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» 2007年08月06日 22時54分 公開

Imagine Cup 2007 Report:教育に対する神童たちの「文殊の知恵」

いよいよ始まったImagine Cup 2007 ソフトウェアデザイン部門の第1ラウンド。55チームが教育をテクノロジーで変えるための文殊の知恵を披露、激しく火花を散らした。

[西尾泰三,ITmedia]

 「死のグループではないかもしれない」――Microsoftが全世界の学生を対象に開催している技術コンテスト「Imagine Cup」。韓国で開催中の「Imagine Cup 2007」のソフトウェアデザイン部門で日本代表チームの属するグループを見て、直感的にそう感じた。

 8月6日から本格的に始まったImagine Cup 2007。その中でも最大の規模となっているソフトウェアデザイン部門の第1ラウンドは、55チームが6つのグループに分けられ、各グループ上位2チーム計12チームが第2ラウンドに進出できる。前日の抽選で日本代表はグループCとなった。記者の見方ではデンマークやタイなどが強敵ではあるが、グループDのようにブラジルやイタリアといった下馬評の高いチームが入っていないという意味ではそれなりにいいグループであったといえる。

グループ グループに含まれる国名
グループA オーストラリア、トルコ共和国、イギリス、北米、ジャマイカ、スペイン、インド、アルゼンチン、中国
グループB スロバキア、マルタ共和国、スリランカ、ロシア、香港、ドイツ、ポーランド、インドネシア、韓国
グループC エジプト、フィンランド、タイ、台湾、ウクライナ、日本、デンマーク、フランス、スロベニア
グループD ブラジル、パキスタン、イタリア、ベルギー、南アフリカ、サウジアラビア、アイルランド、ハンガリー、オランダ
グループE マレーシア、ノルウェー、メキシコ、ポルトガル、ボスニア・ヘルツェゴビナ、チェコ共和国、ブルガリア、セルビア、ルーマニア
グループF アルジェリア、ニュージーランド、シンガポール、オーストリア、エストニア、クロアチア、フィリピン、ギリシャ、アラブ首長国連邦、エクアドル
ソフトウェアデザイン部門の第1ラウンドのグループ

 記者が今回注目しているのは、日本は言うに及ばず、昨年のファイナリストに残った6チーム、そして経済成長が著しいBRICsやVISTAといった国々だ。第1ラウンドでは、選手が希望すれば報道陣などをシャットアウトして審査員にのみプレゼンテーションを行うことができる。この選択をする理由としては、極度の緊張をしないためなど幾つか考えられるが、実際にこの選択をしたチームも少なくない。例えば中国、フランスなどだ。そうしたチームのプレゼンテーションは観覧ができなかった。また、観覧できた場合でも撮影に一定の制限が掛かっており、写真が少ないことをあらかじめおわびしておきたい。

勝つための最短距離を知る昨年のファイナリスト国

 参加55カ国のうち、昨年のファイナリストに残ったブラジルやイタリア、ノルウェーといったチームには幾つかの共通点が見られた。それは、昨年良かった部分をベストプラクティスとして取り入れていることである。例えば昨年優勝したイタリアは、冒頭にかなり作り込んだイメージ映像を流していたが、これは昨年も同様であった。また、ビジネスモデルの試算を細かに語り、システムのプログラミングにはeXtreme Programming(XP)を用いたと話すノルウェーも昨年同様だ。

 ブラジルチームは昨年、視覚障害を持つ人に向けてのソリューションでファイナリストに残ったが、教育がテーマとなった本大会でも視覚障害を持つ人に向けたソリューションを提案した。これは、テキストなどから点字をリアルタイムに生成するソフトウェアとハードウェアから構成され、第3者から話を聞く場合に比べてノイズのない情報伝達を可能にするというもの。将来的にはインスタントメッセージや携帯電話などをリアルタイムに点字に変換する構想も述べた。

点字ソリューションを紹介したブラジルチーム。同チームに限らず、女性の参加も珍しくなくなってきた。ブラジルチームの彼女も後述する日本チームと同様、ユーザーインタフェースの部分を主に担当したという

高い完成度のイタリア

 現時点で高い完成度を感じさせたのがイタリアチーム。上述したように、作り込まれたムービーをプレゼンテーションの冒頭に配置し、審査員の心をつかんだ後に、これまた作り込まれた秀逸なインタフェースを持つアプリケーションを用いたソリューションを解説した。今回のイタリアチームは、筆跡学(Graphology)を取り入れたもの。Graphologyは筆跡による人間の性格分析を行う学問を指す。

 マザー・テレサやビル・ゲイツの筆跡を例に挙げ、筆跡から読み取れる性格分析に高い信頼性が認められると話す同チーム。それ故、これを人格形成の補助として役立てられないかと考えたようだ。彼らのシステムでは、ゲームや占いといったコンテンツを通して、ペンタブレットなどで入力した文字のマイニングを図り、それを本人だけでなく保護者などがWebポータル上で確認できるようにすることで筆跡から読み取れる人格形成の方向性や抱える悩みを認知することを可能にする。カウンセリングなどの判断材料としても有効活用できそうな同ソリューションは、対象を文字だけにとどめず、将来的には絵などにも拡張していく考えであるとし、心理学で言う描画法検査などへの広がりも感じさせた。何より素晴らしいのは、すぐにでもサービスとして提供可能なのではないかと思わせるほど完成されたソフトウェアを披露していた点だ。

短時間でさらに進化した日本

 そして日本チーム「Team Someday」。ここで同チームのデジタルノートソリューション「LinC」について説明しよう。発表当時はデジタルペンを用いて手書きの文字を取り込み、それを幾つかの属性に基づいて分別/共有するためのシステムであったが、その後方向性に少し変化があり、情報のリンクに重きを置いたソリューションとなった。

 それぞれのユーザーはカード(と便宜上呼ぶ)にカードの必要な情報(そのカードのラベル)を書き込み、自己の蓄積したカード、あるいは他人のカードと連結させることでノードを広げる(これを彼らはリンクやセットという言葉で表現する)。こうしてできたものを可視化することで、新たな発見を喚起させる、というのが基本のコンセプトとなる。

「さまざまな情報がカードという形で分類される」と審査員に説明する大和田純さん

 ここまでなら、昨今のWeb 2.0技術を見るに、タグやソーシャルブックマークなどの技術とさして変わらないが、オブジェクティブ(客観的・対象的)なアプローチであるこれらの技術と比べれば、タンジブル(手作業的)な思考方法を展開しつつ進められるサブジェクティブなアプローチを採用しているのが特徴といえる。また、手書きの文字など、インターネット上のデータのみを対象としているわけではない点も広がりを感じさせる。

カード同士の関係を可視化したネットワークビュー。実際は3次元で表示されるが、現時点ではカード同士の関係が厳密な意味で3次元空間内にプロットされているわけではないようだ

 日本をたつ前は、プレゼンテーションに若干の不安を抱えていたTeam Somedayだが、問題点は修正され、要点を押さえた簡潔なプレゼンテーションに終始していた。以前はプレゼンテーションの際に緊張している様子も見られた同チームの丸山加奈さん。審査員はそれぞれのカードの関係性を可視化するビューモードなど、ユーザーインタフェースの部分にも高い興味を示しており、この部分を担当していた丸山さんの顔にはプレゼンテーション中もしばしば笑顔が見られた。

戦い終わって。緊張から解放されたためか思わず笑顔がこぼれる

 知の共有を広いレンジで行おうとするTeam Somedayのソリューションは本大会においては珍しいものではない。例えばインドチームもほぼ同じようなソリューションで臨んでいる。違いを挙げれば、Team Somedayは1つのアプリケーションで完結するが、インドチームではアプリケーションのほかにWebポータルを設け、機能の分離を図っていた点だ。同様の機能分離はイタリアチームも行っているのが興味深い。

インドチームがプレゼンテーションで見せた関係性の可視化。Team Somedayのものと見比べてみてほしい
Webポータルではこれまでの情報に対する分析を提供する

 ソフトウェアデザイン部門は、明日もう一度審査員を変えてプレゼンテーションを行う予定で、その後第2ラウンドに進むチームが発表される。明日は今回紹介できなかった注目チームを紹介するとともに、その結果をお知らせする。

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