失敗しないITプロジェクトの秘訣は明確化にありマネジャーの教科書(1/2 ページ)

失敗したり完全には成功しなかったりしたプロジェクトを評価すると、「用意、撃て、狙え」式であることが多い。ITプロジェクトの成否は、明確化できたかどうかにあるが、ここでは、その準備のための基本的能力についてヒントを提示しよう。

» 2007年10月12日 12時29分 公開
[Ken-Myers-&-Robert-Lamb,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 その「基幹」ソフトウェア開発プロジェクトは、相当な時間と予算を費やした揚げ句に頓挫した。前任者は去り、新任の管理者が立て直しに当たった。反省会の場で明らかになったのは、プロジェクトの日程、仕様、ベンダーの能力といった肝心な点についての事前の検討が不十分だったことだ。

 残念なことではあるが、ITプロジェクトの失敗は珍しいことではない。そして、プロジェクトが最良の成果を出せなかったり完全な失敗に終わったりする主因を求めると、プロジェクトを十分に明確化しないまま着手した点に行き着くことが多い。具体的には、ITプロジェクトの成否は、利用者が抱いている具体的な要求や問題点、鍵となる技術的機能的要件、厳密な日程、また、関連予算、リソース、組織問題といったことをあらかじめどれだけ明確化できたかにかかっている。そして、この明確化は、ITプロジェクトの管理者が持つ準備のための技術と情報収集力という基本的能力に挙げて依存している。以下では、これからそれを身につけようとする人のためのヒントを紹介する。

下調べをせよ――プロジェクトを成功させたければ、その規模にかかわらず、はじめに「相当の注意」を払うこと、つまり事前の検討・情報収集・計画を丹念に行うことが必要だ。これには、例えば、関係者が部署を越えて参加するブレーンストーミングなどの方法がある。典型的には、収集する必要のある技術情報、プロジェクトの支援者・反対者・利用者、予算とリソースなどについて共同で検討する。また、近く開催が予定されていて役立ちそうな会議やインタビューすべき人、あるいはプロジェクトに関連して正式に調査すべきグループなども列挙する。状況が許せば、社外コンサルタントや人事部門にも協力を仰いで、必要な情報を収集する。適切な検討が行われれば、正式な情報収集のための指針が得られ、また技術あるいは組織に関する具体的な情報も入手できるだろう。情報が得られたら、正式にプロジェクトを計画する際に考慮すべきカテゴリーに振り分ける。

「相当の注意」を払う技術を磨け――情報や意見を収集するための場を計画・運営したり、予備的なインタビューを手配したり、役に立つ公式調査を計画し実施するのは、相当に技術を要する仕事である。従って、IT関連の技術を絶えざる研修と検定によって磨くのと同様、情報を収集力し会議を主催し計画を策定する能力を磨くべきだ。さもないと、プロジェクトに着手する前に知っておくべき重要事項(踏むとプロジェクトが妨害される恐れのある「虎の尾」など)を見逃すことになるだろう。

組織力学を理解せよ――組織に関する情報はおうおうにして鋭利な戦略的作戦的価値を持つことは広く知られている。しかし、それが「パワーチップ」でもあることは忘れられがちだ。組織の中には――IT部門の中にさえ――多くの人脈を持ち掌握している人物がいるものだ。そういう人物は、予算・運営・利用者に関する情報のうち自分あるいは自分の所属する部門に有利なものだけを通す「門番」となる。この門番は、流すべき情報の種類・量・時期を左右し、ときには、情報をほかの人物やグループと共有するかどうかさえ決定する。IT管理者が扱うプロジェクトは、すべてではないにしても少なくとも一部は、そうした情報の収集方法、作成者、開示の時期と方法を変えることになるのだ。

 例えば、医療現場の場合、医師が診療を記録する際の手順を変えるようなITプロジェクトは激しい抵抗を受けることが多い。上から命じられたプロジェクトをただ進めるだけでは下からの重大な、ときには致命的な抵抗に遭遇し、困難を極めることになる。従って、事前にITプロジェクトに関連する情報を収集して、組織上の関係や長い間の慣習や力関係を、プロジェクトが例えわずかでも変えることになるのであれば、それを説明できるようにしておかなければならない。重要なことは、ITプロジェクトは合理性だけで決まり誰もが歓迎するような技術的変更や改善などといった単純なものではなく、仕事の環境や組織の政治力学に極めて複雑にかかわるものだという点だ。

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