こうしたファイルベースの問題を解決するために、マルチメディアコンテンツをデータベースに格納する例が増えている。とりわけ、インターネット上で料金を徴収し、サービスを提供しているサイトでは、その傾向が強まっている。中でも、基幹システムに多く利用されているOracle Databaseが利用されることが多い。なぜなら、Oracle Databaseには、マルチメディアコンテンツのようなラージバイナリを扱う機能が用意されているからだ。
例えば、インターネット上でオンラインプリンティングサービスを提供しているA社では、サービスのプラットフォームとしてOracle Databaseを採用している。このサービスは、顧客がインターネット経由でアップロードしたデジカメの画像データを画像処理技術を使って補正し、顧客の近隣の写真店やコンビニで受け取るというもの。このサービスのうち、顧客がアップロードする画像データの格納先としてOracle Databaseが利用されている。
また、国内有数のゲームメーカーB社では、オンラインゲームのデータベースとしてOracle Databaseを採用している。MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game =多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)の空間情報、ユーザーが所有するアイテム情報、ユーザー認証と課金情報など、ゲームに関する一切合切のデータがOracle Databaseに保存されているという。
さらに、Oracle Databaseを利用して作成された映画もある。映画のシーンをデータベースに格納し、あらゆる編集作業をデータベース上で行い、最終的にデータベースからフィルムに落とすという作業が行われている。
こうしたマルチメディアコンテンツにOracle Databaseが採用されているのは、ファイルベースにはない堅牢なデータ保護機能、コンテンツの管理性・検索性、データバックアップの容易性などの理由が挙げられる。そして、もう一つの大きな決め手になっているのが、スモールスタートが可能なOracle GRIDのスケーラビリティである。マルチメディアコンテンツを格納するようなサービスは、サービス開始直後のデータ容量は少ないが、最大データ容量を予測して最初から大規模なシステムを導入することは難しい。その点、Oracle GRIDならば、1Uサーバ1台という小規模なシステムを構築し、ニーズに応じてスケールアウトで拡張できる。初期投資コストを削減する意味でも有用なのだ。
マルチメディアコンテンツの格納先としてデータベースを利用するのはメリットが多いのだが、「YouTube」に代表されるような無料動画サイト、無料オンラインアルバムサイトなどは、まだまだファイルベースで管理されていることが多い。なぜなら、ファイルベースの代わりにデータベースを利用するには、何らかのアプリケーションを開発しなければならないからだ。
このアプリケーション開発という敷居の高さを下げる機能が、Oracle Databaseの次期バージョン「Oracle Database 11g」に搭載される予定だという。この新機能は、Oracle Databaseをそのままファイルサーバのように扱えるもので、特別なアプリケーションを開発する必要がなくなる。これにより、ファイルベースで管理されているマルチメディアコンテンツはデータベースに移行しやすくなる。今後は、無料サービスも含め、コンテンツはデータベースに格納することが一般的になっていくだろう。
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