「パッケージ活用とSOAで競争力を高めろ」──SAPジャパンのエンスリン社長2007年新春インタビュー(1/2 ページ)

企業の経営層にビジネス上の価値を明確にする新サービスを米国で軌道に乗せたのが、エンスリンSAPジャパン社長。日本市場でも同サービスを始動させた同氏に話を聞いた。

» 2007年01月05日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 製品の価値だけではなく、ビジネス上の価値を明確にすることが求められると考えたSAPは、2002年から米国市場で「バリューエンジニアリング本部」を設立し、ERP導入によるコスト削減や売り上げ増などの効果をプロジェクトの企画段階で算出するサービスを展開している。同事業を軌道に乗せた手腕を買われ、2005年半ばに日本法人の社長に指名されたのがロバート・エンスリン氏だ。2006年1月から日本市場でも同サービスを始動させたエンスリン社長に話を聞いた。

決算があるので年末年始も長期の休暇は取らなかったというエンスリン氏。2頭の愛犬を連れて静かな東京の散歩を楽しんだという

ITmedia 2006年は、1年を通して日本の事業を率いた初めての年ですね。いかがでしたか?

エンスリン 昨年は、「バリューエンジニアリング本部」による新しいサービスを始動し、SAPからどんな価値を引き出すことができるかを顧客に明確に示すことに努めました。また、より良いパートナーとの関係を築いたり、SMB(中堅および中小企業)への取り組みを強化したり、「エンタープライズサービス指向アーキテクチャー」(エンタープライズSOA)を将来のアーキテクチャーとして確立することにも力を注ぎました。

 こうした年初の目標は概ね達成できました。それは1月から9月までのソフトウェアライセンス売り上げが前年比で19%増(為替変動分除く)となったことが裏付けています。また、顧客満足度もかつてない高い水準を達成できました。

顧客が真剣に取り組み始めたエンタープライズSOA

ITmedia エンタープライズSOAがうまく立ち上がったということですが、顧客はどのように取り組んでいるのでしょうか。

エンスリン われわれが2003年にエンタープライズSOA(当時はEnterprise Service Architectureの名称)を発表したとき、多くの顧客はPowerPointで描かれた単なるコンセプトに過ぎないと受け止めていましたが、「mySAP ERP 2005」のリリースによって実証されました。mySAP ERP 2005では、実際に約300のビジネスの言葉で理解できるエンタープライズサービスが提供されています。京セラミタをはじめとする、およそ10の顧客が国内でもエンタープライズSOAに取り組んでいます。

 新しいコンセプトを市場に導入する場合、パートナーの支持も得なければなりませんが、昨年10月には東洋ビジネスエンジニアリングがエンタープライズSOAに特化したコンピテンスセンターを設立しています。また、日本ヒューレット・パッカードとは、エンタープライズSOAの導入を推進するため、その導入に必要なサーバやソフトウェアツール、機能をまとめたシステムパッケージである「SAP Discovery System for enterprise SOA powered by HP」も共同発表しました。

 SAPジャパンには「エンタープライズSOAオフィス」があり、14人の専任スタッフが顧客に対応してきましたが、しっかりと根付いたビジネスになったと確信しています。今年はソリューションやプリセールスの機能を持った30人から40人の組織に強化・拡充したいと考えています。

ITmedia わたしも、昨年後半から日本の企業がSOAに本格的に取り組み始めたという印象を持っています。

エンスリン エンタープライズSOAは、日本の企業にとって非常に適しているアプローチだと思います。大半の企業は、カスタムメードの古いシステムを抱えているからです。内部統制など、直面する課題を考えると、彼らはERPを導入したり、エンタープライズSOAに取り組まざるを得ません。この道をだどらないという企業の将来は、さらにいばらの道になるでしょう。

 mySAP ERP 2005はすべての機能が盛り込まれており、高い価値をもたらしますが、顧客によっては既存システムがあり、過剰だという場合もあるでしょう。そういう顧客は、特定の分野から選択的にSOAを始めることもできます。

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