サービスレベル管理――「不幸なSLA」を締結しないために初心者歓迎! ITIL連載講座(3/5 ページ)

» 2007年10月26日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

サービスレベル管理プロセスの役割

 サービスレベル管理の目的は、ITサービスを提供するために、顧客とプロバイダとの間でITサービスの内容や品質、コストなどについて合意することである。また、合意したサービスレベルが維持されているかどうか監視やレビューを行い、サービスレベルを改善するために継続的な活動を行うことも重要な要素である。

 サービスレベル管理の最終的な、そしてもっとも分かりやすい成果物はSLAである。SLAは組織やサービスの内容などによって、おおきく3種類の取り交わし方がある。

1.サービスベース(図2)

 サービスごとに決まったSLAをあらかじめ用意しておき、サービスごとのSLAを顧客と交わすこと。顧客にとってもプロバイダにとっても非常に分かりやすく、安定したサービスを提供することが可能になる。また、プロバイダ側にとっては、SLAの管理コストが削減できる。しかし、顧客ごとに違ったサービスレベルを用意することが困難である。例えば基幹システムの保守を、財務部に対しては9時〜17時、営業部に対しては24時間体制で行う、といったSLAを締結することは大変難しい。

図2:サービスレベルのSLA

2.顧客ベース(図3)

 顧客ごとに1つのSLAを交わすこと。顧客の独自性を反映したSLAを作成することができるので、顧客に受け入れられやすい。しかし、基幹システムの保守を、財務部に対しては9時〜17時、営業部に対しては24時間体制で行う、といったSLAを締結した場合、そのSLAを順守するためにプロバイダ側により多くのコストが発生する場合がある。

図3:顧客レベルのSLA

3.マルチレベル

 全組織共通のSLA、顧客レベルのSLA、特定顧客の特定サービスレベルのSLA、といった具合に、SLAを階層的に交わすこと。大きな企業での採用に向いている。SLAの余計な重複をなくしたり、更新頻度を低減させたりする効果がある。その一方でSLAが複雑になってしまい、管理にコストが発生する可能性もある。

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