが広く、深く活用されれば、情報社会は成長するだろう。それを見極める上で、ヤフー、グーグル、アマゾン・ドット・コム、イーベイの動きは見過ごせない。とりわけヤフーは、メディア融合を進めるIT企業とて注目されている。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

 21世紀に入って最初の5年が経過した。

 2000年の大晦日、Y2K対応に明け暮れた1年が終わり、ほっとした気持ちで21世紀へのカウントダウンをテレビで眺めた方も多かったのではないだろうか。あれから既に5年が経った。

 新しい世紀になると、最初の5年間は表面的には前世紀ムードを引きずる。しかし水面下では必ず新たな主役が着実に根を張る。IT業界のそれはやはりインターネットだろう。新世紀の幕開けは、インターネットの普及拡大によって、前世紀の後半に予見された「情報社会」が本格的にその姿を現し始めた時期だった。

 その意味で、タイトルに「新世紀情報社会」という言葉を使った。いささか古めかしい言い方かもしれないが、情報社会が本当に始まるのは、まさにこれからという意味である。

 一方、前世紀で思い描かれたような夢の社会が実現してゆくのに伴い、現実になって初めて遭遇する、新たな問題も現れ始めている。過去に「工業社会」とか「車社会」といわれたものがそうであったように、情報社会の諸相にも光のあて方次第ではさまざまな明暗があり、その判断は決して万人共通のものではない。

 NEC総研では、「情報社会研究」という活動テーマの下、情報社会の諸相に対して多面的に取り組んでいる。インターネット産業の分析に始まり、個人情報保護やプライバシー、有害情報などの社会的課題、さらには人間の行動や心理、経済や社会制度に至るまで情報社会の幅広いテーマを、マクロ的かつ中長期的視点に立って研究している。

 この企画では、そうした活動の中からわれわれが独自に選んだ視点から見た、情報社会の諸相ついて考えてみたい。やや偏った内容もあるかもしれないが、読者がITの活用や深耕を進めるうえで、何らかの一助なれば幸いと願う。

サービスが主役に

 インターネットは前世紀最後の5年間でその姿を現した。人々はさまざまな先入感を持ちつつも、確実にそこに引き寄せられ、生活者から企業、政府に至るまで、その存在はいまやなくてはならないものになった。

 日本では、1999年にNTTドコモが、インターネットを取り入れたモバイルサービス「iモード」を、01年秋にはソフトバンクが固定電話網を利用したADSLサービス「Yahoo! BB」をスタートさせた。これらを中心に、日本は「ブロードバンド」と「モバイル」という先進的インフラが整備された環境を、新世紀初頭に早々と確立した。日本の通信インフラは世界一、いまでもその認識を持っている方は多いはずだ。

 しかし、インフラの整備や端末の普及は、情報社会の前提条件にすぎない。それらがどれだけ広くそして深く活用されるかによって、情報社会ははじめて成長してゆく。日本がインターネットの利活用、すなわちサービスの面で世界に大きく遅れているとは思わないが、サービスとそれを実現するソフトウェアの開発に関しては、米国に遠く及ばない状況にあることは間違いない。

 インフラの状況も変わりつつある。これまで比較的遅れているといわれてきた米国や西欧などでも、同様の環境がこの1〜2年で急速に普及しつつある。特に米国では、長期にわたる景気拡大も追い風となり、かつてのドットコム・バブルを生きながらえてきたインターネットサービスの列強たちが、インフラの進化によってさらに強力に活性化しつつある。いまや、その影響力は独壇場といっていいだろう。

 インターネットがいまどういう状況にあるのかを手っ取り早く知る最良の方法は、そうした米国の巨大インターネットサービス事業者の戦略を知ることにあると思う。具体的には、ヤフー、グーグル、アマゾン・ドット・コム、イーベイの4社がそれに相当する。新世紀情報社会の足元を確認する意味も込めて、05年が彼らにとってどういう年であったのかを、今後のIT産業の方向性と合わせて概観してみることにしよう。

メディア融合の中核になるヤフー

 ヤフーの05年は、自社を中核にしたメディア融合に向けてさまざまな戦略を打ち出した年だった。

 「ヤフーが携帯電話端末に参入」。11月にもたらされたこのニュースに衝撃を受けた方も多かっただろう。いま思えば、1月の2006 International CESで発表された新サービス「Yahoo! Go」の一部がリークされたものだった。動画ニュースの配信でABCやCNNなどテレビ局と提携、音楽配信やポッドキャスティングにも本格的に取り組む一方で、携帯電話やテレビからダイレクトにヤフーのサービスにアクセスするために、携帯電話端末でノキアやモトローラ、デジタルビデオレコーダーでティーボ(Tivo)などのハードウェアベンダーとの連携を強化した。

 また、ブロードバンドでも、米国で最近急激に拡大しているDSLサービスのトップ3ベンダー(SBC、ベライゾン、ベルサウス)に、ヤフーのポータルサービスやプレミアムコンテンツを提供するなど、通信とメディアの垂直統合的な融合を積極的に展開している。 

 こうしたヤフーの戦略展開は、日本の「Yahoo! BB」や携帯電話サービスなどをお手本にしつつも、それをインフラ起点ではなく、圧倒的規模の利用者を抱えるサービスから推進するという点で、より深い実体を伴った事業として成長する可能性が高い。インターネットを軸にした、通信やメディアの融合は、また新たな段階に入ることになるだろう。

 ヤフーは、自らコンピュータサイエンスの研究所を設立し、独自の検索エンジンや広告配信技術を開発するなど、グーグルの動きも着実にフォローしている。メディア融合を現実的に進めるIT企業として、今後も重要な役割を担ってゆくだろう(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第一回」より。ウェブ用に再編集した)。

成川泰教(なりかわ・やすのり)

株式会社NEC総研 調査グループチーフアナリスト

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手がけている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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