SAPは、「SAPPHIRE '07 Atlanta」で、Microsoft、Adobe Systems、Cisco Systems、およびHPらとの協業拡大を明らかにし、エコシステムによる革新をさらに加速する。
SAPは米国時間の4月23日、ジョージア州アトランタで開幕した年次ユーザーカンファレンス「SAPPHIRE '07 Atlanta」で、Microsoft、Adobe Systems、Cisco Systems、およびHPらとの協業を通じた成果を幾つか明らかにし、エコシステムによる革新の加速をユーザーらに印象付けた。
昨年のSAPPHIRE '06 Orlandoでベールを脱いだOffice連携ツールの「Duet」は、一時は合併まで真剣に検討されたMicrosoftとの共同開発によるもの。レポートやワークフローがOutlookの受信ボックスにプッシュされ、インフォメーションワーカーは使い慣れたOfficeからSAP ERPの機能がシームレスに利用できる。
SAPによれば、リリースから1年足らずでDuetの顧客は250社40万ユーザーに上るという。全米2400万人の契約者を誇るケーブルTV大手のComcastも新しい人事システムとしてSAP ERPを採用すると発表しているが、トレーニングコストの削減などを狙ってDuetも活用するという。
今回のSAPPHIREでSAPは、さらにHPの協力を得て、Duetを簡単に評価できるアプライアンス製品「Duet by SAP and Microsoft, Powered by HP」を発表した。
Duet by SAP and Microsoft, Powered by HPは、DuetのソフトウェアをHP ProLiantサーバにプリインストールしたもの。顧客らは概念実証が迅速に行え、実際のデータを使ってビジネス上のメリットを短期間で評価できるという。
最近の組織再編によって新設されたビジネスユーザーデベロップメント部門のダグ・メリット執行副社長は、「Duetのアプライアンス製品は、パートナーらと共同で取り組む革新の一例。その狙いはシンプリシティ(簡素化)だ」と話す。
ビジネスユーザーデベロップメント部門は、Duetをはじめ、サーチ、モバイル、ボイスといった新しい技術からSAPアプリケーションのプロセスやデータにアクセスするツールや、GRC(Governance, Risk and Compliance)、企業業績管理といったソリューションも扱う。
「構造化されていないタスクや情報とSAPアプリケーションの構造化されたそれらをブレンドし、インフォメーションワーカーが活用できるようにすれば、企業は真の差別化を図ることができる」とメリット氏は話す。
ちなみにHPは、昨年秋に発表された「SAP Discovery System for enterprise SOA powered by HP」でもSAPと協業している。SAP Discovery Systemは、HP ProLiantサーバにNetWeaver、mySAP ERP、およびサンプルとなるビジネスシナリオが設定済みの状態でプリインストールされ、エンタープライズSOAのビジネス価値を体験できる評価システムだ。
Duet by SAP and Microsoft, Powered by HPは、先ずは北米市場で6月から受注開始する。
SAPPHIRE '07 Atlantaでは、「SAP Interactive Form」で協業するAdobeとの新たな成果として、「SAP Enterprise Learning」も発表された。
SAP Enterprise Learningは、WebカンファレンシングソリューションであるAdobe Acrobat Connect Professionalをベースとし、広く普及しているFlashの技術を活用するため、ファイアウォールの外に対しても効率的、かつ低コストでトレーニングを実施できるのが大きな特徴だという。
SAP Enterprise Learningは、今年第3四半期、SAP ERPの次期拡張パッケージで提供される予定だ。
SAPはまた、Ciscoとの協業もさらに拡大し、GRC(Governance, Risk and Compliance)ソリューションを実現するコンポジットアプリケーションを共同で開発するという。
エンタープライズSOAの世界で再利用できる部品として、SAPとCiscoが開発を進めているのは、データの機密性と保護、ネットワークセキュリティ、およびサービスレベル保証のためのコンポジットアプリケーションだ。
例えば、データの機密性と保護のためのコンポジットアプリケーションを利用すれば、企業はネットワークを流れるトラフィックを解析し、電子メールに書かれた情報の種類を特定できる。それにより、情報漏えいにつながる危険性の高い電子メールをリアルタイムでブロックすることも可能になるという。
GRCコンポジットアプリケーションは、年内にリリースされる予定だ。
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