「ネット金融2.0」のカギWeb2.0型金融ビジネスは成り立つか(2/2 ページ)

» 2006年07月18日 08時00分 公開
[アイティセレクト編集部,アイティセレクト]
前のページへ 1|2       

 GMOインターネット証券は、自社開発の取引ツールのAPIを公開してユーザー側で自分用にカスタマイズして使えるようにした。その仕組みが、連鎖的あるいは自然発生的に広がっていくことでユーザー数が増加することを狙っているのである。「ユーザー同士のつながり」ではなく、「取引ツール同士のつながり」を基に構築される「非人間型」SNSの発展――といったところだろうか。

 「APIの公開は、あるサービスを別のサービスが使うという、サービス間の交流をもたらす。サービス同士が双方向で結ばれるということだ。これに対し、ブログやSNSは個人(ヒト)と個人(ヒト)の交流だといえる」(GMOインターネット証券代表取締役社長の高島秀行氏)

 取引ツールの名前は「はっちゅう君」。注文機能に特化した常駐型アプリケーションで、画面にはポップアップのように表示される。従って、何かの作業中でも同じ画面の中に小さく表示できる。そこには、RSS(※2)、Ajax(※3)といった最新技術を活用することにより、絶えずアップデートされた情報が流れるようにしてある。

 APIを公開する対象になるのは、顧客登録したユーザーのみ。当然、無償であるため、一般ユーザーは「はっちゅう君」と双方向のやりとりができるシェアウェアやフリーウェアをつくりやすい。それが、ネット上で配布される、あるいはソフトウェア開発会社がそれを組み込んだ投資分析ソフトなどを製造・販売するといったことにより、広まっていくことが見込まれるのである。その結果、「顧客にはいろいろな選択肢が与えられる」と高島氏は言う。もちろん、その「兄弟プログラム」からの発注手数料は、GMOインターネット証券に落ちるようになっている。

 こういったAPIの公開は、実はWeb2.0型サービスの象徴かもしれない。

 「ウェブ進化論――本当の大変化はこれから始まる」(筑摩書房)がベストセラーになり、一躍時の人となった著者の梅田望夫氏は同書の中で、Web2.0の本質について「自社が持つデータやサービスを開放し、不特定多数の人々がその周辺で自由に新しいサービスを構築できる構造を用意すること」と記している。これに即して考えると、APIの公開こそが本来のWeb2.0の姿だといえることになる。とすると、Web2.0型ビジネスを展開する代表的な企業といえば、Webサービス(※4)を推進する、グーグルやアマゾン・ドットコムとなる。現に、梅田氏も著書の中でこの2社を挙げている。

 GMOインターネット証券は、証券会社でありながら最新ネット企業のビジネスモデルを追求し、ネット金融の世界に新風を巻き込もうとしているのである。

※2 リッチ・サイト・サマリーの略(別名あり)。簡単にいうと、さまざまなウェブサイトの見出しや更新時刻などの情報を集約して表示できる仕組み。

※3 「エイジャックス」と読む。簡単にいうと、ウェブ画面をスムースに表示させることができる仕組み。ページの全面を「リロード(更新)」せず、必要なところだけをダウンロードすることにより実現している。

※4 ソフトウェア開発におけるプログラムをしやすくするために、データやサービスをウェブで公開することを指す。このサービスを活用すれば、そのデータやサービスに基づいたソフトを簡単につくることができる。

前のページへ 1|2       

Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ