親密になったMicrosoftとCisco

MicrosoftとCiscoの合併の噂が一部でささやかれているが、両社のCEOによると、それは根拠のない噂だという。

» 2007年08月22日 06時00分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK

 「MicrosoftとCisco Systemsは、データセンターの将来に向けて緊密に協力しており、今後データセンターの高度化が進むのに伴い、新たな分野において競争とビジネスチャンスが生まれるだろう」――Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは8月20日、このように語った。

 ニューヨークのマンダリンオリエンタルホテルで開催された討論会で、バルマー氏とCiscoのジョン・チェンバースCEOは、両社が競争する分野と協業する分野の両方にわたって両社が協力し、両社の技術の相互運用性を高める必要性が高まっていると語った。討論会の司会を務めたのはチャーリー・ローズ氏(訳注:PBS放送のトークショー司会者)。

 ローズ氏がMicrosoftとCiscoの合併の可能性について尋ねると、バルマー氏は、そういった動きはあり得ないときっぱり否定し、「両社とも相手のために働きたいとは思っていない」と皮肉めかして付け加えた。

 ここにきて両社間の親密度と相互運用性が高まっている背景には何があるかとの質問に対し、チェンバース氏は「企業のCEOの意識の変化が起きているからだ」と答えた。CEOたちはもはやITを経費とは見なさず、真のビジネスニーズを解決するのに役立つツールと考えるようになったという。

 「両社の協力で重要なポイントは、アーキテクチャ型アプローチによる情報共有である。両社が顧客企業の共通の問題を解決できることが、この動きを促進している。顧客は相互運用性の改善を妨げるような競争は望んでいない」と同氏は語った。

 「Ciscoは単なるネットワークインフラ企業から脱皮し――わたしはインフラ企業であることを誇りに思っている――ネットワーク、ソフトウェア、ハードウェアのすべてを連携する方法を変革する企業へと変身した。この変化を促している要因として、技術が容易に使えるようになり、顧客の個人的・職業的生活を支える存在になってきたことが挙げられる」とチェンバース氏は語った。

 「ビデオ、データ、音声はすべてインターネットを通じて配信されるようになり、これらの負荷ネットワークは、インターネットを軸とした新たなアプリケーションの波を創出するだろう。われわれは、これらをコンシューマーの家の中で連携させるとともに――現時点では悪夢だが――ビジネスユーザーのニーズに対応させる手段を模索しなければならない」(チェンバース氏)

 同氏によると、IT業界の企業は市場の変化を正しくとらえなければ取り残されるという。「市場に変化が起きているときにリスクを負わなければ、従業員、顧客、株主を失望させることになる。われわれはリスクを取るのがいかに難しいことであるかを知っており、その困難を過小評価してはいないが、それが必要であることは両社とも認識している。そして、わたしはバルマー氏を信頼している」(チェンバース氏)

 バルマー氏は、「両社の競争は選択肢の拡大と低価格化につながるため、顧客はこれを歓迎してきた」ことを強調する一方で、「顧客は自らの選択によって不利益を被りたくないという明確な意思表示をしており、異なる技術がすべて連携することを望んでいる」と語った。

 「もはや二者択一という状況ではない。今日、インターネット上で最も激しい攻撃にさらされているのがWindowsとCiscoのルータだ。ユーザーはあらゆるものが連携し、きちんと機能することを望んでいる。われわれはユーザーが望むレベルの洗練度と相互運用性を実現しなければ、彼らを満足させることはできないことを認識している」とバルマー氏は述べた。

 Ciscoは素晴らしい競争相手であり、「両社が競争する分野とそうでない分野の両方で両社の技術を連携させるのがわたしの方針だ」とバルマー氏は語り、伝統的に相手の支配領域であった分野で競争する権利を両社とも保有していると付け加えた。「われわれは両社のソリューションを連携する方法をさらに改善する必要がある」と同氏。

 「わたしはCiscoのあらゆる取り組みに敬意を抱いているが、彼らが当社と同じことをやっている分野では、われわれ自身に対してはさらに大きな敬意を抱いている」とバルマー氏は軽口をたたき、スタッフの技術的傲慢さは競争とは無関係だと指摘した。

 チェンバース氏によると、Ciscoは顧客の声に耳を傾けており、今後は両社にとってチャンスを生かせる分野がさらに多くなるという。

 「敵か味方かという時代は終わった。業界は急速に変化しており、そんなことを言っている暇はない」とチェンバース氏は語る。

 「顧客は、ベンダーがどこに向かって進んでおり、各社がどのように協力してそれぞれの製品の相互運用性を保証するのかを示したロードマップを求めている。板挟みの状態になるのは困るからだ」(同氏)

 バルマー氏によると、ソフトウェアの進化において大きな転換が起きており、ソフトウェア+サービスという方向に向かっているという。これは、将来、Microsoftのソリューションの果たす役割がこれまでよりも不明瞭になることを意味する。

 音声、ビデオ、データの融合をめぐって市場で大きな変化が起きているが、「われわれはこの方向に進み始めたばかりだが、この変化を迅速に推進しなければならない。またわれわれは、両社が競争する分野と協業する分野の両方で、この変化に関してどのような取り組みを進めるかについて話し合う必要があると考えている」(バルマー氏)

 チェンバース氏は、両社のコラボレーション分野について言及し、両社の協業が以前よりもはるかに迅速に行われるようになり、このことを広範な顧客に伝える必要があると語った。「現在はわたしがこれまで経験したことがない急速な変化の時期であり、この新しい技術の波は非常にエキサイティングだ。われわれはこれらの急速な変化を受け入れ、利用する必要がある。これらの変化の最大の原動力は顧客である」と同氏は話す。

 司会者のローズ氏が両社の協業分野を具体的に挙げるよう求めると、バルマー氏は最大の協業分野がセキュリティだと答えた。セキュリティは何よりも、この市場の変化を遅らせる恐れがある分野だからだという。

 「10件の技術が含まれる7つの分野で協力を進めるよう当社のチームには指示している。企業ネットワークのセキュリティ、データセンターの管理、新しい標準の策定などに関連した分野だ」とバルマー氏は述べた。

 Microsoftが顧客により多くの価値を提供するためにできることは何であれ、「当社が収益を拡大するともに、顧客により良い価値を提供する機会を与えてくれるものであり、それをきちんとやれるかどうかが当社の成功のカギである」(バルマー氏)

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