10月26日、次世代のWebを体験するためのイベント「REMIX Tokyo」が東京国際フォーラムで行われた。基調講演で提示されたのは、Web2.0とも呼ばれる次世代Webの姿と、ソフトウェア+サービスによる新たな体験だ。
マイクロソフトは10月26日、次世代のWebを体験するためのイベント「REMIX Tokyo」を東京・千代田区の東京国際フォーラムで開催した。次世代におけるWebのあり方を模索・検討する開発者やデザイナーを対象に、「次世代ユーザーエクスペリエンス」と「次世代サービスイノベーション」を紹介するもので、世界的規模で行われている同社のイベントのひとつとなる。
開催にあたり、マイクロソフト コーポレーション プラットフォーム戦略担当 ゼネラルマネジャーのチャールズ フィッツジェラルド氏がによるキーノート、「The Next Web Now」が行われた。
フィッツジェラルド氏は講演のはじめに、「Web2.0とも呼ばれている次世代のWebとはどんなものなのか。ソフトウェアにサービスがプラスされることでどんな発展が起こるのかを紹介していきたい」とその狙いを説明。
「ソフトとサービスの二者択一ではなく、両方の良い部分を融合していくことによって、Webに新しい可能性が生まれる。企業によってはそれにとどまらずWebとピア・ツー・ピアを組み合わせたり、ローカルサービスの融合などを指向するケースもある」(フィッツジェラルド氏)
その代表的な例としてフィッツジェラルド氏は、NHKが開発を進めている新サービスを紹介した。
NHK 総合企画室の和田郁夫局長は、「NHKは、日本で最大の映像資産を持っている。しかし、現在は放送法の壁があり、今回紹介するサービスを有料で提供することができない。けれども同法律は現在改正が進められており、2008年中にはNHKアーカイブス有料配信事業を開始できる」と、有料放送開始を視野に入れたデモンストレーションを紹介した。
和田氏が紹介したのは、Windows Vista環境で利用する有料のコンテンツサービス。デスクトップ上のガジェットからサイトにアクセスし、ユーザー登録を行った上でコンテンツを利用するスタイルとなっている。ユーザー登録の際に好きな番組やキーワードを入力しておくことで、「マイセレクション」としてユーザー好みのコンテンツが表示される。それぞれのコンテンツには登録されているメタデータに基づいて、タスクが割り当てられている。
今回のデモでは現在放送中の「ダーウィンが来た」を使い、放送内容だけでなく、番組主題歌を歌う平原綾香にちなんだ関連コンテンツも表示されるところを紹介。表示された映像はハイビジョン映像で現在のテレビ放送と同等のクォリティを持つ映像を見ることができるなど、Vista環境ではデジタルコンテンツの活用が格段に行いやすくなっているところをアピールした。
和田氏が「最大のセールスポイント」と紹介したのは、「見逃し番組リクエスト」。その名の通り、見逃した番組をネット上で視聴できるサービスだ。現在の計画では、前日までに放送されたほぼすべての番組の視聴を可能としていく。
こうしたコンテンツに加え、「われわれがこの事業で目指すのは、コンテンツを届けるだけでなく、視聴者とのインタラクティブな回路を構築すること」と和田氏は強調した。ユーザーが視聴した番組を星の個数で評価したり、感想を書く仕組みを設けることでユーザーの声を吸い上げていくことを狙う。
和田局長のデモンストレーションが終わるとフィッツジェラルド氏は、「このデモンストレーションを見て、果たしてパソコンなのか、テレビなのかと疑問に思われる方もいるだろう。われわれが提供しようとしているのは、それらすべてを融合する、ソフト+サービスによって実現できることを追及したもの。現段階は入り口に立ったに過ぎない」とコメント。その上で、カスタマーエクスペリエンスの方向性として、(1)よりリッチなブラウザ、(2)スマートクライアント、(3)テレビ・コネクト、(4)携帯デバイス、(5)顔のないユーザーエクスペリエンスの5つをあげた。
ブラウザについては、米国で先週リリースされたInternet Explorer(IE)7を紹介。米国では4日間で200万のダウンロードがあり、日本でも間もなくリリースされると説明。IE7ではAjaxスタイルの開発を採用している。
「よりリッチな経験をブラウザ内で行うための技術としてAjaxスタイルの開発がある。われわれはすでに7、8年前から同じようなスタイルの技術を開発していたが、その時点では普及しなかった。Ajaxという言葉が出てきてから、急に普及が進んだ。マイクロソフトでも、もっとよいタイトルをつけることができれば、もっと早く普及を実現したのではないかとも考えている。すでに大手ユーザーで、この技術をうまく利用している企業も出てきている。Myspace.Comではサーバー側とうまく融合させている」(フィッツジェラルド氏)
スマートクライアントについては、「本日のNHKのデモンストレーションはまさにこの事例にあたる。Vistaは、ASP.NET AJAX、IE7、RSSという三つの技術によって、よりリッチなユーザー体験を実現するものとなる」と紹介した。
具体的には、デスクトップに統合される「サイドバーガジェット」、グラフィックテクノロジーの「Windows Presentation Foundation(WPF)」、「Windows Media Center」という三つの機能を、これまでのパソコンの利用環境とは異なるユーザー体験を実現するものとして紹介した。
そのほかのVistaの機能については、マイクロソフト Windows本部 磯貝直之マネージャがデモンストレーションを行い、「Vistaの根底にあるのは、ITエクスペリエンスをとことん快適にすること。その一つとして、検索機能の充実に力を入れている。検索結果もアイコンを大きくしていくことで、ファイルの中身がそのまま表示されるので、わざわざファイルを開かずに、必要な情報を探し出すことができる」といったデモを行った。
またにフィッツジェラルド氏は、Vistaによって実現するリッチコンテンツの制作について、「デザイナーのデザインをもとにデベロッパーが開発する場合、両者の関係がうまくいかない場合もあるが、それを取り持つのが新たに投入した開発ツールExpressionシリーズ3製品だ。Expressionシリーズは、XAMLがキーポイントとなっている」と説明した。さらに携帯電話用のコンテンツ開発についても触れ、「マイクロソフトはこの分野にかなり投資し、成果も出てきている。Windowsがインストールされた100以上の端末を15以上のベンダーが作っている。MSの開発ツールは、既存の資産を活用できるところが大きなメリットと話した。
マイクロソフトが提供するオンラインサービス、「Live」については、「企業内にあるほとんどの情報が統合化されていない。Liveを通して携帯電話のデータやERP、CRMといった製品の中に入っている情報を統合していく」(フィッツジェラルド氏)として、エンターテインメント以外の活用方法もあることをアピールした。
同社オンラインサービス事業部 前田尚己ビジネスマネージャーは、自分用にカスタマイズされたWindows Liveのデモンストレーションを行った。
「通常の検索サービスでは、イチロー鈴木と入力すれば色々なイチロー鈴木さんの情報が表示されるが、Windows Liveのマクロ機能を利用することで、スポーツに関係あるイチロー鈴木の情報だけを表示するといったことが可能となる。さらに、そこで表示された情報から、シアトルに関連する情報を表示するといったことが可能になる。ユーザーの皆さん自身に作り込んでいってもらうことで、さらに有効なサービスとして利用してもらうことが可能となる」(前田氏)
このデモンストレーションを受け、フィッツジェラルド氏は、「こうしたオンライン上のサービスをホスティングソリューションとして提供し、成功する企業も増えてきている。マイクロソフトとしてはホスティングソリューションを実現するための支援についても積極的に行っていく」と説明。そして、セカンドファクトリーの東賢 執行役員 シニアエクスペリエンスアーキテクトを紹介し、同社が開発するSNSを披露した。
今回披露されたSNSは、3Dの球体上に自分を中央にして友人が取り巻くインタフェースとなっている。通常のSNSにあるような文字や静止画だけの日記のほか、動画を記録することもできる。東氏は、「これまでのブラウザに限定されることのない、リッチな体験を広げる可能性を持っているのではないか」と、扱えるメディアが拡大したことのメリットを強調した。
最後にフィッツジェラルド氏は、「新世代のテクノロジーが、ソフト+サービスの可能性をさらに拡大していく。日本市場は、デベロッパー、デザイナー、リセラーなどパートナーのパワーがあってこそ拡大する。今回、Vistaのガジェットについては10社の企業がコミットメントしてくれた。さらに多くの対応企業が出るように、ガジェットやWPFに関するコンテストを実施していく。新しいマーケットを創り出すために、パートナーの皆さんとさらに協力していきたい」と新しいテクノロジーを活用するパートナーとの関係をさらに強化していく意思を表明した。
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