Windows Live計画を打ち負かすことを狙うエンタープライズ向けアプリケーション「Google Apps for Your Domain」は、果たして企業標準であるOfficeからの移行を実現できるのだろうか。
検索大手のGoogleがホスティング型オフィスアプリケーションバンドルを提供する計画を打ち出したことで、同社がMicrosoftの巨大ソフトであるOfficeを倒す可能性をめぐる議論が活発化している。だが、まだ答えが出ていない疑問が1つ残されている――「企業ユーザーはGoogleにチャンスを与えるか」ということである。
Googleは8月28日、広告収入によって支えられるコミュニケーションツールのセット「Google Apps for Your Domain」を発表した。これにはGoogle Talk、Calendar、Gmailなどが含まれ、ソフトウェアのインストールやメンテナンスの手間を省きたいという中小企業をターゲットとする。
アナリストらによると、今回の一斉射撃はMicrosoftのWindows Live計画を打ち負かすことを狙ったものだという。この作戦は、GoogleとMicrosoftとの間でエスカレートする戦いの一部になりそうだ。
しかしGoogleが本当にMicrosoft Officeに打撃を与えるためには、中堅企業および大企業の支持を獲得する必要がある。
Googleがいかにしてそれを実現する計画なのかは、まだ明らかになっていない。発表文の中で同社は、個人のWebサイトやコミュニティーグループから非営利組織や中小企業、さらには大学や大企業に至るまで、あらゆる市場をターゲットにするとしている。
Googleによると、大学や大企業などの市場に関しては、広告を掲載しないプレミアム版を「高度なニーズを持った組織」向けに開発する予定であり、その特徴や機能は「間もなく発表する」としている。
IT専門家らは、Googleの狙いは良いが、企業ユーザーをOfficeから引き離すのには長い時間が掛かると指摘する。解決しなければならない問題としては、次のようなものがあるという。
・大企業は自社のデータを安心してGoogleに任せられるか?
答え プライバシー問題を懸念するITマネジャーもいるが、ゲームデベロッパーRed OctaneのWebマスター、マイク・ドーンを含む大多数のITマネジャーは、それほど心配する必要はないとしている。
・例えば5000人のユーザーを新しいプラットフォームに移行させるのに、どれだけのコストが掛かるのか?
答え 不明だが、ITマネジャーらはMicrosoft Officeをお払い箱にするのに伴う移行、統合、トレーニングのコストを心配している。
・可用性という面では、Googleのサービスはどの程度まで信頼できるのか?
答え 多くのSaaS(サービス型ソフトウェア)モデルの場合と同様、オフラインでのアクセスに不安を感じるというITマネジャーもいる。
Certus Managed Hosting Solutionsの最高戦略責任者、ジョン・ウェブスター氏は、「わずかなコストを節約するために、Officeから本格的に移行する企業があるとは思えない」と話している。Googleにとってのチャレンジの1つは、Microsoft Officeスイートが現状のままでも十分な機能を提供するということだ、とウェブスター氏は指摘する。
「切り替えに踏み切るには、ビジネス上の理由がなくてはならず、再トレーニング、ホスティング環境への移行、安定性のレベルといったことも考慮する必要がある」(同氏)
ウェブスター氏によると、Microsoft Officeとの戦いでは、Sun MicrosystemsのStarOfficeプロジェクトやそのほかのライバル製品の前に立ちはだかった「慣性というチャレンジ」にGoogleも直面するという。Microsoft Officeは、ITマネジャーにとって全般的に満足できる標準となっているからだ。
「Windows用Officeに対抗するのがどれだけ困難であるのか、Sunに聞いてみるといい。Officeはデフォルトの標準になっているのだ」とウェブスター氏は話す。
こういった見方をする人は少なくない。カンザス州レネクサにあるエンジニアリング会社Terraconでネットワーク管理者を務めるマーク・コート氏は、「Googleの計画には興味はない。MicrosoftのWebアプリ計画に魅力を感じないのと同じ理由だ。プロダクティビティソフトウェアは、ネットに接続していないときでも利用できなくてはならない」と話す。
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