「言われて作っているんじゃ仕方ない」――経営トップに信頼されるCIOとは?Gartner Symposium/ITxpo 2006

経営トップの信頼をいかに得るか。ガートナーが主催する「Symposium/ITxpo 2006」のキーノートインタビューで、日本郵政公社の理事 常務執行役員の吉本和彦氏が自身の体験を話した。

» 2006年11月30日 08時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 経営トップの信頼をいかに得るか。CIOに求められる能力の1つだ。ガートナー ジャパンが主催する「Symposium/ITxpo 2006」が11月29日、開幕。キーノートインタビューに登場した日本郵政公社理事常務執行役員の吉本和彦氏は、「有事のときのリスク対応」がキーだったと振り返った。

吉本和彦氏 日本郵政公社 理事 常務執行役員の吉本和彦氏

 吉本氏は富士銀行時代の1995年、阪神・淡路大震災を経験。災害対策はパーフェクトだったと述べ、「準備したかいがあったな」と感じたという。しかし、ATMコーナーを再開しようと、現場の支店長などと連絡を取ると、仕事に行くか、生き埋めになっている人を救出すべきか、問われたという。

 「こんな状況でATMを動かす意味はない。それよりも救助の拠点にした方が良いのではないか」

 吉本氏は結果、リカバリシステムを作動させないという判断を経営層に伝えた。これが信頼を勝ち取る結果になったという。「わたしの場合、これが(信頼を得る)キーファクターだった」。

 また、基本を積み重ねるということも挙げる。

  1. 顧客満足を最大化するテクノロジーとプロセスを実現しているか
  2. 経営に対してITの目標を可視化できているか
  3. 経営決断に沿ったITを実現しているか
  4. 経営優先度の高いプロジェクトにフォーカスしているか
  5. 効率向上のための標準化とITインフラの共通化を実現しているか

 この5つを「愚直にやるしかない」とも語る。

 そのほか、IT部門から業務改革を提案する姿勢も強調した。「言われて作っているんじゃ仕方ない」。経営に自ら参画するCIOを目指すべきだとして、「CIOからCSO(Chief Strategy Officer)へ」の変化を提案する。

システムからの意識改革

 吉本氏が理事 常務執行役員を務める日本郵政公社は現在、民営化に向けた取り組みを進めているが、26万人という職員を公社から民間企業としての意識に変えるのは至難の業。「通常は、意識改革を行い、システムを変えていくというステップだが、システムから変えてしまおう」と考えているという。

 「財務であれば、SAPを入れて、これが民間の財務会計だよ」と、標準に合わせて行くことで、おのずと意識変革を求める方法だ。「システムを使って意識改革をする方が手っ取り早い」。

 最後に「ベンダーへの期待するものは」と問われた吉本氏は、「付き合いたいのはITベンダーじゃない。優れたシステムソリューションを持っているところ」と答えた。「自社製品にこだわらず高品質なソリューションを持っているのが前提だ。いちから作るというのではスピードに追い着けない」。

 またベンダーに対して「業者と発注という関係ではダメ。イコールパートナーという関係でないと」と話し、リスクを共有するパートナーとして付き合えることを望んだ。

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