Microsoftの「ビッグバン」は起きるか?

Longhornの最終版リリースは、ユーザー企業におけるOffice 2007やVistaなどへのアップグレードの起爆剤――ビッグバンを引き起こす可能性が高い。

» 2007年05月01日 17時33分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftは4月25日、フル機能を搭載した「Windows Server "Longhorn"」のβ3版をリリースした。同社にとって、今回のリリースは重要なマイルストーンとなるものであり、Windows Vistaのリリースよりも重要な意味を持っているかもしれない。

 Microsoftのエンタープライズ製品戦略の核となるLonghornは、Vistaをはじめとする同社製品の導入を促す呼び水となりそうだ。しかしVistaの最初のサービスパックのリリースをめぐる不透明な状況は、将来のアップグレードに対して暗い影を投げかけている。

 β3のリリースに際し、Microsoftは2007年下半期にLonghornを製造工程向けにリリースするという約束を再確認した。しかし同社は、Vista Service Pack 1(SP1)のリリースに関する約束については再確認しなかった。Microsoftのサーバ/ツール部門のボブ・マグリア上級副社長は昨年11月に、米eWEEKの取材に対して、Windows Server LonghornとVista SP1を「同時に」出荷する予定だと答えていた

 「ソースコードのベースは同じであり、これまでのパターンに従えば、両製品をほぼ同時期に出荷する必要がある」とマグリア氏は語った。

 しかしMicrosoftはもはや、同時(あるいはほぼ同時期の)リリースという姿勢を示していない。「Longhornのコードネームで呼ばれるWindows Serverと同時にリリースするかどうかを含め、SP1の提供について話すのは時期尚早だ」とMicrosoftの広報担当者はeWEEKの取材で答えている。

 この発言はマグリア氏の以前の発言と矛盾する。さらに追及しても、同広報担当者は「SP1については時期は確定していない」と言うにとどまった。

 アナリストらによると、LonghornとVista SP1を同時にリリースすることがMicrosoftおよび同社の企業顧客にとって重要だという。Longhornの最終版のリリースは、ユーザー企業の間でのOffice 2007やVistaなどのソフトウェアへの本格的なアップグレードの起爆剤となる可能性が高いからだ。

 Yankee Groupのアナリスト、ローラ・ディディオ氏は、Longhornの出荷で予想されるこの状況を「ビッグバン」と表現している。Gartnerなどのアナリストたちも、この「ビッグバン」理論と同様の考えを抱いている。

 Gartnerでは、Vista導入の最初の波は今年10〜12月期に訪れる見込みだが、ほとんどの企業は2008年4〜6月期まで様子を見るものと予想している。このタイミングは、Windowsクライアントのアップグレードの引き金になる可能性があるLonghornのリリース時期とも重なる。

 ディディオ氏によると、多くの企業のIT部門では、複数のインフラアップグレードを同時期に済ませられるようにするために、Longhornが登場するまで待つ考えだという。

 しかしMicrosoftの著名顧客企業(Intelを含む)の一部は、最初のサービスパックがリリースされるまでVistaの本格導入を見合わせる方針を示唆している。つまりLonghornのリリースは、Vistaの導入に影響する唯一のイベントではないということだ。

 アップグレードのビッグバンは、LonghornよりもVista SP1のリリースにかかっている。Microsoftの最近のOS開発ではWindowsサーバとWindowsクライアントが並んでマイルストーンに到達しており、Vista SP1のリリースが遅れた場合は、このパターンから逸脱する形になる。

 Microsoftは2004年、Windows Server 2003のコードをベースとしてVistaの開発をリセットした。Microsoftはそれ以来、単一のコードベースを用いてクライアントソフトとサーバソフトを並行して開発するようになった。

 このため、Windowsデスクトップとサーバ製品はほぼ同時期にリリースされている。例えば、Windows XPとWindows Serverの各64ビット版が製造工程向けにリリースされたのは、Windows Server 2003 SP1のリリースと同時だった。

 Vistaの開発も、Longhornの開発とほぼ足並みがそろっている。2005年12月、MicrosoftはVistaとLonghornの各β版を同時にリリースした。また2006年5月には、同社はOffice 2007、Vista、Longhornの新しい各β版を同時にリリースした。

 ユーザーはLonghornとVista SP1の同時リリースを期待しているようだ。また、Longhorn β3が好評だったこともビッグバンを促す要因となりそうだが、そのためにはVista SP1のリリース準備が整っていることが条件である。

 独ミュンヘンに本社を置くSiemensでActive Directoryを担当するシニアアーキテクトのヨーゲン・オッター氏は、「β3にとても興奮している。Active Directoryの新機能やTerminal Serverの改良が気に入った」と話している。

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