IPが主役の次世代ネットワークでは、固定・無線・マルチメディアの統合サービスが提供される。AT&Tが目指す次世代ネット戦略とは。
米AT&Tは、長らく世界規模のIPネットワーク構築と音声/データの統合サービスの実現に取り組んできた。NTTや英BTなど世界の通信事業者がIPベースの次世代ネットワーク(NGN)構築を進める中で、AT&TはどのようなIPネットワークサービスを目指すのか。AT&T研究所データ&IPサービス開発兼VPN戦略担当ディレクターのトム・シラクサ氏に聞いた。
ITmedia AT&Tが構築を進めるIPネットワークの特徴とはどのようなものでしょうか。
シラクサ AT&Tはアクセス、コアネットワーク、インフラの各レイヤでMPLS(Multi-Protocol Label Switching)、アプリケーションおよび管理、セキュリティのレイヤではIMS(IPマルチメディアサブシステム)を採用しています。これはネットワーク上でのアプリケーションのパフォーマンスを最大化するのが狙いで、コストと信頼性を両立させ、有線と無線のシームレスな統合を実現するアーキテクチャとなります。
AT&Tでは世界でSONET、VPNなどのサービスを提供しています。ここではVPLS(Virtual Private LAN Service)やIPv6などの技術もサポートし、またアクセスレイヤでは有線、無線のアクセス手段をMPLSでサポートします。これらのサービスは、CoS(Class of Service)による高速化やセキュリティも加えた統合サービスとして高度な信頼の下に提供されなければないけないと考えており、AT&Tはレイヤごとに信頼性を追求して、強固なネットワークを構築しています。
またMPLSのネットワークは冗長性にも優れ、災害復旧やデータセンターの統合といったユーザーニーズにも対応します。例えば2006年末に発生した台湾の地震では切断を含めて13本の海底ケーブルが損傷を受けましたが、自動的にルートを切り替えて、アジアとオセアニア各国間の通信をいち早く復旧させました。
ITmedia 現在のネットワークはどれくらいの規模なのでしょうか。また具体的にはどのようなサービスが提供されていますか。
シラクサ ネットワーク規模は常に拡張を続け、2007年だけでも約7億5000万ドルの投資を計画しています(関連記事)。ホスティングも行うデータセンターは世界に38拠点あり、MPLSは137カ国で提供されています。。イーサネットのアクセスポイントも世界に1600カ所以上あります。ネットワーク上では1日当たり9.6ぺタバイトのトラフィックがありますが、これは世界最大規模になるでしょう。
アクセスサービスの例では、ネットワークでBlackBerryのようなモバイル機器からのアクセスやSOHO環境での無線によるVPNアクセスをサポートすることができます。研究所では、1台のモバイル端末で携帯電話網とWi-Fi網を自動的に切り替えたり、ユーザーが固定と携帯電話、Wi-Fiを自由に指定して着信を受ける(または発信する)ことができる技術も開発しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.