コンテンツ管理に乗り込むEMCの武器は「ソフトウェア」

EMCはソフトウェア、中でもエンタープライズコンテンツ管理(ECM)の分野へ積極的に取り組む方針だ。

» 2006年08月31日 19時03分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 EMCは、ディスクアレイをはじめとする伝統的なストレージハードウェア製品から、ソフトウェア製品への比重を高めている。中でも重視しているのが、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)の分野だ。8月31日に行った説明会において、「コンテンツ管理を足がかりに大きく飛躍したい」と、EMCジャパンの執行役員兼EMCソフトウェア・グループ本部長の安藤秀樹氏は述べた。

 EMCは過去4年の間、約40億ドルもの資金を投じて約20社に上る企業を買収してきた。Legato Systemsなどのストレージ関連に限らず、仮想化ソフトウェアのVMware、セキュリティ企業のAuthenticaやRSA Securityなどがリストに含まれている。

 この中で、同社が一貫して買収を続けてきたのがECMの分野だ。コンテンツ管理ソフトウェアを提供してきたDocumentumにはじまり、2005年10月には紙の書類をデジタルデータに変換し、ワークフローへと流し込む入力管理ソフトウェアのCaptivaを買収。さらに、業務関連のコンテンツをレポート化し、アーカイブする管理ソフトウェアを開発するAcartusも傘下に収めている。

 Documentumのコンテンツ管理製品に、紙文書を電子化するCaptivaのソフトウェアを組み合わせることによって、情報の入り口から管理の部分までをカバーするという構想だ。将来的にはAcartusのツールも連動させ、情報の上流から下流までをエンドツーエンドでカバーしていく方針という。

 一連の買収は、EMCがかねてから推進してきたILM(情報ライフサイクル管理)戦略を下支えするものだと安藤氏。「ILM戦略はソフトウェアと密接に結びついている」(同氏)。

 また、米EMCのストラテジック・マーケティング担当ディレクター、ナオミ・ミラー氏は、コンテンツ管理やアーカイブにしても、ILMという下支えがあってこそ効果を発揮するとした。

米EMCのストラテジック・マーケティング担当ディレクター、ナオミ・ミラー氏

 「従来のアーカイブは、電子メールやERPなどのアプリケーションごとに断片化されており、それぞれ個別にデータの生成と格納、アーカイブが行われてきた。しかしこれではコストがかさむ上に管理が複雑だ」(ミラー氏)。

 これに対し、ILMに基づく1つのレポジトリでデータをアーカイブし、管理することにより、パフォーマンスの向上やコスト削減効果が見込めるほか、「法規制への遵守もより可能になる」(ミラー氏)という。個々にデータをアーカイブしていては、いざ当局から求められたときに必要な情報を探し出すのが困難だが、そうした懸念は解消できるとした。

 「1つのレポジトリに格納できるという点が、日本版SOX法対応において貢献できる最大のメリットだ。改ざんを防ぎつつ、情報がどういう形で生み出され、いつ、誰が閲覧したのか、次のバージョンへの更新はどうするかといった事柄をすべて管理することができる」(安藤氏)。

 ECM市場ではIBMなど競合他社の動きも激しさを増しているが、EMCではシングルレポジトリを差別化の武器とし、日本版SOX法対応や内部統制などで成長が見込まれる市場でのシェア拡大を狙う。「日本のコンテンツ管理市場は2007年に120億円〜150億円と見込んでいる。その中で10〜15%のシェアを取っていきたい」(安藤氏)

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