変わるビジネスコミュニケーションビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け(第2回)(3/3 ページ)

» 2007年01月05日 08時00分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]
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ビジネスでIMをどのように管理するか?

 実際に企業でIMを利用する際に一番に敏感になるが、システム部門だ。かつては従業員の過度なフリーIMの利用によって、生産性の低下や情報漏洩、またウイルス感染によるシステムへの影響などが問題視された時期があった。「Yahoo!メッセンジャー」や「MSNメッセンジャー」、チャット機能を搭載した「Skype」などは利用状況の把握が困難なばかりか、通信記録も残らない。「Winny」や「WinMX」などと同様に、今では多くの企業で利用が禁止されている。

 しかし管理の行き届いていない企業では、「各々のPCにどんなフリーソフトがダウンロードされているかまでは実質的に追いきれない」として、きちんとした対応ができていないケースもあるようだ。そこから企業の情報が簡単に外部へ流出する、もしくは流出する可能性が高いということを認識しながらも、「まさか発生するはずがない」と黙認している。あまりにも情報管理意識の低いケースだ。

 フリーIMは、簡単で気軽に会社の管理外の場所でも利用できるため、つい「上司がこんなことを言っていた」「こんな案件が進んでいるらしいよ」「こんな資料があったよ」など、情報漏洩という意識が薄いままさまざまな企業情報が流出しているケースが多く存在する。事態によっては処罰の対象となる場合もあり、対応策を講じていない企業は、ぜひ早急な対応を検討しなければならない。

安心して導入できるBiz IMとは?

 システム部門が安心して導入でき、従業員も便利に利用できるのがビジネスIMであり、私たちはこれを、「Biz IM」と呼んでいる。企業が安全に利用できるBiz IMの要件としては、以下が挙げられる。

Biz IM要件 Biz IMに求められる条件

利用者の管理がしっかりできること。

 ユーザー管理は、管理責任者が一括して行う。ユーザーが次々と仲の良い社員をメンバーに勝手に追加させないこと。

通信経路が暗号化され、盗聴や改ざんの心配がないこと。

 P2P通信では情報が盗み取られてしまう危険性大。通信経路の暗号化は最低限の条件。

すべての通信内容がログとして記録に残ること。

 IMを社員に利用させるのであれば、メールと同様に証拠能力のあるデータとして扱われるという意識の浸透が必要。JSOX法が施行されれば、その必要性はさらに高まる。

ログ情報の検索/抽出が可能なこと。

 業種によっては、監督官庁からの指示でデータの提出を求められるケースがある。緊急のケースにも対応できるよう、データの保存と抽出機能は必須。

認証システムが整っていること。

 IDやパスワードでログインを制御することは必須条件。定期的なパスワード変更をユーザー促すアラーム機能があるとなお良い。携帯電話から利用する場合は、セキュアな認証の仕組みが必要。

 これらが備わっていれば、企業はIMを安全なコミュニケーションツールとして導入することができるだろう。世界的には約3000万人がBiz IM製品を利用しているという報告もあり、日本でもコンプライアンスに忠実な企業や、革新的・先進的な企業を中心に確実にビジネスIMが広がりつつある。

渡邉君人

IMを中心としたアプリケーションソフトウェア開発を行うQriptの代表取締役CEO、大阪大学大学院工学研究科博士課程に在籍中。中学時代からコンピュータと向き合うプログラマー、現在は社長業に注力。2000年の設立以来、コンシューマーからエンタープライズ向けまでの幅広いIM製品の開発と販売を行っている。


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