攻めのサイクルで汚名返上? 次期SQL“Katmai”の期待と不安(2/2 ページ)

» 2007年07月05日 11時45分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
前のページへ 1|2       

開発者向けの新ツール 新しいEntity Data Modelは、C#など.NET言語でのデータベースアプリケーションの作成とデバッグに役立つ。Entity Data Modelを使用すると、データベースのテーブルや列に格納されている情報(“顧客”など)の論理表現(エンティティ)を定義できる。KatmaiのEntity Data Modelは、LINQ(Language Integrated Query)と呼ばれる次期Visual Studio(コード名:Orcas)の新機能と連携する。これにより、現在はT-SQLクエリ言語ステートメントを引用符で囲んでロジックに組み込んでいるが、.NETプログラミング言語で直接データベースクエリロジックを記述できるようになる。Entity Data ModelとLINQを組み合わせて使用することで、データベース構造やT-SQLの詳しい知識がなくても、SQL Serverデータの取得や操作が可能だ。

BI機能の強化 特にデータウェアハウス、ビジネスデータの履歴を含む特殊なデータベースを念頭に、大規模データベースのサポートを強化する。規模が大きく複雑な組織のデータウェアハウスは数十テラバイトの規模になることもあるが、データ圧縮機能の強化により、このようなデータベースの物理ストレージ要件を緩和する。また、SQL Serverのテーブル分割メカニズムもアップデートし、複数のディスクシステムやデータベースサーバに分散(分割)されている大規模なデータベーステーブルに対するクエリのパフォーマンスを改善する。そのほかKatmaiには、WordやExcelからReporting Services(SQL Serverのレポート開発、管理、配布エンジン)のレポート作成と編集を可能にするエンドユーザー向けのレポート編集ツール「OfficeWriter」も搭載される予定だ。OfficeWriterはパートナーのSoftArtisansから買収したもので(買収はツールのみで、SoftArtisansを買収したわけではない)、現在提供されているSQL ServerのReport Builderツールのレポート編集機能を補完するため、Microsoftが掲げる「BI for the MASSES」に向けて一歩前進できるだろう。

開発サイクルを短縮

 Microsoftは、SQL Server 2005のスケジュールがたびたび延期され、リリースに5年もかかったことで非難を集めた。同社は、KatmaiでSQL Serverの開発およびリリースプロセスの合理化を目指しており、基本的に今後のSQL Serverの新版については24〜36カ月のサイクルでのリリースを実現したいとしている。このため、KatmaiはSQL Server 2005に比べて、目覚しい変更はないリリースとなりそうだ。

 ただしタイミングを考えると、Katmaiは前メジャーバージョンのリリースから36カ月以内のリリースとはならない可能性がある。BI会議での発表によると、MicrosoftではKatmaiのコミュニティーテクニカルプレビュー(CTP)版を2007年の第3四半期に、製品版を2008年にリリースする予定である。この予定であれば、KatmaiはSQL Server 2005から36カ月以内にリリースされることになるが、最初のプレビュー版から最終リリースまでは18カ月もない(対照的に、SQL Server 2005では、2003年にプレビューが出されてから24カ月以上を費やして最終リリースとなった)。

 2008年以内のリリースを実現するには、これまでのバージョンよりもスケジュールを短縮する必要があるのは明らかだ。Microsoftは、これまでのように少ない回数でβ版をリリースするのではなく、頻繁にCTPを実施することで、より短期間でのリリースサイクルを実現できるとしている。しかし、パートナーと顧客にとって明らかに懸念となるのは、リリースプロセスを変更しても、これまでの堅実なβ版リリースをベースとしたプロセスと同程度の品質を確保できるのかという点だ。比較的安定した製品版のリリースを支えてきたのは、この従来のリリースプロセスなのだ。

前のページへ 1|2       

Copyright(C) 2007, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. All right reserved. No part of this magazine may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means without prior written permission. ISSN 1077-4394. Redmond Communications Inc. is an independent publisher and is in no way affiliated with or endorsed by Microsoft Corporation. Directions on Microsoft reviews and analyzes industry news based on information obtained from sources generally available to the public and from industry contacts. While we consider these sources to be reliable, we cannot guarantee their accuracy. Readers assume full responsibility for any use made of the information contained herein. Throughout this magazine, trademark names are used. Rather than place a trademark symbol at every occurrence, we hereby state that we are using the names only in an editorial fashion with no intention of infringement of the trademark.

注目のテーマ