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» 2007年04月11日 07時00分 公開

立ちはだかるのは「経営の壁」:「見える化」願望が隠してしまうものとは? (1/2)

経営や業務の「見える化」は、多くの経営者や現場マネジャーが早く実現したいと考える改革の1つだ。しかし実現を急ぐあまり、単純に既存システムを連携させたり、パッケージをベンダー任せにして導入しても失敗する。「見える化」の実現にはシステム構築の手法だけでなく、「経営の壁」ともいうべきものが立ちはだかる。

[大西高弘,アイティセレクト編集部]

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夢のままで終わってしまう「見える化」

 ITコーディネータ(以下ITC)はその会社のCIOに近い働きをする。ITを活用して「見える化」を実現するとき、ITCは経営層が乗り越えなければならない壁を指し示し、解決への道筋を一緒になってたどっていく。参照記事

 「見える化」に取り組むきっかけは、業務が属人化していることに経営者が気づいたときだ。経営の問題を突き詰めようとした段階で、結局、社員それぞれが情報を持っていて、改善の糸口をつかむのに非常に時間がかかることが判明し、これではまずいということになるわけだ。

 例えば神奈川県川崎市の仙崎鐵工所はITCの力を借りて生産管理システムを構築した。参照記事

 プロジェクトチームの中心メンバーだったITCは、同社が単なる組み立て作業をする会社ではなく、各製造工程で協力会社と図面だけでなく、部品そのものもやりとりしながらモノづくりをしていることに着目した。そして「製品の進捗状況を把握したい」という経営者の要望を実現するのにふさわしいシステムを構築していった。

 「結局、現場に行って聞かないと状況が把握できない」(仙崎鐵工所、沼りえ社長)というのでは、うまく管理ができないというわけだ。では何を管理したかったのかというと、その1つとして作業スタッフの最適配置が上げられる。複数の注文を同時に効率よく、スタッフを過剰に増やすことなくこなしていくには、現場の作業状況を把握して、ある工程に携わるスタッフをタイミングよく別の製品の工程に組み込んでいく必要がある。

 もし、単純に生産管理システムを導入し、それで「見える化」が実現できると考えていたら、どうなっていたか。

 ある工程に携わる人員管理について、人数だけの把握しかしないパッケージだと、誰が担当しているまでかは分からない。それで事足りるケースもあるが、例えば仙崎鐵工所のような会社が求めるのは、「何人なのか」だけでなく「誰と誰なのか」ということだ。

 仙崎鐵工所では、システムを構築する前準備として、徹底した経営分析を行っている。その過程で明確になってきたものの1つが「作業スタッフの最適配置」なのである。「見える化」を実現するには、経営目標から落とし込んだ、具体的に実現したい項目を明確にしておく必要がある。システムがすべて経営を見えるようにしてくれるはずだ、という願望だけで突き進むと、結局「見える化」の夢は夢のままで終わってしまう。

真の「見える化」はシステムだけでは無理

 金属製品メーカーの北光金属もITCの協力を得て生産管理システムを構築した企業。町工場からの脱皮がメインテーマだったが、やはり現場の作業ノウハウが属人化されていた。システムも手作りの部分が多く、すべての工程を社員の誰もが見えるシステムとは言えなかった。

 当初は既存システムにパッケージを新しく組み合わせてシステムを構築するプランを作成して、公的機関からの補助を得ようとしたが失敗する。「システムありきの発想でしかなく、そのまま突き進んでいたら大変なことになっていた」と代表取締役社長 斎藤宏通氏は話す。

 ITCがプロジェクトに参加して初めて、自社の強みと弱点を明確に把握できるようになり、システムだけでなく社員教育にも力を入れるようになった。また、原材料購入費を抑えるためのサブシステムまで完成させるなどして、本来の「見える化」に向かって業務改善を続けている。

 いきなり高い頂を見上げるだけでは、そこに到達することは不可能のように感じられるが、目の前の目標を1つずつクリアすることを続けていけば、確実にステップアップはしていくものなのだ。そのことを経営者や社員に実感させるのも、ITCの果たす役割と言えるかもしれない。

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