Oracleの連携アーキテクチャは300種類にも及ぶ製品をうまく結び付けることができるのだろうか?
Oracleは6月21日、金融市場のニーズに対応することを目的とした巨大な新事業部を発表したが、この動きはストーンヘンジの謎のように多くの疑問を呼び起こしている。中でも特に切実な疑問は、Oracleが顧客に余計な苦労を強いることなく市場に製品を提供できるのかということであるようだ。
同社は、I-flex、Siebel, Hyperion、TimesTen、Stellentなど、この1〜2年の間に買収した膨大な資産を元に金融サービス部門を設立する考えだ。機能だけに目を向けるのではなく、ビジネスプロセスを重視するよう顧客に促すのが同社の狙いだ。
こうして、ニューヨークを拠点とする新しい金融サービスグローバル事業部に配備される1万2000人余りの従業員には、300種類以上の製品を5つのカテゴリーの分類し、同社の言う「アダプティブビジネスプロセス」なるものを提供するという困難な任務が与えられる。
しかしOracleによると、顧客は連携を妨げる障害を回避するために、同社の「Application Integration Architecture」(AIA)を利用してアダプティブプロセスを構築するだろうとしている。
4月に発表されたAIAは基本的に、ユーザーが特定のビジネスプロセスに基づいてOracleの各種のアプリケーションスタックから選んだ「最良の」機能を結び付けることを可能にするためのフレームワークである。OracleのWebサイトによると、同社のFusion Middlewareを基盤とするAIAは、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を利用し、連携と再利用が可能なモジュラー型ビジネスサービスを構築するという。
AIAには2つの基本コンポーネントが含まれる。1つは「Process Integration Packs」で、これはOracleの各種アプリケーションをあらかじめ連携したものである。もう1つのコンポーネント「Industry Reference Models」は、異なるアプリケーション間でプロセスフローを構築するための業界ベストプラクティス集である。
ニューヨークにあるI-flexの最高マーケティング責任者を務めるセンシル・クマー氏は、「業界をリードするプレーヤーであるわれわれは、次世代のアプリケーションは、ビジネスにおけるプロセスを標準化し、われわれやパートナーが提供する技術レイヤの上にそれを実装できるようにするという方法で開発されるようになると考えている」と話す。
AIAの業界リファレンスモデルコンポーネントを金融サービス部門が作成するのに当たり、OracleではI-flexの銀行業務用プロセスフレームワークを活用する考えだ。このフレームワークは、企業がプロセスを設計するのに役立つリファレンスモデルとベストプラクティスを集めたものである。こういったリファレンスモデルをOracleの技術スタックと連携することにより(これはOracleがI-flexの資産を買収する前に実現された)、ユーザーはプロセスを文書化し、プロセスの変更を管理することができる。
「ベストプラクティスを導入し、後にそれを修正すると、その内容が文書化されるのだ。これには3つのメリットがある。まず、リポジトリを利用できるので、いつもゼロ地点から始めなくても済む。次に、ほかの業務にプロセスを自動的に複製することができることだ。そして、規制当局による調査の際には、プロセスを正確かつ詳細に示すことができる。つまり指揮統制センターを運営し、ビジネスで何が起きているかをリアルタイムで説明できるのだ」とクマー氏は話す。
メリーランド州ボルティモアにあるZapThinkのシニアアナリスト、ロナルド・シュメルツァー氏は、「機能を抽出するのに標準化されたアプローチを採用し、プロセス構成を定義する手段としてBPEL(Business Process Execution Language)を利用するというのは、ユーザーにとってメリットになるかもしれないが、AIAはまだ開発中の技術だ」と指摘する。
「これらは基本的に連携済みのパッケージだ。Oracleは『複数の製品にまたがる機能の組み合わせを定義し、それらを抽出する』と説明している」とシュメルツァー氏は話す。「実際のところ、このアプローチを連携手段として採用した企業があるかどうか知らない。Oracleが既存のアプリケーションに何らかの技術をかぶせ、これらのアプリケーションをうまく連携できるかどうかがカギになるだろう。」
さらにシュメルツァー氏によると、Oracleが対処しなければならない最大の課題は、同社自身の製品が連携されていないことだという。
「彼らが連携アーキテクチャ方式のアプローチをユーザーに売り込みたいのであれば、自社の顧客に対してそれができることを証明する必要がある。」(同氏)
IT調査会社Ovum Summitのドワイト・デービス副社長によると、Oracleは個別アプリケーションから重点をシフトし、広範な基盤をベースとするアプリケーション、ならびにプロセスをサポートするサービスを目指すことにより、SAPなどの大手エンタープライズアプリケーションベンダーと競争しようとしているという。SAPも金融サービス分野を専門とする部門を持っている。
「OracleにとってAIAは、ベンダー各社にとって新たに定義されたこの市場で競争するための基盤となるものだ。これは基本的に、同社のアプリケーションとインフラのポートフォリオを融合したものである。同社の動きは、アプリケーションからビジネスプロセスにフォーカスをシフトするという業界の方向性に沿ったものだ、というのがわたしの見方だ」とデービス氏は話す。
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