経営資源と換算して有効活用すべしWebマスターが変える 企業サイトの「秘力」

「分かりにくいもの」としたままで企業サイトを持つことは「宝の持ち腐れ」になりかねない。「分かりやすく」して、経営資源としてしまえ――。

» 2007年07月13日 06時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

「分かりやすい」サイトであること

 Webは、インターネット時代になって生まれたコミュニケーション手段の一つ。つまり、企業サイトの良しあしは、コミュニケーションスキルのレベルを表しているといっても過言ではない。「マスコミュニケーションをしっかり考えてきたという、歴史がある会社は、消費者とのコミュニケーションのあり方を分かっている。経験がものをいう」(Web設計会社のコンセント代表取締役社長、長谷川敦士氏)という、鋭い見方もある。

 例えば、最近はリクルーティングやIRが企業サイトの大きな役目となっている。大抵の企業はそれを理解し、自社サイトにその機能を備えている。だが、そうした企業のWebサイトがすべて「分かりやすく」書かれているかというと、そうではない。発信者(企業)側の「思い」だけを一生懸命見せているだけで、それを見る人がどういう状況にあるのかを考えてつくられていないために、伝わらないメッセージを載せているだけで終わっていることが多いというのだ。

 「それは、企業が『コミュニケーション』ということを真摯に考えていないということだろう。(見る側にとって)『分かりやすい』ということは、単純に平易な言葉やキャラクターを使うことではない。『分かりやすさ』の再定義が多分必要になっている」と、長谷川氏は分析する。

 では、「分かりやすさ」とは何か。例えば、こんなこと――プレゼンテーションの際、こまごまとしたスペックなどやたらと細かい数値を羅列し、スライドで見せ…プレゼンテーターはそれを読むだけ…という状況――がよく見られる。その場合、その内容は演説者側にとって「正しいこと」かもしれないが、聴衆者側にとっては分かりやすくないものであることは往々にしてある。「そんな資料をつくっているのを許している企業であれば、その企業のWebサイトはダメでしょう」(長谷川氏)。つまり、見せる側の理論に基づいたつくりではなく、見る側が理解しやすいものにする必要があるということである。

「攻めのWebサイト」を持つこと

 ただ、B2Bが主軸の企業にとって、コミュニケーション力が弱いのは致し方ないことかもしれない。そういう企業は消費者と直接、接してきた歴史が少ないために、その術に精通していないのも無理はないからだ。そこに、ある意味突然、消費者と直接接することのできるWebというツールが使えるようになった時代が訪れた。それ故、その扱い方を即座に習得できないのも当然のことといえなくもないのである。

 ただ、消費者とのコミュニケーションの経験が少ないからといって企業サイトの出来具合が稚拙だとされるままでは、せっかく手にすることのできたWebという手段も生かせないまま。「宝の持ち腐れ」に終わりかねない。

 そう考えると、「攻めのWebサイト」を持つことは、企業としてはぜひ実現したいことではないか。リクルーティングやIRでの活用だけでなく、マーケティング力の向上にさえつなげることができるからだ。そんな可能性を秘めた企業サイトは、経営資源として考えても決して無駄ではないはずだ。

 企業サイトをそうした有効活用に導く、そのカギを握るのは、間違いなく有能なWebマスターの存在だ。「今後、デジタル情報の一元発信と、顧客から入ってくる情報の一元管理は、経営資産的にもコーポレートガバナンス的にも絶対必要になる。従って、それを統括する人が必要になり、その人がWebマスターになる必要があるのかも」(本田技研工業の日本営業本部宣伝販促部ホームページ企画ブロックでブロックリーダー営業主幹を務める渡辺春樹氏)という声も聞かれているのである(「月刊アイティセレクト」8月号の特集「『持ち腐れ』の企業サイトに喝! Webマスターが変えるマーケティングの底力」より。Web用に再編集した)。

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