WindowsとLinux 仮想化を使わない共存Leverage OSS(2/2 ページ)

» 2008年04月17日 12時55分 公開
[Mayank-Sharma,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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 さて、実際の動きはどうだろうか。デュアルコアのコンピュータ2台でandLinuxを動かしてみた。2Gバイトのメモリを搭載したE4400 2.0GHzマシンと1Gバイトのメモリを搭載したE6300 1.8GHzマシンだ。どちらのマシンでも、andLinuxがサービスとして動作することによる影響は感じられず、Windowsを起動した後のディスクの動きでandLinuxがバックグラウンドで起動していることが察せられるだけだった。これより遅い1.7GHz CeleronのノートPC(1GバイトのRAMを搭載)では、バックグラウンドでandLinuxが起動中、アプリケーションの起動時間が大きく伸びたが、andLinuxが立ち上がって動作を始めると復旧した。仮想マシンを動かしたときの止まっているかのようなパフォーマンスよりもましだ。

 使用したIntelデュアルコアマシンはIntel Virtualization Technologyによって仮想化ソフトウェアの実行に最適化されているが、andLinuxはハードウェア固有の最適化はまったく行われていない。開発者によると、仮想化スレッドが有効なのは1つのLinuxアプリケーションと1つ以上のWindowsアプリケーションが同時に動作する場合だけで、Windowsプロセスとして扱われる2つ(またはそれ以上)のLinuxアプリケーションが動作する場合には効果がないからだという。

 andLinuxは、バイナリなどがインストールされているパーティーションの中に4Gバイトの仮想パーティーションを作り、セットアップ時に選択したSambaまたはCOFSを介してWindowsファイルシステムの一部を共有する。従って、andLinuxアプリケーションで作成したファイルは、この仮想パーティーションに置くこともWindowsファイルシステムに置くこともできる。

 andLinuxを使い始めてまず頭に浮かぶのは、LinuxアプリケーションをWindowsで動かすための大仰な仕組みではないかという感想だろう。AbiWordやGIMPやFirefoxなどにはWindows版があり、それで十分ではないかというわけだ。andLinuxはWindowsデスクトップ上で動作するため、XfceやKDEのデスクトップも見えない。しかし、調べてみれば、Windows上では動いたことのない KonquerorとそのKIOスレーブ(翻訳記事)、あるいはKDEユーティリティやゲームが見つかるはずだ。

 リモート共有も、andLinuxを構成すれば可能だ。SSHを使ってほかのマシンから入れるようにできるし、VNCまたはrdesktopを介してWindowsデスクトップをリモート共有することもできる。この場合、当然、andLinuxをリモート共有できることになる。

 本当にLinuxディストリビューションが動いていることを納得したければ、Ubuntuのリポジトリからアプリケーションを追加インストールするためのツール、すなわちコマンドラインではapt-get、グラフィカルユーティリティではSynapticを使ってみるとよい。わたしもリポジトリからアプリケーション(OpenOffice.org、Pidgin、AbiWord、XChat、Thunderbird)をインストールしてみたが、すべて問題なく動作した。アプリケーションのソースをコンパイルしてインストールすることもできる。

 確かにLinuxディストリビューションが動いていることを納得できただろうか。しかし、andLinuxは単にWindows上で動いているのではなく、協調的に動いているのだ。例えば、.txt文書を右クリックしKateで開いて編集できる。.pdfファイルをKPDFで読むこともできる。WindowsアプリケーションとLinuxアプリケーション間でコピー&ペーストすることもできるのだ。こうしたことを確かめてみれば、andLinuxとWindowsが協調動作していることが分かるだろう。

 ただし、できないこともある。Alien ArenaやTorcsなどの3Dゲームを楽しむことはできない。テレビチューナーカードがあっても、Linux上でMythTVを使ってビデオを見ることはできない。Bluetooth機器も駄目だ。主要なLinuxディストリビューションを直接インストールした環境では、一部のテレビチューナーや多くのUSB Bluetoothドングルは動作するというのに。

 次に、できることを挙げておこう。WindowsとLinux間でプリンタを共用することができる。最近実現されたプリンタサポートのお陰だ。次期リリースに組み込まれれば、自分で設定する手間はなくなる。

 しかし、Windows上での実行には大きな課題が1つある。andLinuxではマルチユーザー環境のためのセキュリティがサポートされておらず、Windowsユーザーなら誰でも、そのコンピュータにインストールされているandLinuxを使えるのだ。

 とはいえ、デスクトップの利用者にとって、andLinuxはLinuxとWindowsを同時に動かすための有効な手段だ。andLinuxはWindowsとLinuxをホストOSとゲストOSとに分けようとせず、単なる共存ではなく共同を可能にする。これにより、両OS間でファイルを共有したり、一方のアプリケーションで作ったファイルを他方のアプリケーションで開くという歓迎すべきことが可能になった。Linuxを直接インストールした場合よりは遅いが、エミュレートされたPC上で動かすLinuxに比べれば快適に動作する。その差は、とりわけ旧型の遅いハードウェアで大きくなる。

 以上をまとめれば、andLinuxの持つ制約は仮想環境よりも大きくはないが、現状では、利点もない。しかし、すぐに使うことができ、それが持つLinuxとWindowsの相互運用性はこれまでになく高いレベルにあることから、デスクトップの利用者にはお勧めだ。

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