Ottawa Linux Symposium:1日目Linuxの最新動向リポート(4/4 ページ)

» 2006年07月27日 08時00分 公開
[David-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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バッテリーの寿命

 続くセッションで「LinuxノートPCのバッテリー寿命」という講演を行ったのは、Intelのオープンソース・テクノロジーセンター(Open Source Technology Centre)に所属し、LinuxカーネルのACPIサブシステムのメンテナでもあるレン・ブラウン氏だった。ノートPCは、その性質上、パワーマネジメント分野の技術革新を生みだす原動力になっている、と彼は述べている。

 講演の前半では、まずノートPCが消費する電力の目安を測定する方法が話題として取り上げられた。最初の方法は、可能ならばノートPCからバッテリーを外した状態で交流電力計を使うというものである。この方法は100ドルで実施できるが、交流から直流への電力変換ができず、ほとんどのノートPCは交流、つまりは際限のない電源につながっていることを認識して、バッテリー使用時に使われる省電力機能を無効にしてしまうという問題がある。

 2つ目の方法も基本的にはこれと同じだが、電力ブリックによって生じる電力損失を計算から除くために直流電力計を使う点が異なる。コストはかかるがある程度正確な方法として、ノートPC側のバッテリーリードの間に直流の入力システムを設置するやり方もある。

 だが、最もシンプルな方法は、ノートPCが提供するバッテリー情報を利用することだ、と彼は指摘する。まずは、フル充電したバッテリーを残量がゼロになるまで使い切るのにかかる時間を計測する。次に、計測した時間をバッテリーのワット数と比較して消費電力を求める。例えば、容量53ワット時のバッテリーを1時間で使い切ったとすると、このノートPCは消費電力53ワットで動作したことになる。また、2時間で使い切ったなら、消費電力は26.5ワット、というように求めればよい。

 ブラウン氏は、自分が取り組んできたLinux Battery Life Tool KitというGPLライセンスのプログラムのリリースについても告知していた。ただし、このプログラムはベンチマーク評価を行うものではない、と強調していた。コードは、kernel.orgサイト内の彼のディレクトリから入手できる。

 このテストプログラムが提供している最初のテストは、アイドリングのテストである。アイドリングは、ノートPCの非常に基本的な機能であり、キーボードのキーを押す合間にもアイドリングが行われているという。次のテストはWeb読み込みテストで、2分ごとに別のWebページを表示させるものだ。アイキャンディを使ったアイドリングテストのようなものであり、その結果にアイドリングとの違いは見られない、とブラウン氏は述べている。

 次はOpenOffice.orgを利用したテストだが、実行にはOpenOffice.orgのバージョン1.1.4が必要であり、そのほかのバージョンには対応していない。ほかにもMplayerによるDVD再生テストや、ソースコードのブラウジングとコンパイルからなるソフトウェア開発者向けの負荷テストがある。

 彼のノートPC上で行われた多くのテストの実施例が提示された。ただし、別の環境で行った電力消費の測定結果も見せながら、結果はノートPCごとに異なっている、とブラウン氏は述べていた。

 これらの結果には、別のテスト環境で得られた消費電力とパフォーマンスの両方の数値が含まれていた。こうした統計の中には、彼のデュアルコアCPUのノートPCで、コアの1つを無効にした場合と2つとも有効にした場合のそれぞれで計測されたパフォーマンスと消費電力の統計値や、回転数が5400rpmのHDDと7200rpmのものとの比較もあった。

 HDDの回転速度は、ソフトウェア開発のパフォーマンスには大きな影響を与えていたが、そのほかの場合には、回転速度が高くても目立った影響はなく、逆に電力消費の点で少しコストがかさむことになる。また、2つ目のコアを有効にした場合は、追加の電力はほとんどかからないが、パフォーマンスは著しく向上する。最も大きな差が出たのは液晶ディスプレイ(LCD)の明るさだった、とブラウン氏は述べている。彼のノートPCでLCD設定を最も明るいものから最も暗いものに変えると、バッテリー寿命が25%以上も延びたという。

 また、Windows XPとLinuxのそれぞれの消費電力を手持ちのノートPCで比較したところ、やはりノートPCごとにパフォーマンスの違いに差が見られたそうだ。彼のノートPCの場合、DVD再生時の消費電力はLinuxよりもWindowsの方が低かったようだが、これは絶えずDVDの読み込みを行うMplayerとは違ってWinDVDがバッファリングを行っているからだ、とブラウン氏は説明していた。

 この日の締めくくりは、Intelによるレセプションだった。講演者はいなかったが、LinuxやオープンソースをテーマとしたIntel主催のエッセイコンテストの審査結果が発表された。デジタルデバイドの解消に関するエッセイで最優秀者となったデビッド・ヘリアー氏には、高性能ノートPCが、「わたしにはできる(I can)」というエッセイで次点を獲得した人にはiPodが、賞品として贈られた。

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