最新バックアップ技術で仕事を楽にしよう今どきのバックアップ入門(3/3 ページ)

» 2006年07月19日 11時00分 公開
[堀江徹,ITmedia]
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合成バックアップ

 従来バックアップといえば、フルバックアップ・増分・差分と運用していた。それに対し、合成バックアップ機能では、フルバックアップと複数の増分バックアップから、新たに1つのバックアップセットを合成することができる。この機能は、毎日対象となるクライアントのファイルシステムで、中程度から少量の変更が発生するという場合に有効だ。

 ユーザーは、初めに従来と変わらずフルバックアップを作成する必要があるが、一度この作業を行えば、時間の掛かるフルバックアップは二度と行う必要がなくなる。この機能から、新たな合成フルバックアップを作成できるからだ。これは、間接的にリストア時のネットワークトラフィックの削減、データの保存に必要となるテープ数やディスク容量の節約につながるというメリットもある。

 また、バックアップセットの合成は、ドライブの空き時間に行うことも可能なため、ドライブの稼働率を考慮した合成を行うこともできる。

NDMPバックアップ(NASサーバ)

 NASサーバは2000年以前から、IPネットワークに直接接続できるストレージシステムとして、企業利用が進んできた製品だ。2003年以降になると、ディスクシステムの低価格、大容量化の流れの中でさらに本格的に利用が進んできた。導入理由としては「データの一元管理」「サーバのバックアップ」を挙げる企業が過半数以上を占めており、データ管理を考える上で重要なデバイスとなっている。

 多くのNASサーバのバックアップソフトには、米NetAppが開発したNDMP(Network Data Management Protocol)がオプションとして提供されている。バックアップサーバが、NDMPプロトコルを通じて、NASにバックアップ、リカバリ、ロボット制御コマンドを送信することになる。

NDMPバックアップ NDMPバックアップ(NetBackupの場合)

SANを利用したバックアップ(デバイス共有/LANフリーバックアップ)

 ファイバーチャネルベースの技術を利用しストレージデバイスとサーバ間を接続するストレージ専用ネットワークとなるのがSANだ。ストレージ専用のネットワークを構築することで、高速なデータ転送やバックアップ、ストレージデバイスの共有が可能になる。データのバックアップなどといったストレージの管理に使用するトラフィックを一般のIPのLANと分離させて運用することで、大規模システム内でのデータ共有やデータ移動などを効率的かつ柔軟に対応できるメリットがある。

SANを利用したバックアップ SANを利用したバックアップ

 SANの基盤技術は、特にTCO削減のためのストレージ統合やバックアップ統合といったITインフラ戦略とも密接にかかわっており、データ管理の王道といえるストレージ管理インフラになりつつある。当然、この技術を支援するバックアップ製品も非常に多く、SAN環境に接続されたディスクドライブやテープライブラリを複数のバックアップサーバ間で動的に割り当て、共有することができる。

 しかし、SANの導入には、初期導入コスト、技術者のスキルなどといった課題も残っている。そのため、大きく普及するに至っていないのが現実でもある。

iSCSI

 iSCSIは、古くからストレージの標準となっているSCSIコマンドとデータ自身をIPパケットのフレームにカプセル化し、LANを介してストレージ製品と接続、制御を可能にする技術だ。先にファイバチャネルを利用したSANの構築を示したが、別のアプローチとして、iSCSIを使用したストレージネットワークも選択肢の1つになる。

 iSCSIは、低コスト化の進んだIPネットワークインフラを利用できるという点で、ファイバチャネルによるSANよりもコスト的に導入の敷居が低い。その一方で、ネットワークの高速化に対してサーバ側でのiSCSIのプロトコル処理の性能が追いつかなかったり、IPネットワークを介することによる、セキュリティ面の考慮が今後の課題となってくる。

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