SaaSを使わない理由――IT投資調査からアナリストの視点(2/3 ページ)

» 2008年05月14日 08時00分 公開
[石塚俊(矢野経済研究所),ITmedia]

IT投資の伸び

 2007年度のIT投資は金融業を中心に活況だった。表1のように、金融業での対前年度比は112.1%と2番目に高かった。IT投資額の業種別平均値でも、金融業が最も高かった。

 2007年度全体の対前年度比に関しては、その他の業種でも伸びが見られ、106.9%という結果になった。2008年度も、2007年度に続き、全体の対前年度比が105.0%と堅調な伸びが見込める結果となった。

 しかし、2009年度はIT投資額が前年割れする業種が増加する見込みだ。2009年度全体で見れば、加工製造業と公共が牽引することで、何とか前年比プラスを維持し、対前年度比102.5%の見込みである。

 このように、2009年度のIT投資額は伸びが鈍化することが予想されており、中でも、2008年度中に金融業における統合案件が終了することが懸念されている。だが、金融業では、規制緩和による取り扱い商品の増加などに起因して、競争力確保のためのIT投資は今後も一定額以上を見込めるものと考えられる。そのため、金融業がIT投資額の最も大きな業種であることは当面は変わらないであろう。

表1.業種別のIT投資額対前年度比

IT投資の目的

 「IT投資の目的」に関する質問では、「管理業務の効率化」という回答が最も多かった。社内向けのIT投資がほぼ完了し、「営業の強化」といった外部向け活動を支えるシステムへの投資段階に入った企業が増加しているという指摘を聞くことが多い。しかし、今回の調査結果では、依然として社内向けIT投資の優先順位が高いという結果になった。これは、日本版SOX法などの法規制の影響で、内部統制強化の必要性が高まっていることが要因になっていると考えられる。

 外部向け活動に対するIT投資である「営業の強化」は、「情報セキュリティの強化」に続き3番目に多かった。営業の強化の構成比が特に高かった業種を見ると金融業であった。これは、前述したように、競争力確保に力を入れている金融業の姿勢が、数字になって表れたものと考えられる。

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