SFC主催の「ORF 2006」が開幕した。今年は会場を六本木から丸の内へ移動し、最先端の研究成果に触れることのできる貴重な機会が到来した。この休みに、ぜひとも訪れることをお勧めしたい。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)での日頃の研究成果や未来技術を紹介する、SFC研究所主催「SFC OPEN RESERCH FORUM 2006」(ORF 2006)が11月22日〜23日の2日間、東京・丸の内地区で開催されている。
ORF 2006のテーマは、「現代リアル学」。研究が生み出す、いわば「バーチャル」な世界と人々が日々生活する「リアル」な世界を繋ぐことを目指して、現代の生活空間の可能性を広げる研究が数多く発表されている。会場を昨年までの東京・六本木ヒルズから、大手企業や官公庁の集まる丸の内地区(丸ビル/三菱ビル/東京ビルTOKIAなど)に移し、産学官コラボレーションの最先端の取り組みを見ることができる。
東京ビルTOKIA会場の目玉展示の一つが、「私を記録する家」というコンセプトを提案する未来型モデルハウス「iLog House」である(関連記事)。
安村・國領研究室の思い出作成アプリケーション「Asnaro」は、家族間のコミュニケーションや写真などの情報を蓄積して、ガラススクリーンに表示できる。例えば母親が子供に留守番メモを残したい時には伝言ボードを立ち上げ、赤外線反射センサーの付いたスティックでガラススクリーンをなぞるだけでメッセージを残すことができる。子供は、目線の高さにあるメッセージアイコンにスティックで触れれば、母親からのメッセージを読める。家族の写真もデータとして取り込めば、ガラススクリーンのアイコンから呼び出して壁面に表示でき、団らんで楽しい時間を共有する新しい仕組みとなる
徳田・高汐研究室の「u-Texture」は、内部に赤外線や加速度センサー、無線通信機能を搭載したボードを自由自在に組み立てることができる「インテリジェント家具」というべきもの。例えば、CDケースをボード上に置けばプレーヤーとなって音楽を再生し、ボードを並べて文字や画像データを送受信したりと、その使い方は幅広い。ボードにコルク材を貼り付けて木目調の雰囲気を出したりと、デザイン性にも優れているのが特徴的だ。
丸ビル/三菱ビル会場では、アプリケーションやネットワーク、空間デザインといった分野の多彩な研究成果を見ることができる。
村井・楠本・中村・湧川研究室とWIDEプロジェクトによる「アドホックネットワークと応用アプリケーションの研究成果」では、セグウェイを使ったアドホック通信のデモが行われている。デモでは、セグウェイにIPv6対応カメラとモバイルPC、モバイル通信ユニットを搭載し、アドホックモードでの映像や音声の伝送状態や外部PCからの制御の様子を実演する。この自律型無線ネットワークの応用例では、大規模災害時にインフラネットワークが崩壊しても、アドホック通信で被災状況を収集するといった利用が想定されるという。
環境情報学部の徳田英幸教授による「スマートふろしき」は、電導性の布が織り込まれた布型のRFIDタグリーダーで、気軽に持ち運んだり、折りたたんだりすることができる。また、モノを包んでも認識ができるという。
総合政策学部の重松淳教授による「多言語対応携帯電話による発信型外国語教育」では、英語だけでなくフランス語やドイツ語、スペイン語といった多言語表示対応ブラウザを用いて、携帯電話で手軽に語学学習ができる。一般的な携帯電話に搭載されたブラウザでは文字化けしてしまう言語を正確に表示でき、カリキュラムを選択して自発的に学習を進められるため、英語以外の外国語も効果的に習得していけるのが特徴だ。将来的な音声認識による発音チェックといった機能の向上も期待できる。
小檜山研究室、NTTサイバーソリューション研究所らが取り組む「場所の未来プロジェクト」は、生活空間をIT化し、人間本来の持つ感覚や感性を高めるという壮大なテーマで研究を行っている。
その成果の一つに「CompassMark」がある。これは路上に張られたCompassMarkの二次元コードを携帯電話で読み取り、インターネットにアクセスすると、その場所に関わる情報を呼び出せる仕組みだ。
サイト内の入力欄にCompassMarkの数字を入力すると、数字の書かれた方向にどのような施設があるのかが分かる簡易ナビゲーションサービスや50年前の同じ場所の写真で当時の様子を知ることができるといった歴史ガイドなどが可能になる。
このほかには、ある場所を訪れた人々がその場所の歴史や景観、個人の感想などを共有することができる「街のデジタルアーカイブ」や、食事の内容を携帯電話のカメラで撮影してメール経由でブログ化し、「健康的なメニューであるかどうか」、「健康に良い食事とは何か」といったアドバイスを共有するe-CAREプロジェクトの「健康コミュニティ」のように、マッシュアップ型の情報共有を活用したサービスモデルの研究成果も数多く見ることができる。
ORFの展示では恒例となった電気自動車「Eliica」は、いよいよ実用化の目処が立ち、来年度の販売開始を計画しているとのこと。想定される価格は、3000万円〜4000万円程度になると見込まれている。
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