日本ビジネスオブジェクツの社長兼米国本社副社長に話を聞いた。
日本ビジネスオブジェクツの社長兼米国本社副社長に、印藤公洋(いんどう きみひろ)氏が2月1日に就任した。その後、半年が経過し、同氏はビジネスインテリジェンス(BI)市場をどのようにとらえているのか、同氏に聞いた。
「PDCA(Plan Do Check Action)サイクルを回すのにBIは不可欠」と話す印藤氏。企業において、会議を行う際に、さまざまなメンバーがそれぞれ異なる情報ソースで作成されたスプレッドシートを持ち寄り、話し合いをしても、混乱が生じてまとまらないという。全社員が閲覧できる情報系システムを構築し、揺るぎのない「ワンファクト」をベースに社員が議論することが必要というのが、印藤氏の考えだ。
BI導入で日本は欧米に遅れをとった。その理由として同氏は、「1990年代米国では、製造業がERPやサプライチェーンマネジメント(SCM)といったITを活用して、生産性を高めるのが大きな流れだった。ITバブルはそこで崩壊したものの、ITをより戦略的なツールとして活用しようという動きは根強く、それが情報を最大限に活用するBIの導入につながった」と話す。
一方で、日本企業は、ITの活用に遅れただけでなく、意識がコスト削減に集中したこともあだになった。欧米の企業が日本企業よりも「トップダウン経営」に相対的に近いことも、BI導入が進んだ要因になっているという。
「米国ではマルチナショナルカンパニーを打ち出す企業も多い。すべての情報はCEOに集められ、標準となる最良のモデルケースを構築し、それを各地に横展開していくという手法がとられた」(印藤氏)
横展開がキーワードとした場合、「標準化」と程遠いスプレッドシートの利用は致命的になる。極端な話、ある企業の米国本社にいるCEOが、アジアなどの現地法人の1人1人の営業担当者の仕事ぶりを数値も交えて常にチェックできるような体制を構築する際に、BIが中心的なプラットフォームになるわけだ。
その意味で、同社が特に注力しているのは、柔軟にデータを統合し、確かな情報を取得するフレームワークを提供することだという。同社はそれをEnterprise Information Management(EIM)戦略として展開している。
EIM戦略では、信頼できるデータ提供やデータ品質の改善を図る。2009年に施行される日本版SOX法に企業が対応する際にも、有効という。同社は、企業経営の可視化を支援することで、アグレッシブな成長を遂げる考えだ。
BI市場では、データベース製品を提供するOracleやMicrosoftが本格参入することで、ベンダー間の競争が激化するともいわれる。市場シェアでトップを争うビジネスオブジェクツも油断できる状況ではない。これについて印藤氏は、「有力なアプリケーションベンダーがBI市場に参入することは決して悪いことではない。市場の全体の規模を広げてくれるならば、むしろチャンスは増えると考えている」と話している。
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