ソフト会社のSaaS展開を楽にしたい――マイクロソフトが支援プログラム始動

マイクロソフトは、ソフトウェアベンダーのSaaS事業化を支援する「SaaSインキュベーションセンタープログラム」を発表した。KDDIや富士通など4社がパートナーとなる。

» 2008年03月13日 16時05分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 マイクロソフトは3月13日、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のSaaS展開を支援する包括的なプログラム「マイクロソフトSaaSインキュベーションセンタープログラム」を発表した。SaaSプラットフォームを持つパートナー企業4社が自社サービスと組み合わせて提供する。

 同プログラムは、SaaS市場への参入を希望するISVを対象に、事業プランや採算性、ライセンス方式といったビジネスモデルの検討とコンサルティング、技術検証、共同マーケティングまでを支援するもの。プログラムパートナーは、KDDIと富士通、GMOホスティング&セキュリティ、NTTPCコミュニケーションズの4社で、自社のSaaS事業の一つとしてISVへの直接的な支援を提供する。

プログラム概要(左)とパートナー各社の位置づけ

 プログラム内容は、事業化の検討・コンサルティングをする「ビジネスデベロップメントセッション(BDS)」、SaaS展開に必要な技術面の検討・コンサルティングの「アーキテクチャデザインセッション(ADS)」、マイクロソフトのホスティング環境「Microsoft Solution for Windows Based Hosting」における技術検証、販売チャンネルの開拓および共同マーケティングの4つで構成されている。

 山賀裕二業務執行役員は、「急拡大するSaaS市場にビジネスチャンスを感じつつも、事業性や技術面のリスクに不安を感じるISVは多く、パートナー企業とのエコシステムで支援していく。SaaS市場の発展につなげるとともに、マイクロソフトのSaaS事業の中核になる取り組みだ」と説明した。

 SaaSインキュベーションセンタープログラムは、2007年初頭から欧州、米国で順次開始され、欧米では20社の通信事業者やホスティング事業者がパートナーとして活動中だ。欧州では、約100社のISVがBDSで事業化を進めており、すでに10社のISVが2007年後半から商用サービスを始めている。

エコシステム参加を発表した各社(左から桑原氏、有馬氏、山賀氏、青山氏、細川氏)

 日本でのパートナーとなる各社は、自社のSaaSプラットフォームに同プログラムを組み込んで、ISVのSaaS参入を支援する。このうち、2007年6月にマイクロソフトと業務提携したKDDIは、10月に発表した「Business Port Support Program」として、このプログラムを展開する。

 KDDIソリューション事業統括本部戦略企画部長の桑原康明氏によれば、60社のISVが参入を検討しているといい、このうち、エヌジェーケーとエンタシス、オービックビジネスコンサルタント、GCT研究所、ソフトブレーン、ピー・シー・エーの6社が、秋頃から順次KDDIのプラットフォームを利用して自社の業務アプリケーション製品を展開する予定だ。「通信インフラと課金・決済システム、事業支援を提供するのでレベニューシェアの導入を考えている。また、シングルサインオン連携など当社ならではのサービスを加味したい」と桑原氏は話した。

KDDI(左)と富士通の展開

 2月にSaaS参入を表明した富士通は、同社のインフラを利用するISVの支援プログラムとして展開。4月に東京都港区の同社施設に技術検証環境を構築し、「SaaSパートナープログラム」として始める。サービスビジネス本部長の有馬啓修プロジェクト統括部長は、「Windows系アプリケーションの新規ビジネスに活用したい」としている。

GMOホスティング&セキュリティ(左)とNTTPCコミュニケーションズの展開

 GMOホスティング&セキュリティの青山満社長は、「12年のホスティング事業の歴史と14万件の利用顧客、5000社の販売代理店をベースに、業務系ソフトウェアの新規ビジネスとして非常に期待している」と述べた。また、NTTPCコミュニケーションズの細川雅由サービスサポート本部長は、「Microsoft SQL Serverのホスティングで3年間の実績があり、このプログラムを活用して共有型データベースサービスを目指すISVの迅速な事業化を支援する」と話した。

 マイクロソフトのSaaS戦略では、Windows Liveサービスのように自社ブランドで展開するオンラインサービスや、ホスティング事業向けライセンスなどを展開している。同プログラムついて山賀氏は、「各種取り組みと競合するものではなく、SaaSを利用したいとするISVやユーザー企業の選択肢を広げるためのもの」と説明する。さらに、「将来は自社ソフトを海外展開したいというISVの架け橋になれるよう、プログラム強化や他地域のプログラムとの連携も検討していきたい」と話している。

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