Novellは近くMicrosoftと交わした特許契約の詳細を公開する予定だ。Microsoft幹部も、この契約は「相互理解を向上させ、オープンソースにプラスになる」と主張している。
米Novellは米証券取引委員会(SEC)に提出する年次報告書で、物議を醸しているMicrosoftとの特許および相互運用性に関する合意についてもっと詳しく説明する予定だ。ストックオプションをめぐる調査のため、この報告書の提出は遅れている。
「月末までにSECに提出する。その添付書類としてMicrosoftとの契約を公開するが、一部詳細は編集する」とNovellの広報担当ブルース・ロウリー氏は5月23日、Open Source Business Conferenceのパネルディスカッション「Is the Novell-Microsoft Deal Good for Open Source?(NovellとMicrosoftの提携はオープンソースのためになるか?)」で語った。
ロウリー氏のコメントは、パネリストのアリソン・ランダル氏の発言の後で聴衆から出てきた質問に答えたもの。ランダル氏はオープンソース開発者でO'Reilly Mediaのエバンジェリスト。同氏は両社の完全な契約書を見たことがなく、近いうちに閲覧できることを望んでいると語った。
ほかのパネリストの発言は、両社の契約の重大性と影響についてのさまざまな見解を反映していた。この契約は、MicrosoftとNovellが互いの顧客を特許侵害で訴えないことを保証するものだ。Microsoftは5月初めに、フリー・オープンソースソフトが同社特許235件を侵害していると述べた(5月15日の記事参照)。
LWN.netのエグゼクティブエディターで、活発なカーネル開発者でもあるパネリストのジョナサン・コルベット氏は、この特許契約を最も声高に批判した。
「訴訟を起こさないというこの約束は良くない。米国の特許産業がコントロールできなくなっていることは皆が知っている。ちょっとしたソフトを書くのにも、多数の特許を侵害することになる。しかも誰かに言われるまで侵害していることが分からない」(同氏)
Microsoftの方が多くの訴訟を他社から起こされてきたが、同社がFUD(恐怖、不安、疑念)を流布していること、特許侵害に関するオープンソースへの攻撃を続けていることは容認できないと思うと同氏は語った。
「オープンソースコミュニティーは独自のソフトを書いており、ほかからコードやアイデアを取ってくることはない。だから、われわれの書いたコードに知的財産が入っていると言って特許使用料を要求する企業があったら、われわれ皆の防御力を弱めてしまう」(同氏)
問題の契約の下では、Novellは自社ソフトを1シート販売するごとにMicrosoftに料金を支払うが、実際の支払額は明らかではないとコルベット氏は指摘する。「だがわれわれはこれを乗り越える。われわれの方が強い」と同氏は語り、喝采を受けた。
しかしランダル氏は、この契約は関係ないと主張した。「これは互いの顧客を訴えないという合意を盛り込んでおり、標準的な相互運用性の契約に見える。Microsoftがこの契約でコミュニティーに及ぼす力が強くなったわけではない。同社がこの契約の前に特許による何らかの力を持っていたとしたら、契約後もまだ持っていることになる。何も変わっていない」
また、もしもMicrosoftが顧客を訴えることで「特許訴訟のアルマゲドンを始める」と決めても、SunやIBMなどほかの企業がやめさせるだろうとランダル氏は述べた。
関係者に攻撃免除を追加保証することは、GPLの下では完全に合法であり、この契約が追加保証と似たものであるのなら、MicrosoftはOpen Innovation Network(OIN)と広範な特許契約に取り組むべきだと同氏は語った。
開発者のコルベット氏は、その可能性を熱心に語り、「MicrosoftがOINと協力したら素晴らしい。米国の特許制度をMicrosoftに有利になるよう改良することにもなるだろう」と主張した。
ランダル氏はまた、「Microsoftは、多くの大企業によくある一種の統合失調症に苦しんでいる。このため、オープンソース顧客の提訴に関する社内の議論がどうなるかは予想できない」と確信しているとも語った。
「だがわたしは、Microsoft内部の交渉プロセスが正しい方向に向かっていると思う。同社は顧客を訴えないと言っている。Microsoftが自覚しているか分からないが、同社はLinuxベンダーになった」(同氏)
Microsoftのプラットフォーム技術戦略ディレクター、サム・ラムジ氏は、この契約は相互運用性、対話、成長にフォーカスしたものであり、オープンソースにとってプラスになると語った。
「この契約により開かれる対話は、相互理解を向上させる。それにパートナーが成長しなければMicrosoftも成長しない。これはバリューチェーンであり、われわれはそれを通して利益を得る。このエコシステムを拡大してオープンソースも包含すれば、その点でわれわれへの後押しとなる」(同氏)
オープンソースアプリケーションの50%がWindows上で動いているため、この契約の相互運用性に関する部分はオープンソースにとってもメリットがあると同氏は語った。
NovellのLinuxおよびオープンプラットフォームソリューション担当マーケティングディレクター、ジャスティン・ステインマン氏も、この契約はオープンソースソフトの広範な採用を促進し、オープンソースにとってプラスになると擁護した。
この契約の結果、Wal-Mart、Nationwide、HSBCなどの顧客から、SUSE Linuxサブスクリプションに約4万件の新規加入があったと同氏は言う。
「われわれはLinuxを新しい場所に持ち込んでいるが、当社の顧客はWindowsも使っている。彼らはWindowsを捨てて全部Linuxに乗り換えることはしない。だから、LinuxとWindowsの相互運用性を改善できれば、Linuxとオープンソースにとって良いことだし、さらなる採用促進につながる」(同氏)
Novellは、Linux内で知的財産の侵害があるとも、Microsoftがこの問題をめぐって同社の顧客のみならず同社も訴える可能性がまだあるとも思っていないとステインマン氏は語る。「われわれはLinuxを推進するためにこの契約を結んだ。われわれは事業を成長させており、それは今の環境、コミュニティー、オープンソースのためになる」
Microsoftはまだ、フリー・オープンソースソフトが侵害していると主張する235件の特許がどれかを明らかにしていない。コミュニティーの一部の人はそれを望んでいる。
「動的言語向けの仮想マシンの設計者として、わたしはそれを知りたくない。もしも公表されたら、法的な対策を取らなければならなくなるからだ」(ランダル氏)
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