HPとEDSが合併交渉――ITサービス分野でIBMへ迫る規模に

両社が合併すれば、IBM Global Servicesとほぼ同じ規模の企業になる。

» 2008年05月13日 18時53分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 業界情報筋がeWEEKに語ったところによると、Hewlett-Packard(HP)はElectronic Data Systems(EDS)を約130億ドルで買収する計画だ。

 情報筋によると、早ければ5月14日に発表が行われる可能性がある。

 HPは5月12日、この件に関して、「合意に達する保証や取引が成立する保証はない。合意に達するか交渉が終了するまでは、これ以上のコメントは控えたい」とする声明を発表した。

 EDSはそれから約1時間後に反応し、「市場での噂に関して、Electronic Data Systemsは、Hewlett-Packardとの業務統合の可能性に関する交渉を進めていることをここに発表する。最終的な合意に達するまでは、これ以上のコメントは控えたい。最終的な合意に至る保証はどこにもない」と発表文で述べた。

 両社の合意が成立した場合、合併後の新会社の企業価値は約220億ドルとなり、これは世界最大のITサービス企業であるIBMに匹敵する。EDSはアウトソーシング型ITサービス分野で世界最大手の企業。HPも同事業を手掛けているが、主としてハードウェアとソフトウェアおよび関連サービスにフォーカスしている。

 IBM Global Servicesの四半期当たりの売り上げは約110億ドル。HPとEDSが合併した場合、サービス事業の売り上げはこれにほぼ匹敵する。全世界のITサービス市場の規模は400〜500億ドルと推定されている。

 両社の合併の噂を受け、EDSの株価はニューヨーク証券取引所の時間外取引で28%アップの24.13ドルとなった。一方、HPの株価は4.7%ダウンの46.83ドルで取引を終えた。

 EDSの市場価値は約105億ドル。しかし同社は先月、第1四半期の利益が62%減少の6200万ドルだったと発表した。同四半期の売上高は3%増加の53億7000万ドルだった。

 しかし、これら2社の巨大IT企業を統合する作業は簡単ではなさそうだ。MicrosoftとYahoo!の交渉が失敗したのは、企業文化の違いが原因だとみる向きは多い。HPとEDSの場合も、企業文化の違いが少なからず問題になる可能性がある。

 HPとEDSはいずれも、大企業と政府などの顧客と取引してきた長い歴史を持つ伝統的ITサービス企業である。

 しかしHPは2002年のCompaqとの苦難に満ちた合併の後、マーク・ハードCEOの指導の下で組織再編と着実な現代化を進めてきた結果、ストレージ、サーバ、ミッドマーケットなどの分野で力強い成長を達成した。一方、EDSはここ数四半期にわたり、利益を維持するために早期退職の勧奨や業務のアウトソーシングといった形で事業を縮小することを余儀なくされている。

 HPはサーバとストレージ事業に積極的な投資を行い、同社のような規模と事業範囲の企業としては極めて組織的にミッドマーケットに進出しつつある。HPの巨大な製品カタログと同社の多様なマーケティングメッセージを整理するのは困難な作業だったようだが、同社の取り組みには早くも成功の兆しが現れている。

 テキサス州プレイノーに本社を置くEDSは、億万長者で元大統領候補のロス・ペロー氏が1962年に創設した。ペロー氏は1984年、同社をGeneral Motorsに売却し、1988年にPerot Systemsを設立した。

 約17万2000人の正社員を抱えるHPは、スタンフォード大学出身のビル・ヒューレット氏とデビッド・パッカード氏が1947年にカリフォルニア州パロアルトに設立した企業。同社の2007年の売り上げは1077億ドルで、IT企業としては初めて売上高1000億ドルを突破した。

 1984年にペロー氏からEDSを買収したGeneral Motorsは、1996年に再び同社を独立企業として分社化し、自身はEDSの顧客になった。EDSは世界58カ国に約13万9500人の正社員を雇用しており、2007年の売り上げは240億ドル。同社はFortune 500企業のリストで最大手サービス企業の1社としてランクされている。

 この合併には多くの経費と時間がかかる可能性がある。両社のサービスの一部には重複する部分もある。特に、データセンターサービス、ソフトウェアアプリケーションサービス、ハードウェアの導入/保守サービスなどが重複している。

 Enterprise Strategy Groupのアナリスト、ブライアン・バビノー氏はeWEEKの取材で、「HPは以前、それほどアウトソースサービス型の企業とはみられていなかったが、現在はまさにそのタイプの企業になった」と述べている。

 「この合併でHPはアウトソーシング事業を拡大することができる。アウトソーシングはまさにEDSの本業だ。両社の統合は興味深いが、EDSは、HPソフトウェア部門、サーバ/ストレージ事業部および関連サービスグループと並んでHPのTSG(技術ソリューショングループ)傘下の独立事業部になると予想される」とバビノー氏は話す。

 重複するサービスに関して、バビノー氏は「どれを切り捨て、どれを残すかに関して、現在、最終的な検討が行われているのだろう」と話す。

 人員削減が実施されなかった場合、HPとEDSを合わせた従業員数は約31万1000人となり、IBMの38万6500人に匹敵する。

 IBMの広報担当者は、同社ではコメントすることはないとしている。

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