ガバナンスの改革は東高西低の傾向――自治体経営の現状驚愕の自治体事情(3/3 ページ)

» 2006年10月17日 08時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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競争意識の希薄さが露呈

 今回の結果は自治体間の競争意識の希薄さも露呈している。数多くの自治体が密集している大都市圏であれば、ガバナンス改革についての競争的な環境が整っており、行政改革の手法などについて一定のナレッジが集積しているようだが、地方になると、自治体規模もさまざまで、競争意識が育成されない傾向があるようだ。同じ行政サービスをより安く、より広く享受することは、競争原理によって成立し得る。民間経営手法としてはごく当然の考えではあるが、独占的にサービスを提供してきた自治体には、この競争原理の考えが希薄なところがある。

 「電子自治体への取り組み、その現状が明らかに」でも述べたが、従来は、自治体の取り組みを定量的に計るためのベンチマークたるものが存在しなかったことも競争意識が生まれなかった背景として考えられる。しかし、本特集で取り上げてきたように、もはや自治体も市場の評価を受ける時代となった。集積したナレッジの活用、さらには民間経営手法には優れたもの、ベストプラクティスが存在しており、そうしたものを積極的に導入することで、いずれの自治体においても改善の余地は多く残されているといえる。言い換えれば、こうした情報に対する自治体の感度が問われているのではないだろうか。

上位の自治体に符合するのは

 自治体経営の巧拙が問われる中、上位の自治体には、幾つか符合する点が見て取れる。

 まず、八王子市は黒須隆一市長、杉並区は山田宏区長といったように、強力なリーダーシップに基づいた自治体運営がなされていること。もう1つは、自治体の特性や人材を生かすという観点から総合計画が立案されていることだ。図らずも練馬区がスローガンとして掲げている「区民をパートナーとする地域の経営者としての進化」はその意味で非常に示唆に富んでいる。経営努力もなしにコストを積み上ねた結果、住民に税金という形で転嫁する、そこで問題が生じるのならコストダウンを図るという、減量改革の底辺にある考え方から、住民を中心とした考え方へと変化していくことが自治体ガバナンスの取り組みにおいて重要な意味を持つものと考えられる。

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