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» 2007年11月20日 07時00分 公開

ITトレンドの“眼”:生き残るために――新事業戦略で見せたDellとMS“変身”への執念

PCのハードとソフトの両雄としてこれまで市場をリードしてきたDellとMicrosoftが、相次いで新事業戦略を打ち出し“変身”へと執念を燃やしている。両社が目指すものとは――。

[松岡功,ITmedia]

 11月15日、デル日本法人が製品ラインアップを一新したPCサーバ「PowerEdge」シリーズ6機種の発売を発表した。同社の町田栄作アドバンスド・システムズ・グループ本部長は発表会見で今回の新製品群を、「Dellの新たな事業戦略である『Simplify IT(=ITのシンプル化)』を具現化した最初の製品」と強調した。

 「Simplify IT」――Dellの新業戦略を表したこの言葉は、同社のマイケル・デルCEOが10月29日、来日した際に行った記者会見で打ち上げたものだ。デルCEOによると、「複雑化が進むITに対応するためには、ITそのものをもっとシンプルにする必要がある。そのシンプル化を実現する機能をDellがあらかじめ製品に盛り込むことで、お客様はITを迅速に配備し、ITを低コストで効率的に運用し、ITを賢く発展させることができるようになる」というのが、この言葉の意図するところのようだ。

 Simplify ITに基づいて今回発売されたPowerEdgeシリーズは、パフォーマンスを向上しながらエネルギーの消費効率も高め、導入/管理/所有の負荷低減を追求。また、出荷前のカスタマイズや検証済みソリューション、サポートサービスも提供していくという。さらに、同シリーズに無償で標準添付されるサーバ管理ソフト「Dell OpenManage」についても、電源監視機能を追加するなど大幅に機能強化し、管理における時間とコストのシンプル化を図っている。

画像 新事業戦略や新製品について語るデル日本法人の町田栄作アドバンスド・システムズ・グループ本部長兼Dellコーポレートディレクター

 町田本部長は、この新事業戦略の背景についてこう話す。

 「DellはこれまでPCのシンプル化を実現し、さらにサーバやストレージのシンプル化に力を入れてきた。そうした実績を基に、これからはお客様のITシステム全体のシンプル化に貢献していきたい」

 企業ユーザーにシンプルなITを提供するためには、ベンダーはソリューションとして相当完成度の高い製品やサービスを用意する必要がある。その意味では、Dellが掲げるSimplify ITは、究極のソリューションを目指すこととも受け取れる。つまり、Dellは今回の新事業戦略で、プロダクトベンダーからソリューションベンダーへと大きく方向転換しようとしているのだ。

狙いはエンタープライズ市場

 Dellと同様、新事業戦略を掲げて、プロダクトからソリューションベースへと事業転換を急いでいるのが、Microsoftである。

 同社は2006年3月、「企業にとって最も重要な経営資源は社員であり、社員の潜在力を最大限に引き出すことがビジネスの成功につながる」という企業向けのビジョン「People-Ready Business」(日本ではこの言葉の後に「社員力を、経営力に。」が付加されている)を打ち出した。以来、このビジョンに基づいて製品、サービスを整備/拡充しており、2007年7月から始まった同社の2008年度においても、OSをはじめセキュリティ、運用管理、コラボレーション、ビジネスプラットフォームなどに至る広範な領域にわたって、50種類に迫る新製品群を投入する計画だ。

 まさしくMicrosoftにしかできないだろうと思えるほどの新製品ラッシュだが、同社日本法人幹部はこうした動きについて、「製品を拡充しているのは、さまざまなビジネスニーズに対応してきめ細かくソリューションを提供していくため。Microsoftは今、本気でプロダクトベンダーからソリューションベンダーに変身しようとしている」と説明する。

 デル日本法人の新製品発表会見に、ビジネスパートナー企業の1社としてあいさつに立ったマイクロソフト日本法人の小山明 業務執行役員エンタープライズパートナービジネス本部長は、今後の両社の協業についてこう語った。

 「両社の協業によってこれまでPC市場を大きく広げてきたが、これからは『Simplify IT』と『People-Ready Business』を組み合わせることで、エンタープライズ市場のニーズに応えていきたい」

 確かに両社の新事業戦略は、エンタープライズ市場向けという同じベクトルの中で補完関係を築けるような気もする。その意味では、PC市場での両社の成功体験をいかにうまく生かせるかも興味深いところだ。

 こうした両社の動きについて、ある業界関係者はこう話す。

 「両社とも以前からエンタープライズ市場での事業拡大に力を入れてきたものの、DellはIBM、Sun、HPに、MicrosoftはOracleやSAPになかなか対抗しきれない状態が続いてきた。ここにきて新事業戦略を掲げたのは、両社ともソリューションを前面に押し出して、改めて『エンタープライズ市場への意気込み』を強く意思表示するのが狙いだろう。意気込みというか、もはや執念といえるかもしれない」

 はたしてDellとMicrosoftは見事に“変身”できるのか。言い換えるとそれは、両社にとって生き残り戦略なのかもしれない。

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