「革新」と「安定化」── タブーの両面作戦を説くSAP創業者SAPPHIRE '07 Atlanta Report

SAPPHIRE '07 Atlantaは、創業者であるプラットナー氏のキーノートで本格開幕した。本来であれば無謀な「両面作戦」だが、SAPはSOAベースのSAP ERP 2005で「革新」と「安定化」を狙う。

» 2007年04月24日 13時20分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 米国時間の4月23日夕方、SAPの年次ユーザーカンファレンス「SAPPHIRE '07 Atlanta」は、創業者であるハッソー・プラットナー会長兼チーフ・ソフトウェア・アドバイザーのキーノートが行われ、本格的な開幕を迎えた。英国に独立戦争を挑んだ13州に名を連ね、米国南東部を代表するジョージア州の州都、アトランタで行われたSAPPHIRE '07には、1万5000人を超える顧客やパートナーらが集まった。アトランタは、ご存じのCoca ColaやDIY(ホームセンター)最大手のThe Home Depotなど、同社の重要な顧客が本社を置く有数の商都でもある。

2003年までCEOを務めたSAP創業者のプラットナー氏

 創業者のオープニングキーノートということもあり、5000人は楽に収容できる特設会場も顧客らでぎっしりと埋まった。プラットナー氏は、「イノベーション、スピード、そして成功のための2本立て戦略」と題し、思い入れたっぷりに、同社のソフトウェア戦略を熱弁を振るった。

 SAPは昨年9月、ラスベガスの「TechEd」カンファレンスで、向こう5年間、現行の「SAP ERP 2005」スイートに対するアップグレードは、すべて実装するかどうかをユーザーが選択できる機能強化パッケージという形で提供されることを明らかにしている。

 「プロセッサのメニーコア化と並行してクロック周波数も4GHzを突破、メモリも200Gバイトと大容量化している。インターネット革命は継続しているし、顧客はイノベーションを望む一方、しかし、同時に安定性や信頼性も求めている」とプラットナー氏。

 日本のユーザーの約半数が3世代も前のSAP R/3 4.6cを依然として使い続けている現状からすれば、プラットナー氏の言葉も説得力を増す。カスタマイズとアップグレードの大きな負荷を考え、最新バージョンへの移行をためらう顧客らにとっては、朗報といえるだろう。

熱弁を振ったBI Accelerator

 プラットナー氏は、「業界には、イン・メモリ・データベースやオンデマンド型のコンピューティング、モデルベースのコンピューティング、SOA、ユーザーに応じた使いやすいインタフェースなど、新しいアイデアが溢れている」とし、それらのイノベーションを選択的に実装していけるのがソフトウェアのあるべき姿だと強調した。

 彼のキーノートは持ち時間を30分近く超過する熱の入りようだったが、特に時間を割いて熱弁したのが、SAP NetWeaver BI Acceleratorで実現しているイン・メモリ・データベースだった。

 BI Acceleratorは、既存のキューブやクエリに何ら修正を加えることなく、メモリに展開し、処理することでデータ分析ツールであるSAP BW(Business data Warehouse)のパフォーマンスを20倍から200倍も引き上げるハードウェアアクセラレーターだ。既存のBWサーバに横付けするだけで劇的に改善できるわけで、ユーザーからすれば、これほどありがたい話はない。

 「3600万レコードの分析もわずか1秒だ」(プラットナー氏)

「どれも現実にあるもの」

 プラットナー氏は、SAP ERP 2005で初めて実現された「Business Process Platform」については、ヘニング・カガーマンCEOのキーノートに詳しい話を譲ったが、オープンな疎結合となったSOAベースのSAP ERP 2005であれば、役割に応じた使いやすいユーザーインタフェースをスキンのように被せたり、パッケージアプリケーションでありながら、簡単にモジュール単位で機能強化を図れたり、ビジネスの変化に応じて自由にプロセスを組み替えられる柔軟さを強調するのを忘れなかった。

 エンタープライズSOAであれば、顧客やビジネスパートナーのシステムとの連携はもちろんだが、オンデマンド型のサービスに大半の部分を依存する形に移行しても、問題なく機能する。もはやアップグレードやパフォーマンスの最適化もユーザー企業には無縁となる。外部のさまざまな新しいアイデアをサービスとしてマッシュアップすることもできる。

 「BI Accelerator、エンタープライズSOA、ユーザーに応じた使いやすいインタフェースなど、どれも現実にあるものだ。展示フロアで確かめてほしい」(プラットナー氏)

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