パスポートへのICタグ採用に異議あり

セキュリティ推進者たちは、「近接型」ICタグを採用したパスポートが保有者のプライバシーを侵害すると警告している。

» 2008年01月15日 11時15分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 一部の米国議員およびセキュリティ推進者らは、米国務省が2007年12月31日に発行した新規則に強く反対している。この規則は、カナダ、メキシコ、バミューダ諸島、カリブ諸国に旅行する米国人に発行されるパスポートカードに「近接型」ICタグ技術の採用を義務付けるというもの。

 近接型ICタグは、読取装置が最大20フィート(約6m)の距離でICタグのチップからデータを抽出できる。反対派によると、この技術はセキュリティとプライバシーの両面で重大な脅威をもたらすという。Center for Democracy and TechnologyのWebサイトによると、国務省の新規則は、暗号化技術抜きで近接型ICタグ技術を採用するよう求めるものだとしている。

 「これは、遠く離れた場所からカードを読み取れるようになることを意味する」とCenter for Democracy and Technology(CDT)のWebサイトの記事は述べている。「この技術は、人間ではなく在庫を管理するために開発されたものであり、CDTはその使用に強く反対する。この技術は本来的にセキュリティが欠如しており、IDの盗難、政府や民間企業による位置追跡など、個人のプライバシーに脅威となるからである」。

 パスポートカードは、米国とカナダ、メキシコ、中南米、カリブ諸国、バミューダ諸島の間を陸路あるいは海路(フェリーを含む)で旅行する市民に対して、有効な米国パスポートの提示を求めるWHTI(Western Hemisphere Travel Initiative:西半球海外渡航イニシアチブ)の一環として生まれた。

 2006年10月、国務省は規定作成提案通知を発行した。同通知に示された一般からのコメントの受け付け期間は2007年1月7日に終了した。国務省のFederal Register(官報)によると、この提案規則に関して4000件以上のコメントが寄せられた。

 コメントを提出した人の中には、4人の国会議員も含まれている――ヒラリー・クリントンとチャールズ・シューマー両上院議員(いずれもニューヨーク州選出)、パトリック・リーイ上院議員(バーモント州選出)、そしてルイーズ・スローター下院議員(ニューヨーク州選出)である。また、カナダ政府および同国のマニトバとニューブランズウィックの両州政府、ならびにネイティブアメリカン政府(ニューヨーク州にあるイロコイ連邦)、米国郵政公社、米航空輸送協会、20数社のIT企業、数十の市/郡政府もコメントを提出した。

 Federal Registerによると、大多数のコメントは、CAGW(政府の無駄遣いに反対する市民)が配布した電子請願フォームを通じて提出されたものだ。CAGWは、国務省がパスポートカード用に選んだ技術に反対するグループである(カードというアイデア自体に反対しているわけではない)。

 「4人の国会議員全員、ならびにIT、セキュリティ、プライバシー分野のグループは、パスポートカードに“近接型”ICタグ技術を採用することに関心を示している」とFederal Registerの説明に記されている。

 「多くのコメント提出者の意見は、近接型技術は米国の電子パスポートで現在使用されている近傍型技術ほどセキュアでないというものだ。彼らの意見によると、近接型技術の使用は情報の不正な読み出しを可能にする恐れがあり、IDの盗難、テロリストや政府による米国市民の監視につながるという」(Federal Register)

 Federal Registerによると、これらのコメントはさらに、国境検問所で2つの異なる技術(電子パスポート帳の読み出し用と電子パスポートカードの読み出し用)を配備するするのは無駄であると指摘しているという。

 米国土安全保障省(DHS)のファクトシートによると、国務省が近接型ICタグ技術の採用にこだわる理由として、同技術が「重要な利点」を備えていることを挙げている。

 「近接型ICタグはセキュリティ面でメリットがある」とオンラインファクトシートは述べている。「近接型ICタグの速度は、CBP(税関・国境保護局)の職員がパスポートカードを保持している旅行者の身元情報を素早く読み取ることを可能にするため、DHSはテロリスト監視リストのチェックを行うことができる。また、近接型ICタグ技術では、離れた場所から複数のカードを同時に読み取ることができるため、車に乗っている人々全員を一度に処理することが可能だ」。

 1月10日付のAssociated Pressの記事によると、国務省では、プライバシー保護対策をカードに組み込む予定であり、カードに埋め込まれるICタグのチップに個人の経歴情報が含まれることはないとしている。さらに国務省は、離れた場所からカードが読み取られるのを防止するために、カードの保護スリーブを用意するようカードベンダー(未定もしくは未公表)に要請しているという。

 旅行者は1月31日までに、自身の身元を証明する書類を入手する必要がある。同日以降は、カナダ、メキシコ、カリブ諸国、バミューダ諸島から米国に戻る米国人に対して、口頭での米国市民の宣言が認められなくなる。

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