「パッケージ活用とSOAで競争力を高めろ」──SAPジャパンのエンスリン社長2007年新春インタビュー(2/2 ページ)

» 2007年01月05日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 企業の経営層はIT投資がビジネス全体に高い価値をもたらすことを期待しています。そして、アプリケーション導入の目的は、ビジネスを効率化し、生産性を高め、競争力を高めることです。

 なぜ、財務、調達、生産、販売といった、どの業種でも、どの企業でも同じようなプロセスと機能のアプリケーションを独自に開発しなければならないのでしょうか? 多くの日本の企業が貴重な資源を無駄にしています。企業が企業として存続していくための基本的なプロセスを処理するアプリケーションはSAPにアウトソースし、日本の企業は限られたリソースを独自の価値を生み、競争力をもたらす領域に集中してほしいと思います。

 財務システムが優れているからといって、それは競合優位にはなりません。ならば、SAPにアウトソースしてほしいのです。

カスタムメイドでITが足かせに

ITmedia 日本市場においてもパッケージアプリケーションの採用が進むとみていますか。

エンスリン 調査会社の予測によると、日本のパッケージアプリケーション市場は1%から3%というわずかな成長しか見込まれていませんが、SAPの成長は明らかにこれを上回るものですし、われわれは市場全体がもっと成長するとみています。例えば、カスタムメイドのアプリケーションでは、法令への対応が難しいからです。

 つまり、いったんカスタムメイドでアプリケーションを構築した場合、変化への対応が後手に回るということです。企業が外部の環境に素早く対応しようとしたとき、ITが足かせになってしまいます。

 日本の顧客でも、グローバルな企業ほどパッケージを使っています。例えば、法規制や税制は各国でさまざま異なります。カスタムメイドでは対応は不可能でしょう。グローバルな、競争力ある企業を目指せば、パッケージを使うしか手はありません。

 また、日本市場においても、M&Aが活発化しています。統合された新しい事業体を運営していくには、パッケージを選ぶことが最良の選択肢となります。合併の狙いは、相乗効果によって、顧客を素早く獲得できたり、コストが削減できることです。新しい会社をいかに早く単一のシステムで稼働させられるかが、合併を判断するひとつのポイントともなっています。アプリケーションがずっとばらばらのままでは、顧客の獲得やコスト削減は難しいからです。

 すでに銀行は再編が行われ、今後は小売りの再編が進みそうです。この傾向は続くとみています。2007年はますます買収や合併が続くと思います。

 そうなれば、標準的なビジネスプロセスはSAPのようなパッケージアプリケーションのベンダーにアウトソースされ、カスタムメイドは、SOAに移行し、継続的に付加価値と競争力をもたらすものに進化していくとみています。

WBCで自信? 成長に向けて設備投資を本格化

ITmedia 2007年はどんな年になるでしょうか。

エンスリン 何よりも日本経済が好転しつつあり、企業は設備投資を再開しています。昨年はハイテク、金融、小売りが積極的に投資を行いました。2007年は製造業がこれらのセクターに続いて、設備投資を本格化させてくるでしょう。

 顧客らと話をしていて特に興味深いことは、彼らが中国をはじめとするアジア市場に興味を示し、どうビジネスをグローバル化させるかを真剣に検討していることです。日本企業、特に製造業は売り上げを拡大しようとしており、しかもその活路をグローバル市場に求めています。パッケージアプリケーションは、そうした成長を支えていく上で欠かせないものとなるでしょう。

 日本企業は、競争力を高めたいと熱心に取り組んでいます。しかも、経済の好転によって自信を取り戻しつつあります。ワールドベースボールクラシック(WBC)で日本チームが優勝しましたが、みんなが野球のように勝ちたいと思っています。イチローは大きな役割を果たしました。あれで日本全体が自信を取り戻したのではないでしょうか。

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