IT侍、戦場に立つImagine Cup 2006 日本代表追っかけルポ(2/2 ページ)

» 2006年08月08日 01時01分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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4日間の激戦、その幕開け

 一方のソフトウェアデザイン部門。前日、全41チームが4つにグルーピングされ、日本代表チームは、ドイツ、ブラジルなどと同じグループとなった。サッカーであれば、かなり厳しいグループと言える。

 同部門は4日間掛けてじっくりと審査が行われる。初日はまず午前中にライトニングラウンドとして、7分間で自作アプリケーションの概要を説明するラウンドが開催された。このラウンドは審査のためではなく、午後から始まる第1ラウンドのいわば肩慣らしといったところだ。

 同部門の審査は、問題定義(15%)、革新性、インパクト、有効性など考慮する「設計」(60%)、「開発」(15%)、プレゼンテーション(15%)という大きく4つの観点から行われる。それぞれの%表示は、全体の評価に対する割合だ。テーマが設定されているので、どうしても似たような発表になってしまいがちなのが同部門の傾向だ。例えば昨年であれば、「テクノロジーの力であらゆる境界をなくしていこう」というテーマの下、SNS的なサービスを絡めた発表するチームが数多く見られた。この部分での革新性が上位進出の鍵となる。

 日本チームは、ライトニングラウンド7分間の大半を自己紹介で消化。後半、医療ミスによる死亡者数を交通事故や肺ガンによる死亡者数と比較したグラフを見せ、さらに「これは公表されているものだけであり、実際はさらに多く医療ミスは発生している」と話し、同問題に対するソリューションの重要性を審査員に説いていた。

医師姿にHMDを装着し自己紹介に立つ前川さん

 記者は、「BRIC」(ブラジル、ロシア、インド、中国)のチームに興味を持っていた。このうち、昨年のソフトウェアデザイン部門で優勝したロシアチームは、今年も革新的な発表を行った。

 同チームは、今回のテーマである「健康」を「スポーツ」と関連付け、単調になりがちなトレーニングをどう楽しむかということに力点を置き、心拍数などを測定する各種センサーと、音楽再生とネットワーク接続のためにPDA(もしくはWindows Mobile搭載端末)を組み込んだスポーツウェアを紹介。さらに同じような運動、音楽志向持ったユーザーをネットワークを介してコミュニティー化してしまうという試み。ライトニングラウンドにもかかわらず多くの注目を集めていた。

ナイキのスポーツウェアに身を包んだロシアチーム
こちらは韓国チーム。モーションキャプチャを利用し、エクササイズの効果を最大化する支援を行う発表内容だった

 幾つかのチームを見る限り、やはり英語の壁はある程度存在している。事前に準備をしてきたとはいえ、プレゼンテーションも一本調子なものとなりがちで、また、プレゼンテーション後の質問においては、十分に理解できないというケースも散見された。プレゼンテーションが全得点に占める割合は15%だが、この部分で涙をのむことになるチームも出てくるだろうと思われた。

 午後に行われた第1ラウンドでは、質疑応答を含め30分間でプレゼンテーションを行った。日本チームは医療ミスが看過できない状況になってきている現状を紹介、少ない行動で最大限の情報を得つつ、医療現場における複雑なワークフローの最適化を図るためのソリューション「Project Docterra」を発表した。同ソリューションでは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の利用により、両手が自由になるという点や、薬剤の複雑な競合関係も可視化することで理解しやすくなるというメリットが中山さんによって示された。さまざまな医療データをオーバーレイでHMDや携帯端末上に表示する処理はXAMLを利用、サーバサイドで行うことで処理の重さもさほど問題にならないと説明した。

 質疑応答では、このソリューションがどの程度のコストが必要かなどのビジネス的な質問のほか、患者の最新の状態をリアルタイムに把握できないのではないか、実際のトライアルは行ったのかなどを審査員から聞かれたが、医療関係者へのインタビューなども多く行ったほか、リアルタイムの情報取得も比較的容易に開発できると返答していた。

 初日の結果は、次の日の昼ごろの発表となる。第1ラウンドで勝ち残った12チームは、50分間のプレゼンテーションを行う第2ラウンドに進む。そこでさらに6チームに絞られ、最終ラウンドへと進むことになる。

マイペースな人たち

 一方、.PGチームはというと、いったん環境が整ってしまうと、いつものようにリラックスして淡々と作業を進めていた。途中、主催者側から全チームに対し、新たなプロパティを提案されるも、「すでに実装しており、ほかのチームに有利な状況を招くリスクがあるならと、拒否権を発動した(笑)」と鈴木さんは話す。

 その後も終始リラックスし、のびのびとコーディングを進めている。練られた戦略そしてプログラムを競わせるマップとして、タージマハルを模したマップも公開され、いよいよ佳境に入ったビジュアルゲーミング部門。「鈴木さんは寝ないと宣言しました。これからどんどんハイテンションになっていくでしょう」と竹井さん。終了まで残り10時間弱、コーディングにおけるひらめきが活性化する時間帯に入ってきたようだ。

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