「ブログで一発当ててやろう」はメッセージにならないシャドーワークと問題解決手法(2/2 ページ)

» 2007年08月31日 07時00分 公開
[大西高弘,アイティセレクト編集部]
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「理念」が問題解決をうながす

 シャドーワークを推進するエネルギーは、まずプロデューサー型のワークスタイルを身に付けた人が駆使する「ネットワーク力」ともいうべきものだ。参照記事

 そしてそのネットワークの力を最大限に引き出すのは、野口氏が抱いていたような「想い」である。その想いをメッセージとしてどれだけ多くの人に伝えることができるかが、勝負の分かれ目だ。「GR BLOG」はもちろん野口氏個人のメッセージを直接投げかけるものではない。しかし、「GR BLOG」はプロモーションという企業側の目的だけが前面に出たものではない。「売らんかな」という「想い」だけではここまで注目はされることはない。企業側の目的も達成しながら、訪れる人に「親しみやすい」「もっと見たい」と思わせる、一味違う雰囲気の底辺に流れる「何か」が大切なのである。

 問題解決というと、クリティカルシンキングなどに代表されるように、冷徹に現状を分析することから始めるというイメージが強い。

 もちろんそうしたアプローチも必要だろうが、それだけでは、例えば「GR BLOG」のようなものは生まれなかっただろう。「プロモーションで最大の結果を出そう」「業績に寄与するにはどうしたらいいのか」というのも「想い」といえなくもない。しかし「スナップ写真は自己表現である」というメッセージはそれらとは一線を画する。何が違うのか。それは理念的かそうでないかということではないだろうか。

 業務のムダをなくし最大限のパフォーマンスを出す、業績を必ず前年度を上回る、といったものは目標であって、理念とは呼べない。理念は必ずメッセージ性を含んでいる。業績を上げるという目標は部外者にとっては関係のないことだ。

 「日常を切り取るスナップ写真は、それ自体が表現であることをもう一度見直してもらいたい」というメッセージは、写真を愛する人、自己表現の場を探している人などにも強烈に響くものになりうる。

 実は、野口氏からこのメッセージについての話が出たのは、取材も最終段階に入ってきたころだった。ブログサイトを作りだすまでの過程、そこでリーダーとして注意していたことなど、テクニカルな面を一通り話してもらった後、このメッセージが耳に飛び込んできた。おそらく「大切なことを聞き忘れていませんか」と野口氏は言いたかったのだろうと思う。

 シャドーワークを進めるプロデューサー型ワーカーも、いつもこうした理念を次から次へと発信することは難しいかもしれない。しかし野口氏のように一つの理念を抱いて、メッセージとして発信していけば、自ずと次にチャレンジすべきことは見えてくるのだろう。「ブログをつくってうまくプロモーションしてみよう」という目的意識だけで動く人との差はそこにある。組織が掲げる「企業理念」だけでなく、仕事で社会と向き合う上で、一個人として自分なりの理念を持てるかどうか。それこそが、これからのビジネスリーダーに問われている課題なのかもしれない。

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