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» 2007年11月12日 12時12分 公開

ITトレンドの“眼”:バルマー発言に透けて見えるMS事業戦略の本音

11月上旬に来日したMicrosoftのスティーブ・バルマーCEOは記者会見や講演に相次いで登場し、相変わらずの存在感を示してみせた。が、その発言には今後の事業戦略における本音もかいま見える。

[松岡功,ITmedia]

 8日は統合Webサービス「Windows Live」の提供開始に伴う記者会見、およびビジネスパートナー企業を対象としたカンファレンスでの講演、9日はソフトウェア開発者を対象としたフォーラムでの講演、シニア層向けIT利活用の推進における新施策発表の記者会見、そしてコンシューマー市場のさらなる発展を目指したコンソーシアムの発足式でのスピーチ――11月第2週後半はまさに“バルマー旋風”ともいえるほど、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは記者会見や講演に相次いで登場し、“全方位”のプレゼンテーションを精力的にこなした。

 折しも、鳴り物入りのWindows Liveの内容が明らかになったこともあって、どのイベントでもバルマーCEOの発言は注目の的だった。

 中でも印象的だったのは、ビジネスパートナー企業を対象としたカンファレンスの講演で、「10年後には、ほとんどのトランザクションやアプリケーション、システム管理機能などが、インターネット経由で提供されるようになるだろう」と、ネットワーク上のサービスが今後のコンピューティングの主流になると強調したことだ。

画像 ビジネスパートナー企業を対象としたカンファレンスで来場者の質問に答えるMicrosoftのスティーブ・バルマーCEO(中央)と、日本法人のダレン・ヒューストン社長(右)、樋口泰行COO(左)

 バルマーCEOはこれまでも記者会見などで同様の発言をしているが、ビジネスパートナー企業の関係者約1000人を集めたイベントで改めてこう強調したことに、いよいよビジネススタイルが大きく変化する時代を迎えつつあるのを強く感じさせられた。

 その話の流れでバルマーCEOが熱心に説いたのが、同社の「ソフトウェア+サービス」戦略。同氏によるとこの戦略は、デスクトップアプリケーションとエンタープライズアプリケーション、Webアプリケーション、モバイルデバイスの良いところを組み合わせたものだという。そしてWindows Liveは、その基幹となるサービスと位置付けている。

 Windows Liveは、Microsoftが本格的に乗り出したSaaS事業ともみられているが、バルマーCEOは「SaaSは万能ではなく、これまで通りPCで動かしたほうが快適なソフトも多い」と、SaaSがソフトウェア事業の主流になるというとらえ方には懐疑的な姿勢を示した。実際このほど提供開始したWindows Liveでも、例えば「Microsoft Office」の中核製品などは対象にしていない。従来のデスクトップアプリケーションとネット経由のサービスの間で補完関係を持たせれば、SaaSを上回る利用環境を実現できるというのが、同社の思惑なのだろう。まさしく「ソフトウェア+サービス」戦略の“肝”といえる。

 また、バルマーCEOはこの戦略について、ビジネスパートナー企業向けにこうも語っている。

 「ソフトウェア+サービスの世界へは、一夜にして変化するのではなく、緩やかに変化していく。それに伴って当社およびビジネスパートナーのビジネススタイルも変わっていくが、そうした変化の中でお互いに協力できるビジネスチャンスを見いだしていく必要がある」

 この発言で注目されるのは、「緩やかに変化していく」と予測していることだ。そこに「緩やかに変化してほしい」とのバルマーCEOの本音を感じたのは筆者だけだろうか。いかにMicrosoftといえども、ビジネススタイルを急激に変えるのは至難の業だからだ。ただ、IT業界ではこの“時間の読み”こそが最も難しい。果たして、バルマーCEOの読みは的を射ているか。今後の大きな注目点である。

2008年は企業向けソリューションで一大攻勢

 また、バルマーCEOはビジネスパートナー企業を対象としたカンファレンスの講演で、2007年7月から始まった同社の2008年度において、OSをはじめセキュリティ、運用管理、コラボレーション、ビジネスプラットフォーム、アプリケーションプラットフォーラム、エンターテインメントに至る広範な領域にわたって、50種類に迫る新製品群を投入することを明らかにした。そして、中でも「Windows Server 2008」「SQL Server 2008」「Visual Studio 2008」の3つを重点製品に挙げた。2008年度は同社にとって、企業向けソリューション事業における一大攻勢の年となる。

 ただ、企業向けでも大手を中心とした、いわゆるエンタープライズ市場に確固たる強みを持つ競合ベンダーのソフトウェア事業を担当する幹部は、「Microsoftはこのところ製品群を大幅に拡充しているようだが、エンタープライズ市場では今のところ脅威に感じることはない。オープンなマルチベンダー環境を志向するエンタープライズユーザーにとっては、マイクロソフトのソリューションは『Windowsベースのクローズドな環境』ととらえているところが多い」と語る。

 エンタープライズ市場への本格的な浸透は、Microsoftにとって長年の最大の課題。新たに拡充した製品群を擁して、どこまで攻め込めるか。この点では、2008年度はまさしく勝負の年となりそうだ。

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