Ottawa Linux Symposium:1日目Linuxの最新動向リポート(2/4 ページ)

» 2006年07月27日 08時00分 公開
[David-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

今後のカーネル開発

 続いてコルベット氏は、現行バージョンが2.6.12だった昨年からこれまでのカーネルの大きな変更を振り返った。2.6.12以降にリリースされたバージョンの中でも、コルベット氏は、カーネル2.6.15のリリースが、Linuxカーネルに取り組むために最初の開発マシンをトーバルズ氏が購入してから15年後に当たる2006年1月2日だったことに触れていた。

 Linuxカーネルは15年の歴史があるが、この先5年間のロードマップが存在しない。Linuxカーネルには機能面での明確なスケジュールや今後実装される具体的な機能のリストさえ存在せず、どんな機能であっても確実な資金源なしには開発を進める手立てがない、とコルベット氏は語っている。その途上でどんなハードウェアが出現するのか、ユーザーからどんな要望が出てくるのかは誰にも分からない。とはいえ、どんな未来がわれわれに予測できるかを考えることからカーネルの次期リリース版は生まれる。

 カーネル2.6.18のマージウインドウはクローズされており、来るべきリリース版には、新たなコアの時間サブシステム、エラー処理やカーネルロックの検証機能を含むシリアルATA用の大がかりなパッチセットなど、数々の変更が加えられるだろう、とコルベット氏は話している。このシリアルATAのためのパッチは、カーネル開発に役立つように設計されている。ロックはスレッドを分離しておくためのものだが、正しく実現するのは難しい、と彼は説明している。また、カーネル2.6.18ではdevfsが削除されるだろうと彼が述べると、会場からは拍手が起こった。

 さらにコルベット氏の話題は、仮想化機能をカーネルに統合する際の課題へと移り、さまざまな仮想化プログラムに個別の管理を求めてはならず、それぞれが独自のパッチセットを持つことのないように、統一されたパッチセットによってカーネルに取り入れる必要がある、と述べている。また彼は、真の管理ツール群を獲得しつつあるSELinuxと、SELinuxの競合で最近Novellが獲得したAppArmorを取り上げ、カーネルのセキュリティの話題にも時間を割いていた。

 充実した45分間の講演の最後に、コルベット氏はLinuxカーネルがGPLv3に移行することはまずないだろう、と述べた。ライセンスの切り替えにはカーネル開発者全員の同意が必要になるが、彼らはまだ個別にコードのごく一部に著作権を保持しており、その中には他界した開発者もいるので、どうしようもないだろう、とのことだ。

 なお、コルベット氏の講演で使われたスライドはこちらから入手できる。

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