インタビュー
» 2007年03月05日 17時42分 公開

「デザインをしない」はすなわち「悪いデザイン」

「アプリケーションのデザインに時間やお金をかけられない。だからデザインはナシです」。これはすでに「悪いデザイン」のアプリケーションを作っているのと同じことだ。マイクロソフトの「Expression」は、良いデザインのアプリケーション作りを目指したツールである。

[柿沼雄一郎,ITmedia]

 3Dやアニメーションを利用したユーザーインタフェース(UI)を実現する、マイクロソフトの新しいプラットフォーム技術であるWindows Presentation Foundation(WPF)。Windows VistaのUIであるAeroでは、その代表的な表現手法を見ることができる。

 こうしたUIを持ったアプリケーション作成をサポートするのが、同社が新たにラインアップするプロフェッショナルデザイナー向けの「Expression」シリーズだ。2月16日にはその第一弾製品となるWebサイト作成ツール「Expression Web」が発売され、7月以降の発売に向けてリリースの準備が行われている。

 ここでは、米MicrosoftのExpression担当リードプロダクトマネージャ ミワ・M・ミューラー氏と、Expressionを使って実際にアプリケーション制作を行っている米METALIQのCEO ボー・アンブル氏、そしてマイクロソフト日本法人で同製品を担当する春日井良隆氏に今後の製品予定などを聞いた。

ITmedia Vistaに採用されたUIについてですが、マイクロソフトのどんな考え方が表現されているのでしょうか

ミューラー われわれは、ソフトウェアによるユーザー体験というものがいかに大事がということを考えています。ユーザー体験は機能だけでなく、見た目や扱いやすさといった部分に影響を受けます。「雰囲気」や「所作」という言葉に置き換えてもよいでしょう。優れたユーザー体験を与えているものとして、例えばスターバックスへ行くということは、単にコーヒーを飲むだけでなく、その店の雰囲気などを味わうことも目的に入っているのではないでしょうか。

 そうしたものをソフトウェアに取り入れるのは、従来の開発者ではなく、デザイナーの仕事の範疇になってきます。このようなデザイナーに対して有用なツールを提供することが、ユーザー体験の実現には大切なことだと考え、Expressionブランドというソフトウェアで展開することになりました。ちなみにユーザー体験は、AJAXという言葉を造ったことで知られるジェシー・ジェイムズ・ギャレット氏が2000年あたりから提唱し始めた言葉です。

ミューラー氏 米Microsoft Expression担当リードプロダクトマネージャ ミワ・M・ミューラー氏

 WPFを使ったUIは、ボタンにアニメーションやビデオを貼り付けることができるなど、強力な表現力を持つことができます。これが優れたユーザー体験の実現に貢献するのです。

 大英図書館では、スキャンした蔵書をWPFアプリケーションとして表示する閲覧サービスをしています。ページめくりやズーム、回転などあたかも自分の手で手繰っているような感覚が楽しめます。これもただ表示するだけではなく、UIを工夫することでより大きなユーザー体験ができるようにしているものの例といえます。

春日井氏 マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 デベロッパービジネス本部 デベロッパー製品部 シニアプロダクトマネージャ 春日井良隆氏

春日井 映画やテレビ、そしてゲーム制作といった世界では、多くのデザイナーがいて3Dのデータをたくさん作成しています。こうしたノウハウを持つ方々にExpressionを使っていただくことで、UIデザインというものの裾野が広がっていくのではないでしょうか。また、こうした分野でのプロモーション素材の制作などに活用していただけたらと思います。

ITmedia プラットフォームやアプリケーションが、デザインされたリッチなUIを持つことについては?

ミューラー 「デザインは必要なのか」という問いに対しては、アメリカのあるデザイナーの言葉を借りて「デザインは必然である」という答が適しているかと思います。デザインをしないということは、デザインがないということではなく、すでに悪いデザインであるということを表しています。これはアプリケーションにも当てはまります。デザインしないアプリケーションは、ユーザーにとって使いにくいものになるのです。

アンブル氏 米METALIQ CEO ボー・アンブル氏

ITmedia アンブルさんはMETALIQ社を創設し、DirectorやFlashといったツールを使ってアプリケーションやWebサイトの開発をしてきたそうですが、今回Expressionを使ってアプリケーションを作成されたそうですね。

アンブル われわれは、Expression Blendを利用して、WMVファイルや3Dグラフィックスなどを駆使したスノーボードに関するアプリケーションをわずが2週間で作成しました。コロラド州アスペンの山へ行ってスノーボードをやり、そのコースを記録するために作ったものです。

 GPS時計と心拍計を装備して、アスペンの山からスノーボードでさまざまなコースを通って降りてきました。その時にワイヤレスで受信・記録したデータをビジュアルに表示するアプリケーションです。GPSのドライバ部分以外は、すべてExpression Blendで作成しました。

アルペン アルペンの山を降りてくるスノーボードのコース。初心者用から上級者向けまで色を分けて表示されている

 天気予報をRSSフィードで受け取り、リアルタイム表示しています。Webカメラの画像もライブ中継しています。サーバサイドで処理されるスクリプトなどではなく、クライアント側で実行されるWPFのアプリケーションですから、パフォーマンスも優れています。

HeartRate 下のグラフでは高度や速度、心拍数などが表示されている

ITmedia Flashではなく、Expressionを選択したのはなぜでしょう?

アンブル 今回のプロジェクトでは、地形を表示する3Dの数値データを扱う点、そしてGPSデバイスとの連携を行う点からExpressionを利用しました。Expressionでデザインを行い、デバイスドライバの部分をVisual Studioでプログラミングし、またExpressionに戻ってきて作業をするといったことが簡単にできますから。それに、.NET Framework 3.0を利用することで、アプリケーションとしてのパフォーマンスも期待できるからです。

 Flashを利用していたためもありますが、Expressionの機能やユーザーインタフェースはごく自然に理解できました。ヘルプファイルもないβ1のころから使っていますが、それほど不自由は感じませんでした。Expressionで特に気に入っているのは、オブジェクトのプロパティをサーチできる機能で、これはとても使いやすさに優れています。また、数値入力をする際に、マウスによるドラッグ操作で数字が入れられるのも便利です。アニメーション作成のとき、最初のキーフレームを指定しなくて良いのも面白いですね。これだとアニメーションどうしのつながりがスムーズにできるようになります。

ITmedia 現在、Expressionは4つの製品がアナウンスされています。今後はどのように発展していくのでしょうか

春日井 それぞれの製品の連携をさらに高めていきたいですね。現状の「ファイルのインポート」といったレベルではなく、あるツールでの修正がすぐに別のツール上で反映されるような有機的な連携ができるようになると、さらに使いやすいものになると思います。



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