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» 2007年10月31日 21時48分 公開

「モバイル広告への先行投資と経営強化は今しかない」、サイバードHDの堀CEO

サイバードHDは、MBOにより株式を非公開化する。堀社長グループCEOは、「成長市場のモバイル広告へ先行投資するための最適な判断」と説明した。

[國谷武史,ITmedia]

 サイバードホールディングスは10月31日、MBO(経営陣による買収)を目的に、投資ファンドのロングリーチグループ(LRグループ)が株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表。サイバードHDの堀主知ロバート社長兼CEOは、「モバイル広告市場への先行投資と株主の利益保護の観点からMBOを決断した」と説明した。

MBO実施について説明を行うチバ氏、堀氏、北畠氏(左から)

 堀氏はMBO実施の理由について、「当社はモバイルコンテンツとコマースを主力事業に、数多くの会員顧客を獲得してきた。既存事業は堅調な成長を続けているが、今後はこの顧客をベースに、成長ペースの著しいモバイル広告分野へ注力する。今後5年間で256億円の投資を計画しているが、短期的に既存株主へのリスクを生じさせる恐れがあり、非公開化によって長期的に事業へ集中できる体制への移行を決めた」と述べた。

厳しい株価状況の中でも、モバイル広告市場でのスタンスを確立する経営体制を早期に実現するためには、MBOが最適な手法だったという

 堀氏によれば、携帯電話インターネットの広告市場は、2011年度までに年平均29.6%の成長ペースが見込まれ、特に2007年度は42.5%増になる予想される。同社では、コンテンツサービス会員と通信販売などのコマース会員で合計500万人規模の顧客基盤を持つといい、携帯電話を中心とした広告宣伝事業を第3の主力事業に位置付けたい考えだ。

 このため、「当社サービスの利用率向上や会員拡大に向け、新しいコンテンツやサービスを積極的に導入し、広告展開も強化して、メディアとしての価値も高い顧客基盤を構築していく」と堀氏。

 一方で、携帯電話キャリアの公式インターネットメニューを主力とするビジネスモデルに頭打ち感が出ていることから、同社の株価は低迷を続けている。現在の状況では、モバイル広告事業への巨額な投資が同社の利益を圧迫すること懸念される。

 既存事業を強化した上での展開も想定されるが、堀氏は「短期業績に左右されずに中長期的な視点で新規事業に取り組める経営体制と、一定規模の先行投資が可能な環境を実現する方法を考えてきた。だが、モバイル広告の世界は変化が激しく、今のタイミングで両方を可能にする方法を判断した結果、MBOを選択した」と述べた。

 TOBを実施するLRグループは、MBOやM&Aなどの手法で、企業再生や実力のある非公開企業の上場支援を目的する「プライベートエクイティファンド」としての特徴を持つ。

 グループチェアマン兼取締役パートナーのマーク・チバ氏は、「サイバードグループは有力な事業基盤と経営体制、そして起業家精神を持っており、われわれは同社の成長のために長期的に経営を支援していく。同社が目指す方向(モバイル広告ビジネス)に、われわれは大きな潜在力を感じている」と説明した。

ロングリーチグループ設立者の1人であるマーク・チバ氏は、元USB証券CEO。2000年のサイバード上場にも関わり、モバイル業界に対する理解や経営センスも豊かであるという

 今回のTOBは、LRグループ傘下のCJホールディングスが11月1日から12月13日まで30日間実施する。サイバードHD株式の66.67%に当たる20万3282株以上の買い付けを予定。買い付け額は1株当たり6万円で、総額122億円を予定する。

 TOB後の経営体制は、堀氏が代表取締役にとどまり、現取締役の中島謙一郎氏、細田洋平氏も留任する予定。また、サイバードHD執行役員の川田敦昭氏が新たに取締役に就任するほか、LRグループ側からチバ氏とグループプリンシパルの杉本友哉氏ら5人が参画する。

 堀氏によれば、LRグループとは6月からMBOを含めた経営改革について非公開で検討を進めてきたという。また、TOB実施については「両者から完全に独立した第三者委員会を設置し、MBOの目的の妥当性や既存株主に対する買い付け価格が適正であるかなどを詳細に検討し、適切なものだと判断された」(サイバードHD社外取締役の北畠光弘氏)としている。

 TOBが成立すれば、サイバードHDは2000年のJASDAQ上場から6年余りで上場廃止となる見込み。不祥事などのケースを除けば、株式公開を果たしたベンチャー企業が、わずか数年で自ら非公開化するのは異例のケースともいえる。

 これについて堀氏は、「上場して良い時期もあれば悪い時期もあったが、経営者として常に考えているのはどうすれば会社が良くなるのかということ。今回はMBOという方法を選んだ」と話した。

 チバ氏は、「今の株価を見るとサイバードHDは上場を続けるべきではないタイミングにあると判断した。経営には株式を公開した方が良い、非公開の方が良いなどさまざまなケースがあるが、今回は株主を変えて、長期的に成長戦略を描ける体制を目指す」と述べた。

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