MS、VistaとOffice 2007のリリースで大幅増収増益(2/3 ページ)

» 2007年06月22日 00時30分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

クライアント部門 Windowsのデスクトップバージョンを担当しているクライアント部門では、前年同期比67%アップとなる52億7000万ドルの売上高を記録し、Microsoftが予想していた54〜56%の成長率を大幅に上回る結果となった。また、この部門は過去最高となる42億4000万ドルの純利益を計上している。Microsoftは2007年度第1四半期から第2四半期にかけて、Windows XP搭載PCを購入したユーザーに対し、Windows Vistaへのアップグレードを無料または割引料金で提供するプログラムを展開しており、2007年度第3四半期のクライアント部門の売上高には、この2つの四半期から繰り越された約12億ドルの収益が含まれている。この繰り延べ収益を除けば、売上高は前年同期比で約30%の拡大となるが、それでも、Microsoftが繰り延べ収益を差し引いた成長率として予想していた16〜18%をはるかに上回っている。

 この驚くほど好調な業績の背景には、Windowsの高価格バージョン、特にVista Home Premiumの売れ行きが予想を上回ったことがある。Microsoftはかつて、2007年度のVistaの売上高のうち約60%を高価格バージョンが占めることになると予測していたが、実際、2007年度第3四半期には、その比率は71%となった。前年度の第3四半期には、Windows XPの高価格バージョンが売上高全体の53%を占めるにすぎなかったことを考え合わせると、Windowsの売上高が出荷本数を上回る勢いで拡大していることの説明が付く。Microsoftはこの現象を「ミックスシフト(mix-shift)」と呼んでいる。

 Vistaのリリース自体も幾つかの点で、クライアント部門の好調な業績に貢献している。まず、既存PCをXPからVistaにアップグレードするユーザーが出るなかで、企業および小売市場での売上高が前年同期比で63%拡大した(アップグレードに関連した繰り延べ収益を除く)。また2007年度第3四半期には、世界のPC販売台数が前年同期比で10〜12%程度の拡大にとどまったのに対し、OEM版のWindowsの出荷本数は20%拡大している。Microsoftによると、これは新OSのリリース時によく見られる現象で、リリースされた新OSをシステムビルダー各社(小規模OEM)が仕入れると同時に、大手OEM各社もコンシューマー向けバージョンのリリースに伴い、在庫の補充を行うことによるものという。また、Vistaで違法コピー対策が強化されている点も、Windowsの出荷本数とPCの販売台数とのギャップにつながっている。

 もう1つ留意すべきは、今回のクライアント部門の好調な業績には、人為的に増強された側面もあるということだ。なぜなら、MicrosoftはWindows XPの際には、まだリリースしていないコンポーネント(Internet Explorerのアップデートなど)の相当分として、XPの売上高を一部繰り越す措置を取っていたが、今後、Vistaの売上高についてはそうした措置を取らない方針だ。こうした会計方針の変更により、Microsoftはクライアント部門の売上高が2007年度には2億2000万ドル増加し、2008年度には6億6000万ドル増加すると見込んでいる。

 Vistaは、PCの売れ行きには最小限の影響しか及ぼしていないようだ。世界のPC販売台数は前年同期比で10〜12%程度の拡大にとどまっており、ここ最近の四半期と同ペースを保っている。Microsoftは2008年度についても、ハードウェアの出荷台数はほぼこれと同ペースの拡大が続くものと予想している。

 Microsoftは2008年度の事業部門ごとの業績見通しは発表していないが、クライアント部門に関しては、「Vistaのリリースが影響した2007年度と比べて、2008年度下半期には成長率は鈍化するだろう」と指摘している。

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