「日本のグーグルでありたい」Web2.0型金融ビジネスは成り立つか

Web2.0を使いこなす、新しい開拓者としての任務を遂行する唯一の会社であるGMOインターネット証券は、Web2.0型金融ビジネス存続のカギを握る。まさに孤軍奮闘ともいえなくもない戦いで舵取りをする、若き代表取締役社長、高島秀行氏が目指すのは、イー・トレード証券でも野村證券でもメリルリンチでもない。なんと、グーグルである。その真相を聞いた(構成・文=編集部)。

» 2006年07月27日 08時00分 公開
[アイティセレクト編集部,アイティセレクト]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「Web2.0型金融ビジネスは成り立つか――革新か、禁じ手か 『ネット金融2.0』の実態に迫る!」でご覧になれます。


 従来のネット証券は、主に証券会社がネットでサービスを始めようとして生まれた。われわれの場合は入り方が逆で、ネット事業者による証券サービスへの参入だ。だから、ネットの利用方法やサービスでは、従来のネット証券より有効なものを提供できる。

 ターゲットにしているのは、そういったネット証券の顧客。そうしたところではシステムトラブルが結構起きていて、多くの利用者が不満を抱いている。その上、手数料だってまだ高い。

 われわれは、システムをゼロからフルスクラッチで自社開発した。データベースの一部を除き、ほぼオープンソースでできている。これは日本初。海外でもまずないだろう。

 しかも、開発を始めたのは2005年度。当然、最新鋭のシステムで、大体6、7年前につくられた既存の大手ネット証券のシステムと比べれば、格段に拡張性に富んでいる。安定性やパフォーマンス性の高さにも自信がある。

 例えば、通常なら6カ月かかるシステム拡張も、われわれなら1カ月で対応できる。ネットの特性は、サービスが成功した瞬間に急激に顧客が増加すること。そのときにいかに対応できるか。従来のシステムであれば対応に時間がかかってしまうが、われわれなら素早く対応できる。

 そうした中で良いサービスを提供すれば、従来のネット証券の顧客が徐々に移ってくるだろう。

 また、オープンソースの利用により、開発コストを他社の10分の1くらいに抑えている。その結果、業界最安値の手数料体系でやっていく余裕ができた。われわれが4月に手数料を発表した後、他社が相次いで手数料引き下げを実施。5月29日に改めて新手数料を発表したが、こうした価格競争にはまだ十分耐えられる。だが、他社はあれ以上安くしてやっていくことは難しいだろう。

 ビジネス的にも、残高報告書や取引報告書を電子交付するなどして、郵送料の削減や発送業務の効率化を実施している。人材雇用も必要な人数だけに絞った。現在、社員数は20名強。そのうち10数名がシステム部員であるため、証券業務自体は10人にも満たない数でやっている。業界一少人数で運営している、業界一安価な証券会社だ。

 Web2.0という意味では、API(※1)を公開している。これにより、弊社のサービスがグーグルやアマゾン・ドットコムのようにいろいろなところで使われ、発展していくと考えている。そして、それが自然発生的に広がることを狙っている。ただ、それだけをもって「ネット金融2.0」といっているつもりはない。いずれは、ブログやSNSも展開したい。

 6月末にはモバイルサービスを開始した。7月にはマッキントッシュ版ツールの提供を始めた。ほかのネット証券からはまだマック版は出ていないはずだ。

 9月ごろには外国為替を取り扱う予定だ。そのとき、現在の現物株式や信用取引で使っているIDとパスワードで利用できるシングルサインオンの仕組みで提供する。そうすれば、タブを切り替えるだけで複数のサービスを利用できるようになる。その後はほかのネットサービスとも融合させ、今までとは違った、証券業だけではないサービスも提供していきたい。それには例えば、今後提携するかもしれない銀行やクレジットカードのサービス、あるいはそれらとの間における振り替えサービスが考えられる。

 GMOインターネット証券は日本のグーグルでありたい。自分たちのサービスは自分たちで開発し、広く展開していく。そうやって技術力で他社を引き離す。高い技術力や開発力で新しいサービスを次々に出す。その点でグーグルのようになりたい。(談)

※1 アプリケーション・プログラム・インタフェースの略。ソフトウェア開発におけるプログラム上のルールを意味する。それに従えば、基となるソフトと共通する機能を自らプログラミングすることなく、そのソフトをカスタマイズできる。

GMOインターネット証券代表取締役社長の高島秀行氏(撮影=吉岡存)

たかしま ひでゆき

1969年大阪府生まれ。証券会社で営業マンとして勤めた後、システム会社ならびに外資系コンサルティングファームで証券系のビジネスとシステムのコンサルティングに従事。 オンライン証券については創成期より複数の証券会社で立ち上げにかかわる。2005年6月、GMOインターネットの証券準備プロジェクトに参加。同年10月より現職。


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