GIMPの次世代イメージングコアのデモLeverage OSS

現状のGIMPで用いられているコアイメージ処理フレームワークに取って代わり、まったく新しいデータモデルと操作を提供するGIMPの次世代イメージングコア「GEGL」。ようやく実際に使える実装がお目見えした。

» 2006年10月24日 10時00分 公開
[Nathan-Willis,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 先週の金曜日、ノルウェーのベルゲンで開催されたPiksel 06フェスティバルで、GIMP開発者のオイビン・コル氏はGeneric Graphical Library(GEGL)の公開デモを行った。GEGLは、ずっと前からGIMPのコアイメージ処理フレームワークに取って代わり、まったく新しいデータモデルと操作を提供することになっていた。しかし、開発は停滞し、このプロジェクトは完全に失敗だと見る批評家が多かった。

 GEGLが提案されたのは1999年のことだが、それから数リビジョンサイクルにわたってGIMPの既存のコードベースが生き残っていた。2005年の夏には、GEGLは事実上暗礁に乗り上げたかのように見えた。その後、コル氏はプロジェクトを生き返らせようと一念発起し、次の数カ月で彼とスベン・ノイマン氏とマイケル・ナッテラ氏がコードベースを詳しく検討し、再び作業を軌道に乗せた。コル氏は2006年3月のLibre Graphics Meetingで自分たちの成果を披露した。

 その時点では、限定的な機能しかないコマンドライン・デモパッケージ以外、GEGLを直接に試すことのできる方法はなかった。先週の金曜日のデモでは、 コル氏が書いた新しいグラフィカルインタフェースが披露されたが、これは現在のCVSスナップショットに含まれている。このGUIでは編集機能は実装されておらず、ユーザーがGEGLのコア操作をすべてライブイメージで試せるようになっている。このバージョンのGUIツールで実装されている操作は全部で87個ある。

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 GUIの左側のウインドウには、操作選択ボックスとアクティブな操作のツリービューがある。ツリーに操作を追加するには、ツリービューのどこかを右クリックし、新たな操作をツリーの現在のレベルに「兄弟」として、あるいは別の操作の「子」として追加する。

 右側のウインドウには、ツリービューの結果としてイメージが表示される。この表示は、ツリービューで操作を追加/削除/再配置するか、操作のパラメータを調整すると、直ちに更新される。

 このライブ合成は、GEGLの普通でないデザインパターンの1つを示している。イメージデータは単純なピクセル配列として表現されてはいない。GEGLでのイメージはすべて有向非循環グラフになっているのだ。つまり、順序づけられ接続されたノードの集まりであり、各ノードが入力と操作と出力とから成っている。

 従って、すべての操作はある意味で同等といえる。これらの操作は単一のノードから複雑なマルチレベルのツリーに至るまで、どんなグラフにも適用でき、GUIデモでも見られるとおり自由に再配置できる。イメージファイルをロードし、画面上にイメージを表示するのは、グラフ内の多くの可能なノードの2つにすぎない。

 コル氏は、GEGLをビルドするユーザーに彼自身のGEGL Webページにあるブートストラップ手順に従うように勧めている。GUIツールはまだ実験的なコードである。編集には適さないし、クラッシュしやすいし、ドキュメント化されていない。コル氏は、これがほかの開発者たちの興味を引くものと期待している。彼らはGEGLのアーキテクチャーと機能を調べる手段を得たのだから。

 こうした制限があるとしても、GIMPのファンにとって、GEGLの実際に使える実装がお目見えしたことは画期的な出来事である。ユーザーたちはGEGLが出てくるという話を何年間も聞かされていたが、既存のGIMPコアがずっと生き残っていた。今や、この長いトンネルにようやく光明が見えてきたといえるだろう。

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