戻り過ぎは困るけど――わたしの心をリカバリして!悲しき女子ヘルプデスク物語(4/4 ページ)

» 2008年05月01日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]
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 ところで、なぜこんなことを思い出したかというと、先日、ある出来事があったからだ。

 ある日、出張から帰ってきたわたしの机の上に、「PCが起動しなくなった」というヘルプコールのメモが置いてある。さっそく電話してみたら、相手は泣きそうな声になっている。いったい、何があったんだろう?

 さっそくその声の主のところに赴き、ヘルプの内容を聞いてみた。すると「データが全部見えなくなっちゃったんですぅ……」とのこと。あれ? PCが起動しなくなったんじゃないの? 声の主のPCでは、Windowsが元気に動いている。しかし、様子がちょっと変だ。明らかに仕事をした様子がない。普通の人はデスクトップに色々なファイルやらアイコンやらが散らばっているものなのに、この人のデスクトップはまるで初期状態。壁紙も草原のまま。よっぽどきれい好きなのかしら。


わたし 「事情を説明してもらえますか?」

相手 「昨夜、残業していたら、PCがなぜか起動しなくなってしまったんです。システム管理部門に電話しても誰もいなかったので、メモだけ残してもらって……」

 ははぁ、それがあのメモね。

相手 「で、今日中に提出しなければならない書類があったので、PCの電源を切ったり入れたり、キーをあちこち触ったりしていたんですね」

 うーむ、褒められた行動ではないけど、気持ちは分かるなぁ。

相手 「そうしたら画面にメニューが出てきて、そこに『Recovery』という文字があったんですよ」

 え?

相手 「見慣れた画面ではなく、真っ黒な背景に白い文字で書かれていたのでおかしいなぁとは思ったんですけど、これって、『元に戻してくれる』って意味ですよね? で、『Recovery』というメニューを選んだんです。英語で何かメッセージが出たんですけど、そのままOKを選択しました」

 勘のいい読者はお気付きだろう。この人は偶然Disk to Diskのリカバリをするメニューにたどりつき、切羽詰ってそのボタンを押してしまったのだ。PCのハードディスクは購入時の状態に戻ってしまった。なるほど、Windowsの画面が初期状態のままなのもうなずける。なにせ、本当に初期状態に戻しちゃったんだから。あちゃー。確かに何も知らない人が「Recovery」という文字を見つけたら、元の状態(元気に動いていた時の状態)に戻してくれると思うかもしれない。確かに元の状態には戻ったんだ。戻り過ぎだけど。


相手 「今日が無理でも、せめて明日までには、なんとかしてもらえますよね?」

 わたしだって、なんとかしてあげたいが、我々システム管理部門が責任をもってバックアップしているのは、ファイルサーバだけ。個々のPCに入っているファイルのバックアップは、個人に任せているのだ。

わたし 「ファイルのバックアップはとってましたか?」

相手 「とってたら、こんなお願いしてません」

……愚問だった。

 その後、問題のPCからハードディスクを取り出し、ファイル復元ソフトを試してみる。が、フォーマットしてファイルを上書きしたのに等しいハードディスクから過去のファイルを取り出すことはできなかった。わたしではどうにもならないこのハードディスクは、最後の頼みの綱である「壊れたハードディスクからファイルを復元する」業者さんの手元行きとなったが。望みは薄いだろう。せめて「昨日いてくれたら、こんなことにはならなかったのにー」とわたしに責任を転嫁するくらいは大目に見てあげよう。

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