ジレンマ解消にキーパーソンありWebマスターが変える 企業サイトの「秘力」

Webサイトをつくったものの、アクセス数はいまいち。企業サイトに潜む、そんな悩みを取り除くカギは、Webマスターの存在のようだ――。

» 2007年07月02日 06時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

 インターネットの世界は、一般に広く知れ渡るようになった10年ちょっと前からは確実に進化している。そんな時代に、Webサイトを持たない会社は少数派といってもいいのではないだろうか。逆に言えば、ちょっとした規模の会社であればほとんどは、何かしらの情報を自社サイトで発信している。

企業サイトが直面するジレンマ

 企業(会社)がWebサイトを持つ目的は、さまざまあると考えられる。自社ブランドのイメージ戦略、人材採用(リクルーティング)、上場企業であれば株主への情報発信(IR活動)……。企業あるいは企業内でも部署によっていろいろな活用用途があるのは間違いないだろうが、それはひとえに、告知・宣伝に集約されるといっても過言ではない。従って、企業サイトは見てくれる人がいなければ――それも多くなければ――開設している意味はないことになる。

 だが、企業サイトは設けただけで見てもらえるかというと、そうとは言いがたい。ましてや見てもらいたい人――例えば顧客――に見てもらうには、それなりの施策を講じる必要が生じる。従って「とりあえずつくってある」という程度のサイトでは、意図した人に伝えたいメッセージを届けられず、サイトを開設している効果を発揮できないばかりか、それ自体が「負債」となりかねない。

 企業サイトが抱えている悩みは、その企業に「何らかの用」がない限り、見る人が訪れないという現実である。つまり、「見てもらえる」「人が集まる」企業サイトは一部でしかない。だからといって、「自社サイトを持たない」というのは、せっかくのチャンスを逃すことにもなる。企業サイトは、インターネット時代となって得ることができた、企業への新しい「出入り口」。せっかく得たその媒体を、活用しない手はないからだ。

 ここに、「企業が自社サイトを持つ」ことのジレンマがあるといわれている。

「秘力」を生み出すキーパーソン

 では、企業サイトを活用するにはどうしたらいいのか。そのカギを握るのはWebマスターではないか――そんな実情が見えてきた。実際、ある大手石油会社はWebマスターを新しく任命し、自社サイトを再構築したところ、それまで決して「訪問者」ではなかった人たちを多数引き寄せることに成功している。

 石油大手のX社のWebマスターであるR氏は数年前、自社サイトの運営に悩んでいた。「御社のCMはいいが、Webはいまいちだね」と言われたからだ。実際、訪問者数は多くなかったという。

 X社では、2004年までWebマスターは不在だった。R氏によると、部門ごとに、ニーズに応じて個別にサイトをつくっていた。そのため、自社サイト内で統一性に欠けるサイトが乱立していた。そこで同年7月、全社のサイトを統括する専任組織として、Webマスターを置いた。

 自社サイトの企画立案・運営を担う新組織は、R氏ら3名で活動を開始した。まず運営方針を明確化することに取り組み、何のためのサイトかということを改めて考えた。その結果、訪問者が抱える問題を解決するサイトにすることにした。次に、各部署にもサイト担当者を配置し、彼らを教育する体制を確立した。Webに関することに精通していない人たちに、その理解を促すようにしたのである。それから、社外のWeb研究会などに入り、自分たちだけでは分からないことについてはことごとく専門家に聞き歩いた。

 こうして9カ月をかけ、遂に自社サイトをリニューアルした。すぐにはアクセス増につながらず、しばらくは「がまん」する時期を経験することになったが、次第にページビュー(PV)は増え始めたという。

思い切って参加型企画にトライ

 その様子を見て、R氏は第2ステップとしてコンテンツ拡充に踏み切ることを決意した。その一つは、少年野球で活躍する姿を全国から募るというものである。投稿写真という、いわゆる「参加型企画」を初めて試みた。

 これが予想外にヒットした。野球少年の子どもを持つ親などから多くの写真が寄せられたのだ。その数もさることながら、クオリティも高いものが多かったという。こうして、X社はサイトの再構築の効果に驚かされることになった。

 このように、企業サイトであっても、つくり方次第では自然と人が訪れるようにすることは不可能なことではない。そして、そのカギを握る存在は、まさしくWebマスターなのである。

 X社はその後、予想外にも集まったという訪問者を顧客につなげるステップに取り組んでいる。企業サイトを、企業力――恐らく、とりわけマーケティング力――を底上げする武器に育てるために、どうやらWebマスターの存在は欠かせない。そして、そのWebマスターが秀でた能力を持っているのであれば、それに越したことはないのである(「月刊アイティセレクト」8月号の特集「「持ち腐れ」の企業サイトに喝! Webマスターが変えるマーケティングの底力」より。ウェブ用に再編集した)。

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